前回は「売る気満々」の売買目的有価証券と、「最後まで持つ」満期保有目的債券を学びました。今は、そのどちらでもない残り2つのグループを解説します。
特に「その他有価証券」は、簿記2級で初めて登場する概念で、「時価評価するのに、利益にはしない」という非常に特殊なルールを持っています。試験の第1問(仕訳)や第3問(決算)で頻出ですので、しっかり攻略しましょう!
この記事でマスターすること
- ✔
子会社・関連会社株式は「取得原価」のまま(評価替えしない) - ✔
その他有価証券は「時価評価」する - ✔
【最重要】評価差額は損益計算書(P/L)ではなく、貸借対照表(B/S)の「純資産」に入れる!
1. 子会社株式・関連会社株式
これは、単なる投資ではなく、相手の会社を「支配」したり「影響」を与えたりするために持つ株式です。
🏢 子会社株式
議決権の50%超を保有するなど、相手を「支配」している場合。
🤝 関連会社株式
議決権の20%以上を保有するなど、相手に「重要な影響」を与える場合。
決算時の評価ルール
ルール:取得原価のまま評価替えしない(原価法)
理由: 長期間持ち続けて経営に参加するのが目的なので、一時的に株価が上がったり下がったりしても、売るわけではないので関係ないからです。
つまり、決算での仕訳は「なし」です。
(※著しく価値が下がった場合の「減損処理」は除きますが、基本は「何もしない」と覚えましょう)
2. その他有価証券(超重要)
ここが本日のメインテーマです。「売買目的」でも「満期保有」でも「子会社・関連会社」でもない、「その他」のバスケットに入った有価証券です。
具体的には、「取引先との関係維持のための持ち合い株」や「長期的な値上がりを期待して持っている株」などがここに入ります。
決算時の評価ルール
その他有価証券は、「時価評価」を行います。
「えっ? 長期保有なのに時価評価するの?」と思いますよね。ここがややこしい点です。
なぜ時価評価するのに「利益」にしないの?
すぐに売るわけではないので、株価が上がっていても「まだ実現していないあやふやな利益」と考えます。
これを損益計算書(P/L)の「当期純利益」に入れてしまうと、会社の業績を誤解させる恐れがあります。
→ だから、貸借対照表(B/S)の「純資産」に直接入れてしまおう! という特別な処理をします。
この処理方法を「全部純資産直入法(ぜんぶじゅんしさんちょくにゅうほう)」といいます。
仕訳比較:売買目的 vs その他有価証券
例題: 取得原価1,000円の株式が、決算時に時価1,200円になっていた。
| 分類 | 借方(資産が増える) | 貸方(相手科目) |
|---|---|---|
| 売買目的 | 売買目的有価証券 200 | 有価証券評価益 200 (収益 ⇒ P/Lへ) |
| その他 | 投資有価証券 200 | その他有価証券評価差額金 200 (純資産 ⇒ B/Sへ) |
- 勘定科目: その他有価証券の場合は「投資有価証券」勘定を使うのが一般的です。
- 貸方科目: 「益」や「損」という言葉を使いません。「その他有価証券評価差額金(ひょうかさがくきん)」という長い科目を使います。
実は本番の試験では、この「評価差額金」に対して「税効果会計(法人税等調整額)」という処理を同時に行う問題がほとんどです。
ただ、これを理解するには第33回の知識が必要です。
今の段階では、「その他有価証券の差額は、P/L(収益・費用)ではなく純資産(差額金)になる!」という点だけを強烈に意識してください。
翌期首の処理(洗替法)
その他有価証券の時価評価は、あくまで「決算書に見栄え良く載せるため」の一時的な処理です。
そのため、翌期の最初の日(期首)に、仕訳を逆にして元の取得原価に戻します。これを「洗替法(あらいがえほう)」といいます。
| 借方 | 金額 | 貸方 |
|---|---|---|
| その他有価証券評価差額金 | 200 | 投資有価証券 |
これで帳簿上の金額は1,200円から1,000円(元の原価)に戻ります。
3. 有価証券4分類の総まとめ
第9回と第10回の内容を1枚の表にまとめました。これは試験直前まで使える重要リストです!
| 種類 | 保有目的 | 評価基準 | 評価差額の行先 |
|---|---|---|---|
| ① 売買目的 | 短期売買 | 時価 | P/L (営業外損益) |
| ② 満期保有 | 満期まで | 償却原価 (or 原価) |
なし (差額は金利調整としてP/L) |
| ③ 子・関連 | 支配・影響 | 原価 | なし |
| ④ その他 | 長期保有等 | 時価 | B/S (純資産) |
🚀 確認ミニクイズ
次の取引の勘定科目と金額を答えてください。
Q1. A社株式(取得原価1,000円)を決算時に時価評価したところ、800円に下落していた。A社株式は「その他有価証券」である。借方の科目は?(※税効果は考慮しない)
Q2. 上記Q1の翌期首に行う仕訳は?(貸方の科目を答えてください)
答えを見る(クリックして展開)
A1. その他有価証券評価差額金(200円)
仕訳:(借)その他有価証券評価差額金 200 (貸)投資有価証券 200
※費用(評価損)ではなく、純資産のマイナスとして処理します。
A2. その他有価証券評価差額金
洗替法により、逆仕訳を行います。
(借)投資有価証券 200 (貸)その他有価証券評価差額金 200
まとめ
その他有価証券は、「時価評価するけど、P/L(損益)には入れない!」という点が最大の特徴です。
「評価差額金」という長い科目名と、それが純資産の項目であることをしっかり覚えておきましょう。
次回は、将来の支出に備えるための負債「引当金」について解説します。修繕引当金や退職給付引当金など、実務でも重要な項目が登場します!

