製造原価の3要素、ラストは「経費」です。
材料(モノ)でも労務費(ヒト)でもない、それ以外のすべてのコストがここに集まります。具体的には、電気代、水道代、工場の家賃、減価償却費、外注加工費などです。
種類が多いのでごちゃごちゃしやすいですが、試験で問われるポイントは「どうやって金額を計算するか(4つの分類)」と「仕掛品になるか、製造間接費になるか」の2点だけです。ここをスッキリ整理しましょう!
この記事でマスターすること
- ✔
経費の4分類(支払・月割・測定・発生)を理解する - ✔
支払経費の計算には、未払だけでなく「前払費用」の調整も必要 - ✔
外注加工費と特許権使用料は「直接経費(仕掛品)」の代表!
1. 経費の4つの分類
経費は、金額を把握する方法によって以下の4つに分類されます。計算問題で「どの計算方法を使うか」の判断基準になるので、ざっくりイメージをつかんでください。
| 分類名 | 主な勘定科目 | 計算の特徴 |
|---|---|---|
| ① 支払経費 | 外注加工費、旅費交通費、修繕費など | 請求書が来て払うもの。 「支払額」から「未払・前払」を調整して計算する。 |
| ② 月割経費 (つきわり) |
減価償却費、保険料、賃借料など | 毎月一定額かかるもの。 年額 ÷ 12ヶ月 で1ヶ月分を計算する。 |
| ③ 測定経費 | 電力料、ガス代、水道代 | メーターで測るもの。 当月の消費量に基づいて計算する。 |
| ④ 発生経費 | 棚卸減耗損 | その時々で発生するもの。 発生額そのものを計上する。 |
2. 支払経費の計算(未払と前払)
①の「支払経費」は、労務費と同じく「支払った日」と「使った期間」がズレることがあります。
労務費と違うのは、家賃などを「前払い」するケースがあることです。
当月消費額の計算式(完全版)
当月支払額 - (前月未払 + 当月前払) + (当月未払 + 前月前払)
ちょっと複雑に見えますが、要するに
「当月に関係ないもの(先月の借金返済や来月分の前払い)を引く」
「当月に関係あるもの(今月のツケや先月に前払い済み分)を足す」
と考えればOKです!
例題:支払経費の計算
当月の外注加工費の支払額は100円だった。前月の未払分が20円、当月の未払分が30円ある。
計算: 100(支払) - 20(前月未払) + 30(当月未払) = 110円(当月消費額)
3. 直接経費と間接経費の振り分け
ここが試験の最頻出ポイントです。計算された経費は、製品との関係性によって「直接経費」か「間接経費」に分けられ、行先が変わります。
| 種類 | 該当する主な科目(暗記!) | 借方の行先 |
|---|---|---|
| 直接経費 |
|
仕掛品 |
| 間接経費 |
|
製造間接費 |
経費の9割は「間接経費(製造間接費)」です。
だから、「外注加工費」と「特許権使用料」だけが『仕掛品』に行く! と覚えて、それ以外は全部『製造間接費』に放り込めばOKです。
仕訳例:経費の消費
当月の経費消費額は以下の通りであった。
・外注加工費:100円
・電力料:50円
・減価償却費:30円
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 製造間接費 |
100 80 |
経費 (または各勘定科目) |
180 |
※ 仕掛品 = 外注加工費(100)
※ 製造間接費 = 電力(50) + 償却(30) = 80
🚀 確認ミニクイズ
次の問いに答えてください。
Q1. 減価償却費や保険料など、月割計算で求める経費を何経費という?
Q2. 製品の一部を協力工場で作ってもらった際にかかる「外注加工費」。これを消費した時の借方科目は?
Q3. 工場の水道光熱費を消費した時の借方科目は?
答えを見る(クリックして展開)
A1. 月割経費
12ヶ月で割って計算するタイプです。
A2. 仕掛品
外注加工費は「直接経費」なので、直接「仕掛品」になります。
A3. 製造間接費
水道光熱費は「間接経費」なので、一旦「製造間接費」に集められます。
まとめ
- 経費には支払・月割・測定・発生の4つの計算パターンがある。
- 支払経費の計算は「未払」や「前払」を調整して消費額を出す。
- 外注加工費・特許権使用料は「直接経費」➡ 仕掛品へ!
- それ以外の減価償却費などは「間接経費」➡ 製造間接費へ!
これで「材料・労務費・経費」の3要素が出揃いました。
次回は、ここまで何度も出てきた「製造間接費」を深掘りします。なぜ「予定配賦(よていはいふ)」をするのか? 実際の金額とズレたらどうするのか? 工業簿記の心臓部へ進みます!

