簿記2級無料講座 第10回:有価証券② 子会社・関連会社株式と「その他有価証券」の独特な処理

前回は「売る気満々」の売買目的有価証券と、「最後まで持つ」満期保有目的債券を学びました。今は、そのどちらでもない残り2つのグループを解説します。

特に「その他有価証券」は、簿記2級で初めて登場する概念で、「時価評価するのに、利益にはしない」という非常に特殊なルールを持っています。試験の第1問(仕訳)や第3問(決算)で頻出ですので、しっかり攻略しましょう!

この記事でマスターすること


  • 子会社・関連会社株式は「取得原価」のまま(評価替えしない)

  • その他有価証券は「時価評価」する

  • 【最重要】評価差額は損益計算書(P/L)ではなく、貸借対照表(B/S)の「純資産」に入れる!

1. 子会社株式・関連会社株式

これは、単なる投資ではなく、相手の会社を「支配」したり「影響」を与えたりするために持つ株式です。

🏢 子会社株式

議決権の50%超を保有するなど、相手を「支配」している場合。

🤝 関連会社株式

議決権の20%以上を保有するなど、相手に「重要な影響」を与える場合。

決算時の評価ルール

ルール:取得原価のまま評価替えしない(原価法)

理由: 長期間持ち続けて経営に参加するのが目的なので、一時的に株価が上がったり下がったりしても、売るわけではないので関係ないからです。

つまり、決算での仕訳は「なし」です。
(※著しく価値が下がった場合の「減損処理」は除きますが、基本は「何もしない」と覚えましょう)

2. その他有価証券(超重要)

ここが本日のメインテーマです。「売買目的」でも「満期保有」でも「子会社・関連会社」でもない、「その他」のバスケットに入った有価証券です。

具体的には、「取引先との関係維持のための持ち合い株」や「長期的な値上がりを期待して持っている株」などがここに入ります。

決算時の評価ルール

その他有価証券は、「時価評価」を行います。
「えっ? 長期保有なのに時価評価するの?」と思いますよね。ここがややこしい点です。

なぜ時価評価するのに「利益」にしないの?

すぐに売るわけではないので、株価が上がっていても「まだ実現していないあやふやな利益」と考えます。
これを損益計算書(P/L)の「当期純利益」に入れてしまうと、会社の業績を誤解させる恐れがあります。

→ だから、貸借対照表(B/S)の「純資産」に直接入れてしまおう! という特別な処理をします。

この処理方法を「全部純資産直入法(ぜんぶじゅんしさんちょくにゅうほう)」といいます。

仕訳比較:売買目的 vs その他有価証券

例題: 取得原価1,000円の株式が、決算時に時価1,200円になっていた。

分類 借方(資産が増える) 貸方(相手科目)
売買目的 売買目的有価証券 200 有価証券評価益 200
(収益 ⇒ P/Lへ)
その他 投資有価証券 200 その他有価証券評価差額金 200
(純資産 ⇒ B/Sへ)
  • 勘定科目: その他有価証券の場合は「投資有価証券」勘定を使うのが一般的です。
  • 貸方科目: 「益」や「損」という言葉を使いません。「その他有価証券評価差額金(ひょうかさがくきん)」という長い科目を使います。
📢 受験生へのアドバイス
実は本番の試験では、この「評価差額金」に対して「税効果会計(法人税等調整額)」という処理を同時に行う問題がほとんどです。
ただ、これを理解するには第33回の知識が必要です。
今の段階では、「その他有価証券の差額は、P/L(収益・費用)ではなく純資産(差額金)になる!」という点だけを強烈に意識してください。

翌期首の処理(洗替法)

その他有価証券の時価評価は、あくまで「決算書に見栄え良く載せるため」の一時的な処理です。
そのため、翌期の最初の日(期首)に、仕訳を逆にして元の取得原価に戻します。これを「洗替法(あらいがえほう)」といいます。

翌期首の仕訳(逆仕訳をするだけ)
借方 金額 貸方
その他有価証券評価差額金 200 投資有価証券

これで帳簿上の金額は1,200円から1,000円(元の原価)に戻ります。

3. 有価証券4分類の総まとめ

第9回と第10回の内容を1枚の表にまとめました。これは試験直前まで使える重要リストです!

種類 保有目的 評価基準 評価差額の行先
① 売買目的 短期売買 時価 P/L (営業外損益)
② 満期保有 満期まで 償却原価
(or 原価)
なし
(差額は金利調整としてP/L)
③ 子・関連 支配・影響 原価 なし
④ その他 長期保有等 時価 B/S (純資産)

🚀 確認ミニクイズ

次の取引の勘定科目と金額を答えてください。


Q1. A社株式(取得原価1,000円)を決算時に時価評価したところ、800円に下落していた。A社株式は「その他有価証券」である。借方の科目は?(※税効果は考慮しない)

Q2. 上記Q1の翌期首に行う仕訳は?(貸方の科目を答えてください)

答えを見る(クリックして展開)

A1. その他有価証券評価差額金(200円)
仕訳:(借)その他有価証券評価差額金 200 (貸)投資有価証券 200
※費用(評価損)ではなく、純資産のマイナスとして処理します。

A2. その他有価証券評価差額金
洗替法により、逆仕訳を行います。
(借)投資有価証券 200 (貸)その他有価証券評価差額金 200

まとめ

その他有価証券は、「時価評価するけど、P/L(損益)には入れない!」という点が最大の特徴です。
「評価差額金」という長い科目名と、それが純資産の項目であることをしっかり覚えておきましょう。

次回は、将来の支出に備えるための負債「引当金」について解説します。修繕引当金や退職給付引当金など、実務でも重要な項目が登場します!

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