2026年(令和8年)の2割特例終了後にスタートする「3割特例」。個人事業主にとって強力な救済策となりますが、「一律に3割特例を選べば正解」というわけではありません。
業種によっては、従来の「簡易課税制度」を選択したほうが納税額をさらに抑えられるケースがあるからです。今回は、3割特例の損得勘定を左右する「みなし仕入率」との比較を中心に、メリットとデメリットを実務目線で整理します。
この記事の重要ポイント
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3割特例は実質的に「みなし仕入率70%」と同等の負担 - ■
サービス業や不動産業なら3割特例の方が圧倒的に有利 - ■
3割特例は事前の届出が不要という大きなメリットがある
1. 業種別:3割特例 vs 簡易課税の損益分岐点
3割特例(売上税額の30%納税)は、実質的に「70%の経費(仕入)」を認める制度です。これを簡易課税制度の「みなし仕入率」と比較すると、選ぶべき選択肢が明確になります。
| 業種区分 | みなし仕入率 | どちらがお得? |
|---|---|---|
| 第1種:卸売業 | 90% | 簡易課税 |
| 第2種:小売業 | 80% | 簡易課税 |
| 第3種:建設・製造業 | 70% | どちらでも同等 |
| 第5種:サービス業 | 50% | 3割特例 |
| 第6種:不動産業 | 40% | 3割特例 |
卸売業や小売業の方は、3割特例(70%控除)を使うよりも、簡易課税(80〜90%控除)を選択したほうが納税額は少なくなります。 逆に、サービス業や不動産業の方は3割特例を選ばないと損をする計算になります。
2. 3割特例を選ぶ最大のメリットは「手続きの手軽さ」
納税額以外にも、3割特例には大きな強みがあります。それは「事前の届出が一切不要」という点です。
- 簡易課税の罠: 簡易課税を適用するには、適用したい年度の前日までに「選択届出書」を提出しなければなりません。 これを忘れると、自動的に手間のかかる本則課税が適用されます。
- 3割特例の柔軟性: 3割特例は申告書への付記だけで適用できるため、申告の直前に「本則、簡易、3割特例」の中で最も安いものをその場で選べるという圧倒的な柔軟性があります。
3. デメリットと注意点:法人は「蚊帳の外」
非常に便利な3割特例ですが、以下の点には注意が必要です。
- 法人は対象外となる見込み: 令和8年度改正案では、この特例は「個人事業主」を対象としており、法人は対象外となる方向です。
- 2年間の期間限定: 令和9年分と令和10年分の2年間限定の措置であるため、その後の対策(簡易課税への切り替え届出など)を忘れないようにしなければなりません。
まとめ:まずは自分の「業種区分」を確認しよう
- サービス業・不動産業の個人事業主は、3割特例がデフォルトの正解
- 卸売・小売業なら、忘れずに簡易課税の届出を検討する
- 3割特例は事前の手続きが不要なので、申告時に落ち着いて判断すればOK
3割特例は、2割特例が終了した後のフリーランスにとって非常に強力な味方です。しかし、法人は対象外となる見込みであるなど、立場によって戦略は異なります。自身の業種と照らし合わせ、最もキャッシュが残る方法を選択しましょう。

