建物や土地のように「目に見える資産」だけでなく、企業にはブランド力やプログラムといった「目に見えない資産」も存在します。簿記2級では、これらを「無形固定資産」として扱います。
今回は、試験で頻出の「のれん」「ソフトウェア」そして間違えやすい「研究開発費」について解説します。償却期間や処理区分が点数の分かれ目になるので、しっかり整理しましょう!
この記事でマスターすること
- ✔
のれんの発生タイミングと償却ルール(20年以内) - ✔
ソフトウェアの区分(自社利用)と償却期間(5年) - ✔
研究開発費は資産ではなく「費用」になる理由
1. 無形固定資産とは?
形はないけれど、長期にわたって会社に収益をもたらす法的権利や経済的価値のことです。3級ではあまり出てきませんでしたが、2級では非常に重要です。
有形固定資産
建物、備品、土地、車両など
(目に見える実体がある)
無形固定資産
特許権、のれん、ソフトウェアなど
(法律上の権利や経済的価値)
これらの資産も、時の経過や使用によって価値が減るため、決算時に「償却」(有形固定資産でいう減価償却)を行います。
※土地や借地権など、価値が減らないものは償却しません。
無形固定資産の償却は、原則として「直接法」(資産勘定を直接減らす)で記帳し、「残存価額はゼロ」とします。記帳がシンプルなので覚えやすいですよ!
2. のれん(Goodwill)
「のれん」とは、企業のブランド力、顧客リスト、技術力などの「超過収益力」のことです。M&A(合併・買収)の際によく登場します。
のれんが発生するタイミング
他社を買収した際、「純資産(資産-負債)」よりも高い金額を支払った場合、その差額が「のれん」となります。
買収金額 > 純資産の時価(資産-負債)
※逆に安く買えた場合の差額は「負ののれん発生益」(収益)になりますが、まずは「のれん(資産)」を確実に覚えましょう。
仕訳例:M&Aとのれんの計上
A社はB社を現金1,000円で買収し、合併した。B社の諸資産(時価)は1,500円、諸負債(時価)は800円であった。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 諸資産 | 1,500 | 諸負債 | 800 |
| のれん | 300 | 現金 | 1,000 |
※ 純資産 = 1,500 – 800 = 700円。
1,000円払ったので、差額300円が「のれん」です。
のれんの償却ルール
のれんは永久に価値が続くわけではありません。以下のルールで償却します。
- 償却期間: 20年以内の効果の及ぶ期間
- 計算方法: 定額法
- 記帳方法: 直接法(「のれん償却」勘定を使用)
- 重要: 自己創設のれん(自社で「うちはブランド力がある!」と評価したもの)は計上できません。
3. ソフトウェア
ソフトウェアは、制作目的や利用目的によって会計処理が異なります。簿記2級でメインとなるのは「自社利用」のソフトウェアです。
| 目的 | 処理のポイント | 償却期間 |
|---|---|---|
| 自社利用 社内システム等 |
将来の収益獲得や費用削減が確実な場合、資産計上する。 | 5年 (定額法) |
| 市場販売目的 ゲームソフト等 |
製品マスター完成までは研究開発費。 完成後は資産計上。 |
3年 (※販売可能量等で計算) |
仕訳例:自社利用ソフトウェア
① 購入・制作時
自社利用目的のソフトウェアを3,000円で購入し、代金は翌月末に支払うこととした。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| ソフトウェア | 3,000 | 未払金 | 3,000 |
※ 商品ではないので「買掛金」ではなく「未払金」を使います。
② 決算時(償却)
上記のソフトウェア(耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法)を償却する。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| ソフトウェア償却 | 600 | ソフトウェア | 600 |
※ 3,000 ÷ 5年 = 600円。
4. 研究開発費
新製品の開発や新技術の発見などのために支出した費用です。
鉄則ルール
研究開発費は、全額「費用」として処理する!
(資産には計上しません)
理由: 研究開発は失敗することも多く、将来必ず収益を生むとは限らないからです。
損益計算書では「販売費及び一般管理費」の区分に表示されます。
よくあるひっかけ問題
試験では「新製品開発のために機械装置(1,000円)を購入した」というケースが出題されます。
- ❌ 間違い:
(借)機械装置 1,000 (貸)現金 1,000 - ⭕ 正解:
(借)研究開発費 1,000 (貸)現金 1,000
研究開発専用の設備等は、固定資産ではなく、購入時に一括して「研究開発費」として処理します。
🚀 確認ミニクイズ
次の取引の勘定科目と金額を答えてください。
Q1. A社を買収し、現金2,000円を支払った。A社の資産は3,000円、負債は1,200円であった。計上される「のれん」はいくら?
Q2. 自社利用目的のソフトウェア(取得原価5,000円)について、決算にて償却を行う。償却期間は5年とする。借方の科目は?
Q3. 新技術開発のため、専用の実験機材を100円で購入した。借方の科目は?
答えを見る(クリックして展開)
A1. 200円
純資産(1,800)と買収額(2,000)の差額。
A2. ソフトウェア償却(金額:1,000円)
5,000 ÷ 5年 = 1,000円。
A3. 研究開発費
開発専用の資産は、取得時に全額費用処理します。
まとめ
無形固定資産は、計算自体は難しくありませんが、「期間」や「区分」を正確に覚えておく必要があります。
- のれん: M&Aの差額。償却は20年以内の定額法。
- ソフトウェア(自社利用): 将来の収益が見込めるなら資産。償却は5年定額法。
- 研究開発費: 発生時に全額費用(販管費)。
次回は、投資のための資産である「有価証券」について解説します。「売買目的」と「満期保有目的」で評価方法がガラッと変わるので、ここも2級の重要ポイントです!

