簿記2級の本支店会計は、「誰の帳簿か」を分けて仕訳し、未達を整理して残高をそろえ、会社内部の取引を相殺すると解きやすくなります。本店勘定と支店勘定の名前だけを覚えると、立替えや代理回収で貸借が逆になりがちです。
この記事は、対になる仕訳→未達整理→合併損益計算書という順で、自作例題をつなぎます。単純合算で売上を二重にする誤りや、連結会計の内部利益を混ぜる誤りを、残高と利益の検算で見つけましょう。
この記事の目次
1. 連結会計との違いと2級の範囲
| 比較点 | 本支店会計 | 連結会計 |
|---|---|---|
| 対象 | 同じ会社の本店と支店 | 親会社・子会社など別法人 |
| 相互勘定 | 本店・支店勘定 | 相手先への債権・債務など |
| 本記事での処理 | 原価送付・未達・内部取引の相殺 | 詳細は連結の記事へ |
| 2級の内部利益との関係 | 本支店間に利益を付加した場合の処理は1級の範囲 | 棚卸資産などの未実現利益消去を2級でも扱う |
根拠は2026年度適用の出題区分表・第五「本支店会計」です。本記事では本支店間の商品送付に利益を上乗せしません。「相殺消去」は内部の売上・仕入や相互勘定を消すことを指し、原価に何%かを上乗せした内部利益の計算ではありません。
2. 本店・支店の仕訳を対にする
支店独立会計制度で、本店の帳簿は相手を「支店」、支店の帳簿は相手を「本店」として記録します。以下はそれぞれ独立した基本例です。現金預金の減少など、直接確認できる科目から埋め、相手科目を考えてください。
| 取引 | 本店の帳簿 | 支店の帳簿 |
|---|---|---|
| 本店が支店へ普通預金50,000円を送金し到着 | 支店50,000/普通預金50,000 | 普通預金50,000/本店50,000 |
| 本店が支店の広告宣伝費12,000円を普通預金から支払 | 支店12,000/普通預金12,000 | 広告宣伝費12,000/本店12,000 |
| 本店が支店の売掛金40,000円を普通預金で代理回収 | 普通預金40,000/支店40,000 | 本店40,000/売掛金40,000 |
| 本店が原価80,000円の商品を支店へ送付し到着 | 支店80,000/支店へ売上80,000 | 本店より仕入80,000/本店80,000 |
最後の行は「支店へ売上」「本店より仕入」を用いる指定です。設問によっては「仕入」を減らして商品を振り替える形式もあります。内部振替の勘定科目は問題文の指定を優先し、異なる形式を一つの計算表に混ぜないでください。
代理回収で本店の売上を増やさないのは、もともと支店で計上した売掛金を回収しただけだからです。また、本店の普通預金と支店の売掛金を一つの仕訳の借方・貸方に直接置くと、別々の帳簿の仕訳を混ぜたことになります。
3. 未達取引で残高をそろえる
【自作例題A】決算整理前の残高は、本店の支店勘定が借方380,000円、支店の本店勘定が貸方330,000円。次の2件だけが未記帳で、整理後は支店側にも通知・入金確認済みとして記録するものとします。他の不一致はありません。
| 未記帳の内容 | 整理する帳簿 | 追加する仕訳 |
|---|---|---|
| 本店からの送金30,000円を支店が未記帳。本店は記帳済み | 支店だけ | 普通預金30,000/本店30,000 |
| 支店が支払った本店の修繕費20,000円を本店が未記帳。支店は記帳済み | 本店だけ | 修繕費20,000/支店20,000 |
支店・本店勘定の整理後貸方残高=330,000+30,000=360,000
すでに記帳した側へ同じ仕訳を追加すると、残高がまたずれます。「未達だから両方の帳簿に追加」ではなく、どちらが何を記録済みかを確認します。相互勘定が合った後、合併上では「本店360,000/支店360,000」として相殺するイメージです。これは合併のための消去であり、日常帳簿から両科目を勝手に削除するという意味ではありません。
4. 合併損益計算書の自作データ
【別の自作例題B】ここからは、未達整理と必要な決算整理がすべて済んだ会社の別データです。本店から支店への商品振替は原価240,000円で、全量が到着・記帳済み。外部への販売と内部送付を区別します。単位は円、商品原価は期首+仕入−期末で求め、営業外・特別項目・法人税等は考慮しません。
| 項目 | 本店 | 支店 |
|---|---|---|
| 外部売上 | 1,500,000 | 800,000 |
| 支店へ売上(内部) | 240,000 | ― |
| 外部仕入 | 900,000 | 300,000 |
| 本店より仕入(内部) | ― | 240,000 |
| 期首商品 | 100,000 | 60,000 |
| 期末商品 | 140,000 | 100,000 |
| 営業費用 | 400,000 | 200,000 |
この段階で外部売上を2,300,000円と先にメモしておくと、後で2,540,000円と誤計算した場合に気付けます。期末商品の100,000円に本店送付品が含まれていても、原価で送っている本例では上乗せ利益の除去は不要です。
5. 内部取引を相殺して利益を計算
| 項目 | 本店 | 支店 | 合併・消去後 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 1,740,000 | 800,000 | 2,300,000 |
| 売上原価 | 100,000+900,000−140,000=860,000 | 60,000+300,000+240,000−100,000=500,000 | 1,120,000 |
| 売上総利益 | 880,000 | 300,000 | 1,180,000 |
| 営業費用 | 400,000 | 200,000 | 600,000 |
| 本例の利益 | 480,000 | 100,000 | 580,000 |
内部の売上240,000円と内部の仕入240,000円を相殺します。売上と原価を同額減らすので、本例の合併前後で利益の合計は変わりません。個別の売上原価を合計した1,360,000円から内部仕入240,000円を除けば1,120,000円です。
図は横にスクロールできます。
合併利益=2,300,000−1,120,000−600,000=580,000
売上原価を外部仕入だけに置き換えて1,200,000円とするのも誤りです。期首・期末の商品を含めた棚卸計算が必要です。逆に内部仕入を残すと、会社全体では同じ商品を外部から二度買ったような数字になります。
6. 支店利益の振替
例題Bで支店の利益100,000円を本店の「損益」へ集約する指定なら、支店は「損益100,000/本店100,000」、本店は「支店100,000/損益100,000」と記録します。本店自身の利益480,000円と合わせて580,000円になります。
集約先に「総合損益」を用いる設問では、その指定に従います。支店で利益を出した時点と、利益振替後の相互勘定残高を混ぜないことも大切です。例題Aの360,000円は別例題の整理結果なので、例題Bの利益をそこへ足す必要はありません。
7. 誤答診断と確認問題
| 誤り | 戻る場所 |
|---|---|
| 本店の帳簿に本店勘定を書いた | 誰の帳簿かを確認 |
| 未達を記帳済み側にも追加した | 元の記帳済み・未記帳の指定 |
| 支店向け売上を外部売上に含めた | 内部240,000の行 |
| 内部利益率を勝手に計算した | 原価送付の前提と級の範囲 |
| 外部仕入合計を売上原価にした | 期首・期末商品の棚卸計算 |
例題Bの期末商品だけ、本店160,000円・支店120,000円へ変更します。他は同じです。合併売上原価と、本例の利益はいくらですか?
本支店会計の解答と検算を見る
売上原価は160,000+1,200,000−280,000=1,080,000円。利益は2,300,000−1,080,000−600,000=620,000円です。期末在庫が40,000円増えた分だけ売上原価が減り、利益が40,000円増えました。
8. 復習の手順とFAQ
解き直しは「帳簿別の仕訳→未達整理→相互勘定一致→内部売上・仕入消去→合併利益」の順に行います。合計額が合わない場合は、最初から全計算をやり直すより、相互勘定と内部売買のどちらが不一致かを切り分けましょう。
本支店会計でも、のれんや非支配株主持分を計算しますか?
本店と支店は同じ会社なので、本記事の本支店会計では計算しません。別法人である親会社・子会社を扱う連結会計とは役割が異なります。
親子会社の論点は連結タイムテーブルの自作例題へ。仕訳の条件読みが不安なら下のドリル、解説動画や質問が必要なら学習支援の比較で不足する支援を確認できます。



