会社が活動して利益が出れば、当然「税金」を支払わなければなりません。簿記2級では、会社の利益にかかる「法人税等」と、売買に伴って発生する「消費税」の2大税金を扱います。
「税金を払うだけでしょ?」と思うかもしれませんが、期中の中間納付や、記帳方法(税抜か税込か)によって仕訳が大きく変わるため、正確な理解が必要です。
この記事でマスターすること
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法人税等の中間申告(仮払法人税等)と決算時の確定処理 - ✔
消費税の税抜方式(仮受・仮払)の基本 - ✔
【重要】税込方式の場合、決算で「租税公課」を使う!
1. 法人税、住民税及び事業税(法人税等)
会社の利益(正確には課税所得)に対して課される税金です。長いので、勘定科目としては「法人税、住民税及び事業税」を使いますが、解説では「法人税等」と呼びます。
① 期中の処理(中間申告・納付)
法人税等は、決算が終わってから一度に払うのではなく、期中に「見込み額」を前払いする制度があります。これを中間申告・納付といいます。
仕訳のルール:
前払いした税金は、まだ確定していないため「仮払法人税等(資産)」として処理します。
例:期中において、法人税等の中間納付額1,000円を現金で納付した。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仮払法人税等 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
② 決算時の処理(確定・計上)
決算において、今年の利益に基づいた「本当の税金額」が計算されます。そこから、すでに払った「仮払分」を差し引いて、足りない分を「未払法人税等(負債)」として計上します。
例:当期の法人税等が3,000円と計算された。なお、中間納付額1,000円(仮払法人税等)があるため、差額を未払計上する。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税、住民税 及び事業税 |
3,000 | 仮払法人税等 未払法人税等 |
1,000 2,000 |
※借方は費用の発生、貸方は資産の減少と負債の増加です。
2. 消費税の処理(税抜 vs 税込)
消費税は、企業が負担するものではなく、「お客様から預かって、国に納める」ものです。
記帳方法には「税抜方式(原則)」と「税込方式(例外)」の2つがあり、試験ではどちらで指示されるか必ず確認が必要です。
① 税抜方式(原則)
3級で学んだ方法です。売上や仕入の金額と、消費税の金額を分けて記帳します。
- 売上時:預かった税金 ➡ 仮受消費税(負債)
- 仕入時:支払った税金 ➡ 仮払消費税(資産)
- 決算時:差額を計算 ➡ 未払消費税(負債)
② 税込方式(2級の注意点!)
売上や仕入の金額に消費税を含めて記帳します。
つまり、期中は「仮受消費税」や「仮払消費税」という勘定科目は出てきません。
税込方式の決算処理(超重要)
決算にて、納付すべき消費税額を計算し、その金額を「租税公課(費用)」として計上し、相手科目を「未払消費税(負債)」とします。
仕訳:(借)租税公課 ×× (貸)未払消費税 ××
比較表:決算整理仕訳の違い
例:当期の「仮受消費税」相当額が500円、「仮払消費税」相当額が300円であった。決算仕訳を行いなさい。
| 方式 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 税抜方式 | 仮受消費税 500 (負債の減少) |
仮払消費税 300 未払消費税 200 |
| 税込方式 | 租税公課 200 (費用の発生) |
未払消費税 200 (負債の増加) |
税込方式の場合、差額(納付額200円)だけを新たに費用計上するのがポイントです。
※売上や仕入に税金が含まれているため、利益が多く計算されすぎています。そのため、最後に「租税公課」という費用を計上して、利益を適正額に調整するのです。
🚀 確認ミニクイズ
次の取引の勘定科目と金額を答えてください。
Q1. 法人税等の中間納付として現金50万円を納付した。借方の科目は?
Q2. 決算において、当期の法人税等は120万円と確定した。中間納付額50万円を差し引いた残額を計上する。貸方に出てくる「負債」の科目は?
Q3. 当社は消費税について「税込方式」を採用している。決算において、当期の納付すべき消費税額が10万円と計算された。借方の科目は?
答えを見る(クリックして展開)
A1. 仮払法人税等
(借)仮払法人税等 500,000 / (貸)現金 500,000
A2. 未払法人税等
(借)法人税、住民税及び事業税 1,200,000
(貸)仮払法人税等 500,000 / 未払法人税等 700,000
A3. 租税公課
税込方式の決算整理は(借)租税公課 100,000 / (貸)未払消費税 100,000 となります。
まとめ
- 法人税等: 中間納付は「仮払法人税等」。決算で精算して残りを「未払」にする。
- 消費税(税抜): 期中に仮受・仮払を使い、決算で相殺。
- 消費税(税込): 期中は税金を含めて処理。決算で納付額を「租税公課」として計上する。
ここまでで、簿記2級の「商業簿記」の第1章~第2章(資産・負債・純資産)が終わりました!
次回からはいよいよ第3章、新しい科目「工業簿記」がスタートします。
工場の会計は、商業簿記とは全く違う考え方をするので、頭を切り替えていきましょう!

