簿記2級の税効果会計は、一時差異を分類し、期末に必要な繰延税金の残高を求め、すでにある残高との差を仕訳にすると整理できます。「差異×税率」を毎回そのまま当期の仕訳額にするのが、つまずきやすい点です。
本記事は減価償却のずれを2期で解消する自作例題に、引当金の残高調整、その他有価証券の税効果を組み合わせます。法人税をいくら納付するかを扱う基礎講座から一歩進み、税金費用をどの期間へ配分するかを学びましょう。
この記事の目次
1. 2級で扱う範囲と3つの区分
2026年度適用の日商出題区分表・第二22では、2級の税効果は引当金・減価償却・その他有価証券に係る一時差異に限定され、繰延税金資産の回収可能性の検討は除外されています。連結上の税効果や複雑な欠損金の議論まで広げる前に、指定された差異を整理します。
| 区分 | 将来の課税所得との関係 | 基本の考え方 |
|---|---|---|
| 将来減算一時差異 | 将来の課税所得を減らす方向で解消 | 繰延税金資産につながる |
| 将来加算一時差異 | 将来の課税所得を増やす方向で解消 | 繰延税金負債につながる |
| 永久差異 | 将来も解消しない | その差異に繰延税金資産・負債を計上しない |
一時差異かどうかは「今期の損金になるか」だけで決まりません。今は認められなくても将来認められるのか、将来も認められないのかまで読みます。たとえば設問で損金不算入とされた罰金は、後で費用として認められる前提がなければ永久差異です。
実務では繰延税金資産の回収可能性なども必要です。2級で検討を除くことと、実務でも無条件に全額を資産計上できることは別です。ASBJの税効果会計に係る会計基準の適用指針・第6〜9項も確認先として掲載します。
2. 減価償却の2期例題
【自作例題A】設備の取得原価は1,200,000円、残存価額0円。会計では2年間に600,000円ずつ減価償却します。税務上の損金算入額は、設問の条件として第1期480,000円・第2期720,000円とします。毎期、減価償却前利益は1,500,000円です。
各期の税引前当期純利益は900,000円。実効税率は両期とも30%、他の差異・均等割・中間納付はなく、期首繰延税金資産は0円とします。これは比較学習用の条件であり、実際の税法上の耐用年数・償却方法を説明する例ではありません。
| 項目 | 第1期 | 第2期 | 2期合計 |
|---|---|---|---|
| 会計の減価償却費 | 600,000 | 600,000 | 1,200,000 |
| 税務の損金算入額 | 480,000 | 720,000 | 1,200,000 |
| 税引前利益 | 900,000 | 900,000 | 1,800,000 |
| 課税所得 | 1,020,000 | 780,000 | 1,800,000 |
| 当期の法人税等 | 306,000 | 234,000 | 540,000 |
3. 第1期の繰延税金資産
第1期は会計で600,000円を費用にしていますが、税務では480,000円だけが損金です。差の120,000円は今期の課税所得に加算され、将来は減算される一時差異となります。
当期の法人税等=1,020,000×30%=306,000
期末の繰延税金資産=120,000×30%=36,000
| 処理 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 当期税額の計上 | 法人税、住民税及び事業税306,000 | 未払法人税等306,000 |
| 税効果の計上 | 繰延税金資産36,000 | 法人税等調整額36,000 |
法人税等調整額が貸方になるため、第1期の損益計算書における税金費用の合計は306,000−36,000=270,000円です。未払法人税等306,000円を36,000円減らす処理ではありません。繰延税金資産は将来に結び付く資産、未払法人税等は当期の納付に関する負債です。
4. 第2期の解消と検算
第2期は税務の損金720,000円が会計の費用600,000円より120,000円多く、課税所得を120,000円減らします。第1期の差が解消したので、期末に繰延税金資産を残しません。
| 処理 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 当期税額の計上 | 法人税、住民税及び事業税234,000 | 未払法人税等234,000 |
| 繰延税金資産の取崩し | 法人税等調整額36,000 | 繰延税金資産36,000 |
図は横にスクロールできます。
第2期の税金費用は234,000+36,000=270,000円。税引前利益が両期とも900,000円なので、税率30%との対応がそろいました。これは他の差異がない本例での結果です。永久差異があれば、常に税引前利益×30%に一致するとは限りません。
| 期末に残る額 | 第1期 | 第2期 |
|---|---|---|
| 会計の設備帳簿価額 | 600,000 | 0 |
| 税務上の設備残額 | 720,000 | 0 |
| 将来減算一時差異 | 120,000 | 0 |
| 繰延税金資産 | 36,000 | 0 |
5. 期末残高と仕訳額の違い
【別の自作例題B】貸倒引当金に係る将来減算一時差異が、期首80,000円から期末140,000円に増えたとします。税率は30%で一定、期首繰延税金資産24,000円はこの差異だけから生じ、期中に他の変動はないものとします。
仕訳で増やす額=42,000−24,000=18,000
借方:繰延税金資産18,000/貸方:法人税等調整額18,000
42,000円は「仕訳をした後に残したい金額」です。期首24,000円があるのに42,000円を追加すると、残高は66,000円になってしまいます。必要残高→記帳前残高→差額仕訳の順で書いてください。
逆に、同じ期首24,000円から期末一時差異が50,000円に減れば、必要残高は15,000円なので9,000円を取り崩します。「法人税等調整額9,000/繰延税金資産9,000」です。税率が変わる問題では、差異の増減に旧税率を機械的に掛けず、設問の税率に従って必要残高を計算し直します。
6. その他有価証券の繰延税金負債
【別の自作例題C】取得原価500,000円のその他有価証券が期末時価620,000円。全部純資産直入法で評価し、評価差額120,000円は税務上まだ課税されないとします。実効税率30%、評価前の関連残高は0円です。
税効果控除後のその他有価証券評価差額金=120,000−36,000=84,000
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| その他有価証券120,000 | 繰延税金負債36,000 その他有価証券評価差額金84,000 |
この差額は直接純資産へ計上するため、税効果の相手もその他有価証券評価差額金に反映します。法人税等調整額を使って当期利益を動かす仕訳にはしません。値下がりして将来減算一時差異となる条件なら、繰延税金資産側になります。
例題Aの繰延税金資産とCの繰延税金負債は、別々の例題です。この記事の数値を合算して本例の会社の純額残高を作る必要はありません。損益項目由来か、純資産へ直入する評価差額由来かを先に確認しましょう。
7. 誤答診断と自作確認問題
| 誤り | 確認すること |
|---|---|
| 繰延税金資産を税務署への返金請求と考える | 将来の税負担に関係する資産であり、直ちに現金が戻る意味ではない |
| 損金不算入は全部税効果の対象とする | 将来解消する差異か、永久差異か |
| 期末残高をそのまま当期の仕訳額にする | 記帳前残高がないか |
| 有価証券評価の税効果も法人税等調整額にする | 評価差額の計上先が損益か純資産か |
貸倒引当金に係る期末将来減算一時差異は90,000円、実効税率30%。この差異だけに対応する記帳前の繰延税金資産は36,000円です。期末必要残高と決算整理仕訳を答えてください。
税効果会計の解答と残高を見る
必要残高は90,000×30%=27,000円。記帳前36,000円より9,000円少ないので、借方:法人税等調整額9,000/貸方:繰延税金資産9,000です。36,000−9,000=27,000円と残高を検算します。
8. 復習手順とFAQ
復習用のノートは「差異の理由/将来加算か減算か/期末差異/税率/必要残高/記帳前残高/増減仕訳」の7欄にします。最初は例題Aを翌期まで通して解き、その後Bのような残高増減問題へ進むと、貸方に法人税等調整額が来る理由を説明しやすくなります。
仮払法人税等と繰延税金資産は同じですか?
異なります。仮払法人税等は中間納付などで実際に支払った税金を処理する科目です。繰延税金資産は一時差異等に税効果を適用した結果として生じるもので、本記事の計上時には現金を支払っていません。
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