「AIが発達すれば、公認会計士の仕事はなくなる」
この数年、何度も繰り返されてきた議論です。しかし、会計業界の現場で起きている現実は、この予測とは真逆の方向に進んでいます。
実は、AIやSaaS(クラウド会計ソフト)が進化すればするほど、「自動化できないニッチな領域」や「複雑な判断業務」の価値が高騰しているのです。
添付資料の分析に基づき、2026年以降のDX時代において、なぜ公認会計士が生き残り、どのようなスキルを持つ人材が「最強」となるのかを徹底解説します。
🤖 この記事で解き明かす「AIと会計士」の未来
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AI・SaaSの限界:なぜ「減価償却」や「損失繰越」で自動化が止まるのか? - ✔
2026年の制度改革:試験時間短縮が示唆する「知識より判断」へのパラダイムシフト - ✔
DX時代の勝者:「インボイスの出口」と「OBBBA」を操る翻訳者としての役割
1. 「SaaSの幻滅」が証明したAIの限界
「クラウド会計ソフトを使えば、簿記の知識なんていらない」
かつてそう謳われましたが、2025年現在、現場ではその「機能的限界」に悲鳴が上がっています 。
自動化ツールは「定型業務」には強いですが、「例外処理」や「制度の狭間」には無力**だからです。
⚠️ AI・SaaSが「できない」こと
① 複雑な減価償却:
スマホアプリ版のfreeeなどでは、月次償却の開始時期や固定資産台帳の微調整といった高度な操作が制限されており、意図せず経費が計上されないリスクがあります 。
② 特殊な税務申告:
株取引の損失繰越(分離課税)や先物取引など、申告書第三表・第四表が絡む処理は、UIが複雑で自動化の精度が落ちます 。
👤 会計士の新たな役割
「トラブルシューティング」:
ユーザーがツールの限界に直面した時、「なぜエラーが出るのか」「どうすればリカバリーできるのか」を診断する医師のような役割が求められています 。
「Web版への誘導と指導」:
アプリで完結しようとするユーザーに対し、「ここからはPCでWeb版を開いて操作すべき」と適切なツール選定をアドバイスするITコンサルの側面が強まっています 。
つまり、AIは「単純作業」を奪いましたが、その代わりに「ツールの不具合や仕様上の限界を解決する」という高度な仕事を会計士に与えたのです。
2. 2026年試験改革が示す「人間に求められる能力」
金融庁や公認会計士・監査審査会も、AI時代の到来を見越して試験制度を変革しています。
その象徴が、2026年(令和8年)からの短答式試験「企業法」の試験時間短縮(60分→50分)です 。
なぜ時間を減らすのか?
AIは「膨大な知識の検索」を一瞬で行います。人間が知識量でAIに勝つことは不可能です。
しかし、「限られた時間と不完全な情報の中で、最適解を即決する(見切る)」能力は、人間にしか発揮できません。
試験時間の短縮は、単なる難化ではなく、「知識の貯蔵庫」から「判断の司令塔」へと会計士のモデルチェンジを促すメッセージです。
これから目指すべきは、「六法全書を丸暗記する人」ではなく、「重要でない論点を瞬時に捨て、核心を突く判断ができる人」です 。
3. AIには読めない「制度の狭間(グレーゾーン)」
2026年には、インボイス制度や国際税務において、非常に複雑な「制度の継ぎ目」が発生します。
ここはAIが学習データを持たないため、最も苦手とする領域であり、会計士の独壇場となります。
① インボイス「2割特例」の出口戦略
2026年9月30日でインボイスの「2割特例」が終了し、新たに「3割特例(予定)」や簡易課税への移行が始まります 。
ここで重要になるのが「決算またぎ」の判定です。
9月決算法人:2026年10月から即座に特例終了。
8月決算法人:2026年9月30日を含む期(2027年8月まで)は特例が使える 。
このように、「決算月をいつにするか」だけで納税額が数百万円変わる可能性があります。このような「制度のバグ」を突いた戦略的アドバイスは、過去のデータを学習するだけのAIには提案できません。
② USCPAとOBBBA(国際税務の激変)
米国公認会計士(USCPA)試験も、2026年からOBBBA(One Big Beautiful Bill Act)などの税制改正を反映して試験範囲が変わります 。
英語の原文情報を読み解き、日本のクライアントに「あなたの場合、Standard Deduction(標準控除)の増額がどう影響するか」を翻訳して伝える能力。これもまた、人間にしかできない高度なコミュニケーションです 。
4. 結論:DX時代の「最強の会計士」とは?
「会計士の仕事はなくならない」が結論ですが、「従来の会計士(記帳代行や単純監査)」の価値は暴落します。
2026年以降、高単価で活躍するのは以下のスキルセットを持つ人材です。
AIは「敵」ではなく「最強の相棒」
AIが進化すればするほど、計算や集計の手間はなくなり、会計士は本来の「コンサルティング」や「経営判断のサポート」に専念できるようになります。
2026年の制度改革は、この新しい時代の幕開けです。
「AIに仕事を奪われる」と怯えるのではなく、「AIを使い倒して、誰も解決できない問題を解決する専門家」を目指してください。そのための第一歩は、最新の試験傾向を知り、基礎を盤石にすることから始まります。

