簿記2級の標準原価計算|価格差異・数量差異を図と例題で理解

簿記2級の標準原価計算と価格差異・数量差異の図解

簿記2級の標準原価計算は、公式を思い出す前に、実際に作った量なら、標準ではいくらで作れるはずかを求めることから始めます。価格差異と数量差異は、その金額と実際額の差を二つに分けたものです。

この記事の目次

1. 標準原価は「実際の生産量」に対して作る

標準原価は、あらかじめ定めた標準単価・標準消費量などを使う原価です。差異分析では、単に当初の生産予定と実績の総額を比べるのではなく、実際の生産量に対応する標準原価を用意します。

自作例題の条件

製品1個の標準直接材料費は、500円/kg×2kg/個=1,000円/個。当月は100個が完成し、月初・月末仕掛品、仕損・減損はありません。材料の実際消費量210kg、実際消費単価520円/kgとします。以下の材料価格差異は、購入時でなく消費時の単価差を扱います。

標準消費量:2kg/個 × 実際完成品100個 = 200kg
標準直接材料費:500円/kg × 200kg = 100,000円
実際直接材料費:520円/kg × 210kg = 109,200円

ここで210kgを標準数量にも使うと、標準より10kg多く消費したことを見落とします。逆に、工場が当初120個の生産を予定していても、仕掛品のないこの条件で120個分240kgを比較対象にすれば、生産量の違いまで数量差異へ混ぜてしまいます。

本記事は自作の数値で、直接材料費・直接労務費の基本を中心に説明します。製品原価全体を求める場合は、製造間接費等も含め、問題の指示に従います。

2. 価格差異・数量差異は、3つの金額をつないで分ける

本記事の計算欄は、実際−標準で求め、プラスを不利、マイナスを有利とする書き方で統一します。教材が標準−実際なら符号は逆です。金額だけを転記せず、有利・不利の意味も付けましょう。

①→②は単価を500円にそろえ、数量だけ200kgから210kgへ変えています。増加5,000円が数量差異です。②→③は210kgにそろえ、単価だけ500円から520円へ変えているので、増加4,200円が価格差異です。

図は横にスクロールできます。

材料費を標準額と二つの差異へ分ける概念図下側左が標準額100000円、下側右が数量差異5000円不利、上側全体が価格差異4200円不利。図は縮尺を統一していない。価格差異 4,200円(不利)標準額 100,000円数量差異5,000円(不利)520円500円0kg200kg210kg

面積の役割を表す概念図です。見やすさのため、単価差・数量差の縮尺は統一していません。

価格差異:(520 − 500)円/kg × 210kg = 4,200円 不利
数量差異:500円/kg ×(210 − 200)kg = 5,000円 不利
総差異:109,200 − 100,000 = 9,200円 不利
検算:4,200 + 5,000 = 9,200円

価格差異に標準数量を掛けると、なぜ合わない?

20円×200kg=4,000円では、標準を超えた10kgについても20円高くなった分、200円が落ちます。数量差異を標準単価で求める方法では、その交差部分を価格差異へ含めるため、価格差異に実際消費量210kgを掛けます。

3. 労務費は、単価を賃率・数量を時間へ置き換える

直接労務費も同じ比較です。標準賃率1,200円/時間、1個の標準直接作業時間1.5時間、実際完成品100個とします。仕掛品等はなく、実際直接作業時間160時間、実際賃率1,250円/時間です。

標準時間:1.5時間/個 × 100個 = 150時間
標準直接労務費:1,200 × 150 = 180,000円
実際直接労務費:1,250 × 160 = 200,000円
賃率差異:(1,250 − 1,200)× 160 = 8,000円 不利
作業時間差異:1,200 ×(160 − 150)= 12,000円 不利
検算:8,000 + 12,000 = 200,000 − 180,000 = 20,000円 不利

材料の「価格差異は実際数量、数量差異は標準単価」を、労務費なら「賃率差異は実際時間、作業時間差異は標準賃率」と読み替えます。kgと時間の単位まで書けば、材料の数量を労務費へ混ぜる誤りも確認できます。

4. 有利と不利が混じるときは、差し引いて検算する

単価が安ければ、材料費全体も安いとは限りません。先ほどと同じ標準500円×200kgに対し、別の月の実際が480円×220kgだった場合を考えます。

単価が下がり、消費量が増えた自作例(横にスクロールできます)
項目 計算 判定
価格差異 (480−500)×220=−4,400 4,400円 有利
数量差異 500×(220−200)=10,000 10,000円 不利
総差異 480×220−500×200=5,600 5,600円 不利

差異の絶対額だけを足して14,400円にしないでください。10,000円の不利から4,400円の有利を差し引き、5,600円の不利です。実際額105,600円が標準額100,000円より多いこととも一致します。

なお、差異は原因を探す入口です。安い材料が作業効率へ影響した、価格改定があったなどの事情は、数値だけでは確定できません。「数量差異が不利だから担当者のミス」とまで断定しないようにしましょう。

5. 仕掛品がある場合は、材料と加工の換算量を分ける

標準数量を「完成品数×1個の標準量」だけで求められるのは、仕掛品がない等の単純な条件です。当月投入分の差異を求める場合は、当月に進めた作業に対応する量を作ります。

当月投入分の標準数量を求める自作例

完成品100個、月末仕掛品20個(加工進捗度50%)、月初仕掛品10個(同40%)。材料は始点で全量投入し、仕損・減損はありません。標準は材料2kg/個、直接作業1.5時間/個です。

材料の当月投入数量:100 + 20 − 10 = 110個分
当月投入分の標準材料消費量:110 × 2 = 220kg
加工の当月完成品換算量:100 + 20×50% − 10×40% = 106個分
当月投入分の標準直接作業時間:106 × 1.5 = 159時間

月末の材料へ進捗度50%を掛けないのは、始点で投入済みだからです。月初分を引くのは、その分の材料投入や加工が前月に済んでいるためです。材料の投入方法や求められる原価が違う場合は、条件を読み直します。

6. パーシャルとシングルは、差異を分ける場所を見る

最初の材料例へ戻り、直接材料費部分だけを記帳します。月初・月末仕掛品なし、100個完成、標準材料費100,000円、実際材料費109,200円という条件です。材料は実際消費単価で記帳し、他の原価要素は省略します。

同じ材料費を二方式で比べる自作例(横にスクロールできます)
方式・場面 借方 貸方
パーシャル:材料消費 仕掛品 109,200 材料 109,200
パーシャル:完成振替 製品 100,000 仕掛品 100,000
パーシャル:差異振替 原価差異 9,200 仕掛品 9,200
シングル:材料消費時に分離 仕掛品 100,000
材料価格差異 4,200
材料数量差異 5,000
材料 109,200
シングル:完成振替 製品 100,000 仕掛品 100,000

パーシャルは仕掛品へ実際額を入れ、完成分を標準で払い出し、この例では残る差異を振り替えます。シングルは仕掛品への投入時点で標準額と差異を分けます。勘定科目の名称・差異の分け方・振替先は設問の指定を優先してください。

どちらも、この条件の仕掛品の残高はゼロです。不利差異は差異勘定を借方へ計上する例になっていますが、「不利だからどの仕訳でも借方にその金額を置く」と暗記せず、差異を振り替える相手勘定と場面も見ます。

7. 製造間接費は、基準・実際・標準の時間を分ける

材料費・労務費の比較ができたら、製造間接費へ進みます。固定費があるため、実際時間と標準時間に加え、固定費率の算定に使う基準操業度が必要になります。

公式法変動予算の自作例

変動費率100円/時間、固定費予算20,000円、基準操業度200時間とします。固定費率は100円/時間、標準配賦率は合計200円/時間。実際操業度160時間、実際生産量に対する標準操業度150時間、実際発生額39,000円です。

実際時間の予算許容額:100×160+20,000=36,000円
標準配賦額:200×150=30,000円
予算差異:39,000−36,000=3,000円 不利
能率差異:(160−150)×200=2,000円 不利
操業度差異:(200−160)×100=4,000円 不利
検算:3,000+2,000+4,000=39,000−30,000=9,000円 不利

この例の三分法では、能率差異に変動費率と固定費率の両方を使っています。能率差異を変動費分1,000円・固定費分1,000円に分ければ、四つの差異として合計を確認できます。教材が別の区分方法を指定している場合、名称だけを合わせて式を混ぜないようにします。

まず三つの時間と二つの費率を別欄に置き、合計が総差異へ戻るかを見ましょう。図の形だけで数値を当てはめるより、予算額・配賦額が何を表すかを一行で説明する方が、取り違いを点検できます。

8. 間違えたら、標準量・比較・符号・記帳の順に戻る

最初の誤りと次の練習(横にスクロールできます)
誤答 確認する場所 次の練習
標準数量が実際数量と同じ 実際の生産量×1個標準量 数量だけ先に求める
差異の合計が総差異と違う 価格は実際数量、数量は標準単価 3つの金額で橋渡しする
有利・不利が逆 どちらを先に引いたか 実際総額と標準総額を比べる
仕掛品残高が合わない 記帳方式と差異の振替時点 同条件で勘定の増減を追う
自作確認問題

標準単価300円/kg、標準消費量160kg。実際単価290円/kg、実際消費量170kgの場合、材料価格差異・数量差異・総差異を求めてください。実際−標準の式で計算します。

確認問題の解答と検算を開く

価格差異:(290−300)×170=−1,700円、1,700円有利。数量差異:300×(170−160)=3,000円不利。総差異は1,300円不利です。実際額49,300円−標準額48,000円=1,300円に一致します。

復習全体の順番が決まらない場合は工業簿記の苦手原因別ガイドへ、費用から利益計画へ進む場合はCVP分析の自作例題へ進んでください。混合問題での時間と点数は模試の復習手順で分けて記録できます。

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