簿記2級無料講座 第17回:経費の計算! 外注加工費と複雑な減価償却費を整理する

製造原価の3要素、ラストは「経費」です。
材料(モノ)でも労務費(ヒト)でもない、それ以外のすべてのコストがここに集まります。具体的には、電気代、水道代、工場の家賃、減価償却費、外注加工費などです。

種類が多いのでごちゃごちゃしやすいですが、試験で問われるポイントは「どうやって金額を計算するか(4つの分類)」「仕掛品になるか、製造間接費になるか」の2点だけです。ここをスッキリ整理しましょう!

この記事でマスターすること


  • 経費の4分類(支払・月割・測定・発生)を理解する

  • 支払経費の計算には、未払だけでなく「前払費用」の調整も必要

  • 外注加工費と特許権使用料は「直接経費(仕掛品)」の代表!

1. 経費の4つの分類

経費は、金額を把握する方法によって以下の4つに分類されます。計算問題で「どの計算方法を使うか」の判断基準になるので、ざっくりイメージをつかんでください。

分類名 主な勘定科目 計算の特徴
① 支払経費 外注加工費、旅費交通費、修繕費など 請求書が来て払うもの。
「支払額」から「未払・前払」を調整して計算する。
② 月割経費
(つきわり)
減価償却費、保険料、賃借料など 毎月一定額かかるもの。
年額 ÷ 12ヶ月 で1ヶ月分を計算する。
③ 測定経費 電力料、ガス代、水道代 メーターで測るもの。
当月の消費量に基づいて計算する。
④ 発生経費 棚卸減耗損 その時々で発生するもの。
発生額そのものを計上する。

2. 支払経費の計算(未払と前払)

①の「支払経費」は、労務費と同じく「支払った日」と「使った期間」がズレることがあります。
労務費と違うのは、家賃などを「前払い」するケースがあることです。

当月消費額の計算式(完全版)

当月支払額 - (前月未払 + 当月前払) + (当月未払 + 前月前払)

ちょっと複雑に見えますが、要するに
「当月に関係ないもの(先月の借金返済や来月分の前払い)を引く」
「当月に関係あるもの(今月のツケや先月に前払い済み分)を足す」
と考えればOKです!

例題:支払経費の計算

当月の外注加工費の支払額は100円だった。前月の未払分が20円、当月の未払分が30円ある。

計算: 100(支払) - 20(前月未払) + 30(当月未払) = 110円(当月消費額)

3. 直接経費と間接経費の振り分け

ここが試験の最頻出ポイントです。計算された経費は、製品との関係性によって「直接経費」か「間接経費」に分けられ、行先が変わります。

種類 該当する主な科目(暗記!) 借方の行先
直接経費
  • 外注加工費 (下請けに出した費用)
  • 特許権使用料 (製品1個いくらのロイヤリティ)
仕掛品
間接経費
  • 電力料、ガス代、水道代
  • 減価償却費
  • 保険料、修繕費
  • 工場の家賃(賃借料)など
  • 上記以外すべて!
製造間接費
💡 覚え方のコツ
経費の9割は「間接経費(製造間接費)」です。
だから、「外注加工費」と「特許権使用料」だけが『仕掛品』に行く! と覚えて、それ以外は全部『製造間接費』に放り込めばOKです。

仕訳例:経費の消費

当月の経費消費額は以下の通りであった。
・外注加工費:100円
・電力料:50円
・減価償却費:30円

借方科目 金額 貸方科目 金額
仕掛品
製造間接費
100
80
経費
(または各勘定科目)
180

※ 仕掛品 = 外注加工費(100)
※ 製造間接費 = 電力(50) + 償却(30) = 80

🚀 確認ミニクイズ

次の問いに答えてください。


Q1. 減価償却費や保険料など、月割計算で求める経費を何経費という?

Q2. 製品の一部を協力工場で作ってもらった際にかかる「外注加工費」。これを消費した時の借方科目は?

Q3. 工場の水道光熱費を消費した時の借方科目は?

答えを見る(クリックして展開)

A1. 月割経費
12ヶ月で割って計算するタイプです。

A2. 仕掛品
外注加工費は「直接経費」なので、直接「仕掛品」になります。

A3. 製造間接費
水道光熱費は「間接経費」なので、一旦「製造間接費」に集められます。

まとめ

  • 経費には支払・月割・測定・発生の4つの計算パターンがある。
  • 支払経費の計算は「未払」「前払」を調整して消費額を出す。
  • 外注加工費・特許権使用料は「直接経費」➡ 仕掛品へ!
  • それ以外の減価償却費などは「間接経費」➡ 製造間接費へ!

これで「材料・労務費・経費」の3要素が出揃いました。
次回は、ここまで何度も出てきた「製造間接費」を深掘りします。なぜ「予定配賦(よていはいふ)」をするのか? 実際の金額とズレたらどうするのか? 工業簿記の心臓部へ進みます!

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