簿記2級無料講座 第16回:労務費の計算! 賃金・給料の支払と消費、予定賃率とは?

材料(モノ)の次は、労務費(ヒト)の計算です。いわゆる人件費のことですが、簿記2級では少し複雑な計算をします。

なぜなら、「給料の支払日(毎月25日など)」と「原価計算の期間(1日~末日)」が一致しないことが多いからです。このズレをどう調整するかが今回のメインテーマです。また、計算をスピードアップさせるための「予定賃率」も登場します!

この記事でマスターすること


  • 給料の「支払額」と「消費額」は違う! 未払賃金による調整

  • 直接工の作業時間は「直接作業(仕掛品)」「間接作業(製造間接費)」に分ける

  • 予定賃率を使った計算(@予定単価 × 実際時間)

1. 支払額と消費額のズレ(未払賃金)

工場では毎月1日から末日までの原価を計算したいのに、給料日は「20日締め・25日払い」だったりします。この場合、単に支払った金額をそのまま原価にするわけにはいきません。

【図解】期間のズレと調整イメージ

4月の原価計算期間(4/1 ~ 4/30)
前月支払分(3/21 ~ 4/20)
当月未払分
4/1
4/20(締日)
4/30

4月の原価(消費額)を計算するには、
支払った額から「前月の未払分(3/21~3/31)」を引き
まだ払っていない「当月の未払分(4/21~4/30)」を足す必要があります。

計算式(「消費額」を求める公式)

当月の消費額 = 当月支払額 - 前月未払高 + 当月未払高

※「賃金・給料」勘定(費用)のボックス図を書くと分かりやすいです(借方に支払と前月未払、貸方に当月未払を書く、という形ではありません。逆です。下記参照)。

勘定連絡図での流れ

借方(増える) 貸方(減る=消費)
当月支払額
(現金で払った分)当月未払高
(当月の労働だが来月払う分)
前月未払高
(支払額に含まれる前月分を除く)④ 当月消費額(差額)
➡ 仕掛品・製造間接費へ

※試験ではこの「④ 消費額」を計算させられます。

2. 誰が何をしたか?(消費額の分類)

計算した「消費額」は、どの勘定科目に振り替えるのでしょうか? それは「誰が」「何をしたか」で決まります。

職種 作業内容 分類 行き先(借方)
直接工
(現場の職人)
直接作業時間
切削、組立など製品に直結
直接労務費 仕掛品
間接作業時間
掃除、機械整備、待機など
間接労務費 製造間接費
間接工
(警備・事務等)
すべての作業 間接労務費 製造間接費

注意点: 直接工であっても、掃除や待ち時間などの「間接作業」をしている間は、製品を直接作っているわけではないので「製造間接費」になります。ここがひっかけポイントです!

3. 予定賃率(計算を早くするテクニック)

実際の給料額が確定するのを待っていると、原価計算が遅れてしまいます。そこで、あらかじめ決めておいた「予定賃率(時給のようなもの)」を使って、サッと計算する方法がよく使われます。

予定消費額の計算式

予定賃率 × 実際の作業時間 = 予定消費額

差異の処理(賃率差異)

「予定」で計算すると、後で判明した「実際」の金額と必ずズレが生じます。このズレを「賃率差異(ちんりつさい)」といいます。

  • 有利差異(貸方差異):
    予定より実際のコストが安く済んだ場合。(得した!)
  • 不利差異(借方差異):
    予定より実際のコストが高くついた場合。(損した…)

仕訳例:予定賃率での計上

問:直接工の直接作業時間は100時間、間接作業時間は20時間であった。予定賃率1,000円/時を用いて消費額を計上する。

借方科目 金額 貸方科目 金額
仕掛品
製造間接費
100,000
20,000
賃金(または労務費) 120,000

※ 仕掛品:1,000円×100時間
※ 間接費:1,000円×20時間

🚀 確認ミニクイズ

次の問いに答えてください。


Q1. 賃金の当月支払額が200、前月未払高が20、当月未払高が30の場合、当月の消費額はいくら?

Q2. 直接工が行った「機械の掃除」や「待機時間」のコストは、どの勘定科目に振り替えられる?

Q3. 予定消費額(100)よりも実際消費額(110)の方が大きかった。この差額(10)は有利差異?不利差異?

答えを見る(クリックして展開)

A1. 210
支払(200) - 前月未払(20) + 当月未払(30) = 210。
「先月分を引いて、今月分を足す」と覚えましょう。

A2. 製造間接費
直接工でも、製品に直接関わらない時間は間接費になります。

A3. 不利差異(借方差異)
予定よりコストがかかってしまったので、会社にとっては「損(不利)」です。

まとめ

  • 消費額の計算:支払額 - 前月未払 + 当月未払
  • 直接工の作業:「直接作業」だけが仕掛品。それ以外は間接費。
  • 予定賃率:@予定単価 × 実際時間で計算し、差額は賃率差異へ。

次回は、3要素の最後「経費」です。水道光熱費や減価償却費など、「材料と人件費以外」のすべてが登場します。ここでも「支払と消費のズレ」がポイントになります!

About 会計資格ドットコム・編集部

View all posts by 会計資格ドットコム・編集部 →