簿記論の総合問題の解き方|解く順番・時間配分と復習を例題で練習

簿記論の総合問題:教材とノートを使って学ぶ会計資格ドットコムの解説記事

個別問題なら解けるのに、簿記論の総合問題になると手が止まる。そんなとき、基本書を最初から読み直す前に確認したいのは、知識・資料の読取り・解く順番・時間の使い方のどこで止まったかです。

総合問題では、一つの計算結果が別の計算に影響します。反対に、ほかの項目が未完成でも答えられる部分もあります。この記事では編集部オリジナルの小さな総合問題を使って、資料を分け、独立する項目から処理する方法を練習します。

まずは答案で求められるものを見る → 資料を分ける → 独立して解ける項目を拾う → 最後に集計する。一つ分からなくても、問題全体を止めない練習をしましょう。
この記事の目次

総合問題が解けない原因を4つに分ける

解けない原因の切り分け(横にスクロールできます)
止まった場面 主な原因 次にする練習
個別に切り出しても仕訳が作れない 知識・処理の理解 同じ論点の例題へ戻り、処理の理由を書いてから再演習
論点は分かるが、必要な数値を拾えない 資料の対応づけ 資料番号と勘定科目を結び、整理前・整理後を分けてメモ
一つの難しい項目に時間を使い切る 着手順・切上げ判断 保留印を付け、ほかの資料だけで答えられる項目へ進む
処理は合うのに答案が違う 集計・転記 計算メモと答案の対応を確認し、単位や符号を見直す

特に避けたいのは、何が原因か分からないまま「演習不足」とだけ書くことです。演習を増やす方向は同じでも、個別処理が足りない人と、転記ミスが多い人では、見直す作業が違います。

解く順番は、独立する項目から決める

問題文を読みながら、出てきた順にすべて計算すると、不要な計算や、確定していない数値の集計に時間を使うことがあります。最初に答案欄と要求を見て、何を出す問題なのかをつかんでください。

01 要求を読む求める科目、金額、表示単位、指示を先に確認。
02 項目を分ける単独で解ける項目と、ほかの結果を使う項目を区別。
03 処理して集計独立項目を答案へ反映し、最後に合計と符号を確認。

「いつも減価償却から」のように科目名だけで固定する必要はありません。同じ固定資産でも、未処理事項が複雑に絡む場合があります。その問題で必要な資料がそろっているか、処理が自分にとって明確かで選びます。

以下のオリジナル問題なら、保険料・減価償却・売上原価・貸倒処理はそれぞれ計算できます。当期純利益はそれらの結果を使うため最後です。仮に貸倒処理で迷っても、残りの項目まで放棄する必要はありません。

オリジナル問題:決算整理と当期純利益

編集部作成・基礎総合ミニ問題

複数の決算整理をつなぐ練習用です。本試験の難易度や配点を再現したものではありません。学習用の目安として、まず15分で取り組み、時間内に出した答えと、その後に解けた答えを分けて残してください。

前提と、決算整理前の収益・費用

当期は1月1日〜12月31日の1年間です。単位は円、消費税と法人税等は考慮しません。以下に記載するもの以外の収益・費用や決算整理事項はありません。商品は三分法で記帳しており、期首商品の再振替と期末商品の計上は、いずれも未処理です。

資料1:決算整理前の収益・費用(横にスクロールできます)
決算整理前の勘定残高 金額
売上 1,200,000
仕入 700,000
給料 200,000
地代家賃 120,000
保険料 12,000

決算整理事項

  1. 商品:期首商品は100,000円、期末商品は130,000円。棚卸減耗・商品評価損はありません。
  2. 保険料:資料1の12,000円は、当期10月1日に支払った同日から1年間の保険料の全額です。月割で処理します。
  3. 備品:当期7月1日に240,000円で取得し、同日から使用しています。残存価額ゼロ、耐用年数4年、定額法・月割で減価償却します。減価償却は未記帳です。
  4. 売上債権:整理前残高200,000円のうち、前期に発生した10,000円が貸倒れとなりました。貸倒引当金の整理前貸方残高は3,000円で、これを全額取り崩し、不足額を貸倒損失とします。残った売上債権には2%の貸倒引当金を設定します。ほかの債権はありません。

求めるもの

①売上原価、②当期の保険料、③当期の減価償却費、④当期の貸倒損失と貸倒引当金繰入額、⑤当期純利益を求めてください。④は二つの金額を分けて書きましょう。

解く前に、順番を決める

①〜④は、それぞれ対応する資料で計算できます。⑤はその結果を使用します。まず自分で処理できるものに印を付け、途中式を短く残してから答案へ転記してください。

解答・途中計算と、間違えやすい分岐点

先に自分で計算したい方は、解答欄を開く前にここで止めてください。下の欄を開くと答えと途中計算が表示されます。

解答と途中計算を開く
オリジナル問題の解答(横にスクロールできます)
求めるもの 正解 計算の要点
① 売上原価 670,000円 100,000+700,000−130,000
② 当期の保険料 3,000円 12,000×3か月÷12か月
③ 減価償却費 30,000円 240,000÷4年×6か月÷12か月
④ 貸倒損失/繰入額 7,000円/3,800円 貸倒れ10,000−引当金3,000/残債権190,000×2%
⑤ 当期純利益 166,200円 売上から整理後の費用を控除

① 商品:期末商品が増えると、原価はどう動く?

売上原価は、期首商品と当期仕入の合計から、期末に残った商品を差し引きます。期末商品130,000円は当期に販売していないため、原価から除きます。

100,000 + 700,000 − 130,000 = 670,000円

仕訳で考えるなら、期首分は「仕入100,000/繰越商品100,000」、期末分は「繰越商品130,000/仕入130,000」です。整理前の仕入700,000円を、売上原価670,000円に置き換えて集計します。

② 保険料:支払日と費用の対象期間を分ける

10月〜12月の3か月分が当期費用です。翌年1月〜9月の9か月分9,000円は前払保険料へ振り替えます。整理仕訳は「前払保険料9,000/保険料9,000」です。

当期費用:12,000 × 3/12 = 3,000円
前払額:12,000 × 9/12 = 9,000円

③ 減価償却:月数の起点を問題文に戻って確認

年額は240,000÷4=60,000円。当期は7月〜12月の6か月使用なので、30,000円です。間接法で仕訳を書くなら「減価償却費30,000/備品減価償却累計額30,000」となります。

④ 貸倒れ:先に取り崩してから、期末の必要額を出す

問題の指示により、貸倒引当金3,000円と貸倒損失7,000円を借方、売上債権10,000円を貸方にして処理します。この時点で引当金残高はゼロ、売上債権は190,000円です。

残った債権に2%を設定するため、引当金の必要額は3,800円。整理仕訳は「貸倒引当金繰入3,800/貸倒引当金3,800」です。整理前の引当金3,000円を、もう一度差し引かないことがポイントです。

⑤ 当期純利益:整理後の金額で集計する

1,200,000 − 670,000 − 200,000 − 120,000
− 3,000 − 30,000 − 7,000 − 3,800
= 166,200円

仕入700,000円と売上原価670,000円を両方引いたり、保険料12,000円をそのまま残したりすると二重計上・振替漏れになります。「整理前→増減→整理後」の順に並べると確認しやすくなります。

答えが違ったら、この順に探す

誤答から原因を逆引きする(横にスクロールできます)
出た答え・症状 最初に確かめる場所
売上原価が930,000円になった 期末商品130,000円を足していないか
減価償却費が60,000円になった 年額のまま集計し、6か月に配分し忘れていないか
繰入額が800円になった すでに取り崩した引当金3,000円を、再度差し引いていないか
利益が157,200円になった 保険料の前払振替9,000円が漏れていないか

一つの誤りで利益が違っても、それ以外の個別計算までできていないとは限りません。実際の本試験でどの箇所にどのような採点がされるかを、この例から推測することはできませんが、学習上は処理ごとに確認すると復習の優先順位を付けられます。

時間内に終わらないときの切り上げ方

本試験の簿記論は120分です。ただし、「最初の大問に何分」と一律に決めても、資料量や自分の得意分野で事情は変わります。普段の演習で、予定した順番と実際の時間を比べて調整しましょう。

保留は「何が不明か」を残してから

貸倒処理で迷ったなら、「引当金を取り崩した後の残高が不明」のように、一言だけ残します。戻ったときに最初から読み直す負担を減らすためです。集計には未確定の数字を紛れ込ませず、保留だと分かる印を付けます。

練習では、同じ箇所で2〜3分進展がなければ一度保留する、といった仮ルールを試す方法があります。この分数は公式の推奨ではありません。自分の答案と所要時間を見て、急ぎ過ぎによる取りこぼしと、止まり過ぎによる未着手の両方を調整します。

「保留」と「捨てる」は同じではありません

最初は難しく見えても、ほかを解いた後なら資料の意味が分かることがあります。保留した理由が分かる短いメモを残し、一周後に戻る対象を選びます。戻る時間を全く残さない計画にはしないでください。

計算メモは細かさより、戻れることを優先する

すべての仕訳を長く書けばよいわけでも、頭の中だけで計算すればよいわけでもありません。月数、対象残高、増減の向き、資料番号など、ミスしたときにたどり直せる情報を残します。練習の段階で、自分に必要なメモの量を決めていきましょう。

解きっぱなしを防ぐ復習の手順

  1. 時間内の答案を残す。延長して出した答えは色を変え、時間内の成果と混ぜない。
  2. 誤答を分類する。知識・読取り・順番・集計のどれが原因か記録する。
  3. 最初の誤りだけを切り出す。利益全体が違っても、原因となった個別処理を一問として解き直す。
  4. 日を空けて、資料から再開する。正解の数値を覚えているなら、処理を選ぶ理由も説明する。
復習記録の記入例(横にスクロールできます)
記録欄 今回の問題ならこう書く
間違えた箇所 貸倒引当金繰入を800円とした
分岐した理由 貸倒処理後も引当金3,000円が残ると思った
次の動作 債権と引当金について、整理前→貸倒処理→期末設定の順に残高を書く
解き直しの日 翌日、数日後など、自分の予定へ具体的に入れる

解説の写しを増やすより、次回の動作が一つ変わるかを見てください。正解した問題でも、理由が曖昧だった項目は復習に残します。一方、完全に理解した計算まで毎回同じ量を復習すると、必要な箇所に時間を使えなくなります。

基礎問題から本試験形式へ進む目安

今回の問題は、総合形式への入口です。これが解けても、簿記論の範囲全体や本試験の資料量に対応できたことにはなりません。個別計算を並行して固めながら、基礎総合、応用、本試験形式へと段階を上げます。

次の段階へ進むときの確認

  • 解説なしで基本処理の根拠を説明できる。
  • 必要な資料と科目を対応づけられる。
  • 時間内に解けた箇所と、後から解けた箇所を区別できる。
  • 保留した問題へ戻る判断を、自分の演習記録から見直せる。

教材を探す場合は、先に今の段階を決めてから、独学記事の教材選びを参照してください。ここでは演習方法に絞り、問題集の比較はそちらへまとめています。

本試験形式を確認するときは、国税庁の試験問題・答案用紙を使えます。公開資料に正誤表がある場合は、あわせて確認しましょう。解説を読んでも疑問が解消しない場合は、どの処理で理解が分岐したかをまとめ、講師へ質問できる学習方法も検討します。税理士通信講座の比較では、必要な支援から選ぶ考え方を整理しています。

総合問題の練習についてよくある疑問

最初から時間を計ったほうがよいですか?

所要時間を記録することには意味がありますが、基礎段階で制限時間を守ることだけを優先すると、理解できていない処理を飛ばしたままになりがちです。時間内の結果を残したうえで、延長してどこまで解けるかも確認しましょう。

同じ問題を繰り返すと答えを覚えてしまいます

数字を覚えたら、処理の条件を説明してください。たとえば今回の保険料で、開始月が変わったら費用と前払額がどう変わるかを考えます。その後、同じ論点を含む別の問題で再現できるか確かめましょう。

総合問題で点数が低いときは、個別問題へ全部戻るべきですか?

原因を分けて判断します。仕訳そのものが作れない論点は個別へ戻り、資料の対応や着手順で止まった場合は、総合問題の中でその動作を練習します。戻る範囲を絞ることが、復習をため込まない工夫です。

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簿記・会計資格を保有するメンバーによる編集部です。簿記の学習、税理士・公認会計士試験、資格を活かすキャリアについて情報を提供しています。制度や試験条件は公式案内を参照し、制度上の事実と編集部による学習上の提案を区別して解説します。

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