工業簿記の旅、最初のエリアは「材料費」です。
工場では、木材や鉄などの「素材」だけでなく、ネジや燃料、軍手などもすべて「材料」として扱います。これらを購入し、使った分を計算して、月末に残った在庫を確認する流れをマスターしましょう。
特に、実際の在庫が帳簿より少なかった場合の「棚卸減耗損」の扱いは、試験で必ずと言っていいほど問われます!
この記事でマスターすること
- ✔
材料の購入原価には、運賃などの付随費用を含める - ✔
材料を使った時の仕訳(直接材料なら仕掛品、間接材料なら製造間接費) - ✔
棚卸減耗損は「正常」なら製造原価、「異常」なら営業外・特損へ
1. 材料の購入と消費
① 購入時(付随費用はオンする!)
商業簿記の「仕入」と同じルールです。材料本体の価格に、引取運賃や手数料などの付随費用を足した金額で記録します。
材料の取得原価 = 購入代価 + 付随費用(運賃など)
仕訳例:材料1,000円を購入し、代金は掛けとした。なお、引取運賃100円は現金で支払った。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 材料 | 1,100 | 買掛金 現金 |
1,000 100 |
② 消費時(どこに使ったかで区別)
材料を工場で使ったときは、貸方で「材料」を減らし、借方は「どのように使ったか」で2つに分かれます。
| 分類 | 内容 | 借方の相手科目 |
|---|---|---|
| 直接材料費 | 製品の本体になる材料。 (例:机にとっての木材) |
仕掛品 |
| 間接材料費 | 補助的に使った材料。 (例:釘、接着剤、燃料) |
製造間接費 |
※「どの製品のために使ったか明確なもの」は仕掛品、「みんなのために共通で使ったもの」は製造間接費に行きます。
2. 消費数量の計算と棚卸減耗損
材料を使った量は、「継続記録法」(使うたびに記録する方法)で管理します。
そして月末に倉庫を確認すると、帳簿上の数よりも実際の数が減っていることがあります。これを「棚卸減耗損」といいます。
計算ボックス図のイメージ
【材料ボックス図】
期首 + 当期購入
当期消費額
棚卸減耗損
月末実地棚卸
帳簿には「あるはず」の在庫がなくなっていた場合、その金額(@平均単価 × 減耗数量)を計算し、「棚卸減耗損」という勘定科目に振り替えます。
3. 棚卸減耗損の処理(正常 vs 異常)
ここが2級の最重要ポイントです。発生した棚卸減耗損を「何費」にするかは、その減り方が「よくあること(正常)」か「とんでもないミス(異常)」かで変わります。
| 判定 | 考え方 | 会計処理(行き先) |
|---|---|---|
| ⭕ 正常 (不可避) |
蒸発や多少の紛失など、製造活動に伴ってどうしても発生してしまうもの。 ➡ 「製品を作るコスト」と認める。 |
製造間接費 (または経費) ➡ 製造原価になる |
| ❌ 異常 (管理不備) |
盗難、火災、保管ミスなど、本来あってはならない理由で減ったもの。 ➡ 「製品コスト」には含めない。 |
営業外費用 または 特別損失 ➡ 製造原価にならない |
仕訳例:棚卸減耗損の計上
問:決算において、棚卸減耗損が100円発生した。このうち80円は正常なものであり、20円は異常なものである。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 製造間接費 棚卸減耗損 |
80 20 |
材料 | 100 |
※借方の「異常な分(20円)」は、問題によっては「営業外費用」の科目を直接使う場合もありますが、一旦「棚卸減耗損」という科目で計上し、P/L作成時に営業外費用へ分類するのが一般的です。
🚀 確認ミニクイズ
次の取引の勘定科目を答えてください。
Q1. 製品の主要な素材となる「直接材料」を消費した。借方の科目は?
Q2. 工場の機械油や軍手などの「間接材料」を消費した。借方の科目は?
Q3. 倉庫で発生した「正常な」棚卸減耗損は、最終的に製造原価に含まれる? それとも含まれない?
答えを見る(クリックして展開)
A1. 仕掛品
直接費は、特定の製品に紐づくので「仕掛品」へ直行です。
A2. 製造間接費
間接費は、一旦「製造間接費」プールに集められます。
A3. 含まれる(製造間接費になる)
正常なロスは、モノを作るためのコストの一部と考えます。
まとめ
- 購入時: 付随費用は材料代にプラスする。
- 消費時: 直接材料なら「仕掛品」、間接材料なら「製造間接費」。
- 減耗損: 正常なら原価(製造間接費)、異常なら原価外(営業外・特損)。
次回は、3要素の2つ目「労務費(人件費)」です。給料の支払額と、実際に働いた分の消費額がズレる? 「予定賃率」って何? という疑問を解決します!

