監査法人でのキャリアが10年を超え、マネージャーとしての激務やパートナー昇進レースに疲弊し始めた30代後半。「このままでいいのか?」と自問自答し、キラキラして見える「IPO準備企業のCFO候補」や「管理部長」の求人に心を惹かれていませんか?
しかし、監査のプロであるあなただからこそ、転職後に待ち受けている「理想と現実のギャップ」に苦しむリスクが高いのも事実です。特に2026年に向けて会計・税務の実務環境は劇的に変化しており、かつての「管理職として入ればOK」という常識は通用しません。
添付資料の市場分析に基づき、監査法人のぬるま湯(または激務)から事業会社の荒野へ飛び出した先輩たちが抱く「リアルな後悔」と、それを補って余りある「本当の果実」について、30代後半の視点で徹底解説します。
📊 この記事で得られる「キャリアの羅針盤」
- ✔ 最大の後悔:監査ではあり得ない「SaaSの不条理」と「泥臭い雑務」の正体
- ✔ 30代後半の勝算:「インボイス出口戦略」など、若手には荷が重い”判断業務”の価値
- ✔ 年収ダウンは取り戻せるか? ストックオプションとCFOキャリアの現実的なリターン
1. 転職して【後悔したこと】:監査人としてのプライドが砕け散る瞬間
監査法人では「先生」と呼ばれ、整備された調書やERP(SAP/Oracle)を見ていたあなたが、IPO準備企業(ベンチャー)に入社して最初に感じるのは「屈辱」にも似た後悔です。
① 会計ソフト(SaaS)が「言うことを聞かない」ストレス
あなたは「内部統制の構築」や「決算早期化」のために雇われたはずです。しかし、現場で使われているクラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)は、監査法人が前提とする大企業向けERPとは設計思想が根本的に異なります。
【減価償却の悪夢】
IPO準備において固定資産管理は重要論点ですが、SaaSのスマホアプリ版UIなどから入力された資産データが、意図しない償却設定(月次償却が始まらない、など)になるケースが多発します 。
あなたはCFO候補として入社したのに、来る日も来る日も「なぜ減価償却費が計上されないのか?」というシステムのエラー原因を探る作業に追われます。
【インボイスのOCR地獄】
「AI-OCRで自動入力」という触れ込みを信じて導入したものの、実際は手書き領収書や複雑な請求書の読み取り精度に限界があり、インボイス登録番号(T+13桁)の照合エラーを一つ一つ手動で修正する羽目になります 。
「こんな単純作業をするために会計士になったんじゃない」——深夜のオフィスでそう呟く瞬間が、最大の後悔ポイントです。
② 「管理部長」=「高級・何でも屋」の現実
30代後半で採用される場合、肩書きは「管理部長」や「CFO」であることが多いでしょう。 しかし、社員数30〜50名規模のフェーズでは、管理部門にはあなたしかいない(あるいは部下が1〜2名)こともザラです。
総務業務: 蛍光灯の交換、備品の発注、オフィスの掃除。
労務業務: 入退社手続き、勤怠管理の締め作業。
法務業務: 契約書の一次チェック(リーガルチェック)。
監査法人時代は「監査」だけに集中できましたが、事業会社では「会社を回すための全ての雑用」があなたの仕事です。この「専門性の希釈」に耐えられず、監査法人に出戻りするケースは後を絶ちません。
2. 転職して【良かったこと】:監査では味わえない「手触り感」と「市場価値」
しかし、その「泥臭さ」を許容できた人だけが、監査法人では絶対に得られない「経営の実感」と「リターン」を手にしています。
① 「指摘する側」から「決定する側」への転換
監査では、クライアントが作った処理を「適正か否か」判定するだけでした。 事業会社では、答えのない問いに対して「どう処理するかを決める(Makeする)」のが仕事です。
特に2026年は、インボイス制度や税制改正の過渡期です。 例えば、インボイスの「2割特例」が2026年9月末で終了する際 、会社のキャッシュフローを最大化するために、「いつ簡易課税を選択すべきか」「決算期変更を行って特例期間を延ばすべきか 」といった高度な税務戦略を立案し、社長に提案して実行に移す。 自分が引いた図面通りに会社が動き、利益が出る。このダイナミズムは事業会社の醍醐味です。
② 「35歳の壁」を超えた希少価値
30代後半の会計士は、監査法人内では「滞留層」扱いされがちですが、外の世界では「激レア人材」です。 現在、IPO準備企業は若手(20代)の採用に苦戦しています。2026年の試験制度改革(短答式の時短化など)により、若手合格者は「スピード重視・知識偏重」の傾向が強まる可能性があります 。
その中で、監査法人で培った「論理的思考力」「交渉力」「タフネス」を持つ30代ベテラン会計士は、若手には任せられない「証券会社対応」や「監査法人対応(かつての同僚との交渉)」において、圧倒的なパフォーマンスを発揮します。 「監査法人ではコモディティ(代替可能)」だった自分が、ここでは「替えの効かない参謀」として重宝される。この自己肯定感の回復は大きなメリットです。
3. 30代後半・監査経験者が「勝つ」ための生存戦略
無謀な転職でキャリアを傷つけないために、以下の戦略を持って挑んでください。
1 年収ダウンは「SO(ストックオプション)」で回収する計算を持つ
監査法人からベンチャーに行けば、現金給与は年収800〜1,000万円程度に下がる(監査法人マネージャークラスなら数百万ダウン)のが一般的です。 これを「損」と捉えるか、「投資」と捉えるか。 上場時のキャピタルゲインを含めれば、生涯年収で監査法人を上回る可能性は十分にあります。面接では必ず「SOの付与率」と「資本政策(Cap Table)」を確認してください。これを聞けるのが会計士の強みです。
2 「完璧主義」を捨てる(60点主義への転向)
監査人の職業病である「重要性の基準値以下でも気になる」性格は、事業会社では「仕事が遅い人」と評価されます。 SaaSのエラーも、雑用も、全てを完璧にこなそうとせず、「上場審査に通る最低ライン(形式基準・実質基準)」を見極め、そこに向けてリソースを配分する。 この「捨てる勇気」を持てるかどうかが、30代転職の成否を分けます。
結論:監査法人で「くすぶる」くらいなら、外で「泥」を被れ
30代後半での転職は、確かにリスクです。 しかし、2026年問題をはじめとする複雑怪奇な法改正ラッシュは、経験豊富な会計士にとって「知識を実務価値に変える」絶好のチャンスタイムでもあります。
監査法人で次の昇進を待つ数年と、IPO準備企業で泥まみれになりながら上場の鐘を鳴らす数年。 どちらがあなたの人生を豊かにするか、答えは出ているはずです。まずはエージェントと話し、自分の「監査経験」が市場でいくらの値札が付くのかを確認することから始めてください。

