簿記2級無料講座 第7回:リース会計を攻略!借りているのに資産計上?ファイナンス・リースの仕訳完全マスター

こんにちは!「スキマ時間で合格!日商簿記2級 攻略Web講座」へようこそ。

前回は、固定資産の「除却・廃棄・買換え」といった処分の処理をマスターしました。 今回は、同じ固定資産に関連する論点ですが、少し特殊な**「リース会計」**について解説します。

「リース=借りる」というイメージがありますよね? しかし、簿記2級の世界(特にファイナンス・リース)では、「借りているけれど、実質的には買ったのと同じ」とみなして処理をするのが最大のポイントです。

「なぜ借りているのに資産なの?」 「利子込み法と利子抜き法の違いは?」

このあたりの疑問をスッキリ解消し、試験で頻出のパターンを確実に得点源にしましょう!

今日のゴール

  • 「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の違いがわかる
  • ファイナンス・リースは「売買処理(買ったこと)」にする理由を理解する
  • 「利子込み法」「利子抜き法」の仕訳の違いをマスターする
  • リース資産独特の減価償却ルール(リース期間定額法)を覚える

1. リース会計の基本:2つのリース取引

企業がコピー機やパソコン、営業車などを導入する場合、現金一括で購入する以外に「リース契約」を結ぶことがよくあります。 簿記では、契約の内容によって、リースを大きく2つに分類します。

種類 ファイナンス・リース取引 オペレーティング・リース取引
イメージ 「分割払いでの購入」に近い 単なる「レンタル(賃貸借)」
条件
  1. ノンキャンセラブル (中途解約できない)
  2. フルペイアウト (代金のほぼ全額を払う)
ファイナンス・リース以外のもの
会計処理 売買処理 (資産と負債に計上する) 賃貸借処理 (支払家賃として処理)

簿記2級でメインとなるのは、「ファイナンス・リース取引」です。 契約期間の途中でやめることができず(ノンキャンセラブル)、そのモノを使うためのコストを実質的に全額負担する(フルペイアウト)契約は、形は「賃貸借」でも、実態は「後払いで買った」のと同じですよね。

そのため、資産(リース資産)と負債(リース債務)として計上します。これを「売買処理」といいます。

2. 仕訳攻略:2つの方法を使い分ける!

ファイナンス・リース取引の処理には、リース料に含まれる「利息」をどう扱うかで2つの方法があります。 問題文の指示に従って使い分ける必要があります。

ケースA:利子込み法

リース料総額(元本+利息)をそのまま資産・負債の金額にする方法です。 計算が単純なので、まずはここから押さえましょう。

【例題:利子込み法】 当社は、備品(見積現金購入価額 950円)についてリース契約を結んだ。 ・リース期間:5年 ・リース料:年額 200円(毎年3月末払い) ・リース料総額:1,000円 ・会計処理:利子込み法により処理する。

① 契約時(リース開始時) リース料の総額(200円×5年=1,000円)で、資産と負債を計上します。

(借)リース資産 1,000 (貸)リース債務 1,000

② リース料支払時 計上した「リース債務」を返済していきます。

(借)リース債務 200 (貸)現金預金 200

ケースB:利子抜き法

「リース資産」は本来の価値(現金購入価額)で記録し、リース料に含まれる利息部分は「支払利息」として処理する方法です。 原則的な処理方法であり、支払時の仕訳に注意が必要です。

【例題:利子抜き法】 条件は先ほどと同じ。 ・見積現金購入価額:950円 ・リース料総額:1,000円(差額50円は利息相当額) ・1回目の支払いに含まれる利息相当額は19円とする。 ・会計処理:利子抜き法により処理する。

① 契約時(リース開始時) 資産と負債は、利息を含まない「見積現金購入価額」で計上します。

(借)リース資産 950 (貸)リース債務 950

② リース料支払時(★重要) 支払額200円のうち、19円は「利息」、残りが「元本の返済」です。

(借)リース債務(借)支払利息 18119 (貸)現金預金 200

※ 200円 - 19円 = 181円(リース債務の減少)

3. 決算時の処理:リース資産の減価償却

ファイナンス・リース取引で計上した「リース資産」も、決算で減価償却を行います。 ただし、計算方法に特別なルールがあります。

リース期間定額法

通常の固定資産とは異なり、以下の条件で計算します。

  • 耐用年数リース期間とする
  • 残存価額ゼロとする

【減価償却費の計算(利子込み法の例)】 取得原価 1,000円 ÷ リース期間 5年 = 200円

(借)減価償却費 200 (貸)減価償却累計額 200

【注意点】

問題文に「所有権移転ファイナンス・リース」(契約後に自分のものになる契約)と書かれている場合は、通常の固定資産と同じように「経済的耐用年数」で計算しますが、2級の試験では9割以上が「所有権移転外(自分のものにならない)」が出題されます。

基本は「リース期間で割る」「残存価額ゼロ」と覚えておけばOKです!

POINTまとめ

  • ファイナンス・リース取引は、中途解約不可・フルペイアウトの契約。「売買処理」を行う。
  • オペレーティング・リース取引は、単なる賃貸借。「賃貸借処理(支払家賃)」を行う。
  • 利子込み法:リース料総額で計上。支払時は「リース債務」を減らすだけ。
  • 利子抜き法:現金購入価額で計上。支払時は利息分を「支払利息」とする。
  • 減価償却は、原則として「リース期間」で、残存価額「ゼロ」で計算する(リース期間定額法)。

確認ミニクイズ

今回の内容を定着させましょう!

【Q1】ファイナンス・リース取引と判定されるための条件は、「ノンキャンセラブル(解約不能)」ともう一つは何?

  1. フルペイアウト(コストを全額負担)
  2. キャッシュレス(現金を使わない)
  3. ショートターム(短期契約)
答えを見る
【A1】1. フルペイアウト解説:解約不能で、かつ物件代金や利息などのコストを借り手が実質的にすべて負担する場合、ファイナンス・リースとなります。
【Q2】「利子抜き法」を採用している場合、リース料支払時の貸方科目は「現金預金」ですが、借方科目はどうなる?

  1. 「リース債務」のみ
  2. 「支払家賃」のみ
  3. 「リース債務」と「支払利息」
答えを見る
【A2】3. 「リース債務」と「支払利息」解説:利子抜き法では、リース債務(元本部分)の返済と、利息の支払いを区別して仕訳します。

次回は、目に見えないけれど価値がある「無形固定資産」について解説します。 「のれん」って聞いたことありますか?美味しいお店の暖簾…ではなく、M&Aなどで登場する超重要勘定科目です!お楽しみに。

About 会計資格ドットコム・編集部

View all posts by 会計資格ドットコム・編集部 →