公認会計士が「AI化で消える業務」と「2026年以降も残る高単価案件」を実務ベースで比較

AIが進化すれば、公認会計士の仕事はなくなる。
この言葉に不安を感じている若手会計士の皆さんは、半分正解で、半分間違っています。

正確には、誰でもできる作業はAIに奪われますが、2026年以降に発生する複雑な制度変更の狭間にある高単価な意思決定業務は、むしろ人間(会計士)の独壇場になるからです。

添付資料の分析に基づき、2026年以降にAIによって消滅する業務と、逆に単価が跳ね上がる人間だけの聖域を、実務ベースで徹底比較します。

🤖 この記事で選別する「会計士の未来」


  • 消える業務: SaaSが奪うのは「記帳」だけではない。監査の「単純チェック」も消滅する理由

  • 残る高単価案件: 2026年インボイス出口戦略(3割特例 vs 簡易課税)のシミュレーション

  • FASへのシフト: AIには読めない「行間」を読むアドバイザリー業務への具体的一歩

1. AIとSaaSに「消される」業務の現実

まず、残酷な現実から直視しましょう。以下の業務は、2026年時点でほぼ価値を失います。なぜなら、freeeやマネーフォワードなどのSaaSと、それに搭載されたAIが、人間より早く正確に処理してしまうからです。

① 通帳コピーからの記帳代行・単純入力

銀行API連携が標準化した今、通帳のコピーを見て仕訳を切る仕事は絶滅危惧種です。
さらに、AI-OCRの精度向上により、領収書の入力も自動化されつつあります。ただし、現状ではインボイス番号の読み取り精度などに課題があり、完全自動化には至っていませんが、時間の問題です 。

② 形式的な監査手続(突合・計算チェック)

若手会計士が監査法人でやらされる「証憑突合」や「再計算」。これはAI監査ツールの最も得意な領域です。
異常点の抽出(特異な取引の検知)まではAIが行い、人間は「なぜ異常なのか」をクライアントにヒアリングする部分だけを担うようになります。つまり、「作業者」としての会計士の席はなくなります。

⚠️ しかし、AIは「例外」に弱い

AIが万能かというと、そうではありません。実務ではSaaSの「機能的限界」が露呈しています。
例えば、スマホアプリ版の会計ソフトでは、月次減価償却の開始時期の微調整や、株取引の損失繰越(分離課税)のような複雑な税務処理に対応しきれず、エラーや計上漏れを起こすケースが多発しています 。
「AIがやった処理の尻拭い(修正)」は、しばらく人間の仕事として残るでしょう。

2. 2026年以降も「高単価」で残る業務:制度のバグを突く戦略

AIは「過去のデータ」や「明確なルール」には強いですが、2026年に発生するような「制度の過渡期における複雑な分岐」を判断することはできません。
ここが、若手会計士が狙うべきブルーオーシャンです。

① インボイス「2割特例」終了に伴う出口戦略

2026年9月30日で、インボイス制度の激変緩和措置である「2割特例(売上税額の20%納税)」が終了します 。
その直後、2027年からは「3割特例(予定)」や「簡易課税制度」への移行検討が必要になりますが、ここで高度なシミュレーション能力が求められます。

📊 人間にしかできない「損得判定」

クライアントの業種によって、以下のどちらが得かを瞬時に判断し、提案する必要があります。

  • 選択肢A:新設「3割特例」を使うサービス業(第5種・50%)や不動産業(第6種・40%)の場合、みなし仕入率よりも「3割特例(実質70%控除)」の方が圧倒的に有利です 。
  • 選択肢B:簡易課税制度を選択する卸売業(第1種・90%)や小売業(第2種・80%)の場合、3割特例よりも簡易課税の方が税金が安くなります 。しかし、簡易課税は「事前の届出」が必要です。

「届出を出し忘れると数百万の損が出る」というプレッシャーの中で、将来の売上予測を加味して意思決定をガイドする。これはAIには荷が重い、高付加価値なアドバイザリー業務です。

② 決算期変更による「延命措置」の提案

さらにマニアックですが、「決算またぎ」を利用した節税スキームも人間ならではの提案です。
2割特例は「2026年9月30日を含む課税期間」まで適用可能です 。

9月決算法人:2026年9月30日で特例終了。翌日から増税。
8月決算法人:2026年9月30日は「2027年8月期」に含まれるため、この1年間まるまる2割特例が継続可能 。

「決算期を変更しましょう」という提案は、経営全体への影響を考慮する必要があり、AIが自動生成するレポートには出てこないウルトラCです。

3. 実務家への道:FAS・アドバイザリーへのシフト戦略

では、定型業務から脱却し、こうした高単価案件を扱えるようになるにはどうすれば良いのでしょうか。
監査法人に居続けるだけでは、このスキルは身につきません。

1
ITリテラシーの「質」を変える

これからの会計士に必要なITスキルは、Excelのショートカットではありません。
「SaaSのAPI連携の仕組み」「データベースの構造」を理解することです。
なぜ会計ソフトがエラーを吐くのか、その裏側のロジック(仕様)を理解していれば、クライアントに対して「ツールの不具合なので、運用でこう回避しましょう」とコンサルティングができます。これが現代の「IT監査」の実務版です。

2
国際税務・USCPA領域への越境

2026年は米国でも税制改正(OBBBA等)の影響が出始めます 。
日本の税制だけでなく、米国のTax Techや制度変更をキャッチアップし、「御社の米国子会社にはこんな影響があります」と翻訳して伝えられる会計士は、AI翻訳が進化しても代替されません。なぜなら、そこには「文脈の理解」と「責任」が伴うからです。

AIは「作業」を奪い、「思考」を残す

AI化を恐れる必要はありません。AIが奪ってくれるのは、あなたが本来やりたくなかった「単純作業」だけです。
2026年以降、会計士の仕事は「正解のない問いに、専門知識を使って最適解を出すこと」に集約されます。

インボイスの出口戦略や、SaaSの導入支援など、現場には「人間が判断しなければならないカオス」が溢れています。
作業者(Checker)から、助言者(Adviser)へ。今こそ、キャリアの舵を大きく切るタイミングです。

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