【連結会計】「アップストリーム」を完全攻略!ダウンとの違いと非支配株主持分の処理をわかりやすく解説

「ダウンストリームなら解けるのに、アップストリームになると急に計算が合わなくなる…」
「非支配株主持分を『減らす』んだっけ?『増やす』んだっけ?」
「開始仕訳になると、もう何が何だか分からない!」

日商簿記1級や公認会計士試験の連結会計において、多くの受験生を苦しめる壁。それが「アップストリーム(子会社から親会社への販売)」です。

なぜアップストリームだけ面倒なのか? その理由はたった一つ。「子会社の利益を消すときは、非支配株主も巻き添えになるから」です。
この記事では、複雑に見えるアップストリームの仕組みを、図解とシンプルなルールで整理し、迷わず仕訳を切れるように解説します。

1. そもそも「アップストリーム」とは?ダウンとの違い

まずは言葉の定義と、イメージを掴みましょう。

⬇ ダウンストリーム (Down)

親会社 ⇒ 子会社

親が子に商品を売る。
親(上流)から子(下流)へ流れるのでダウン。
【処理】簡単(追加仕訳なし)

⬆ アップストリーム (Up)

子会社 ⇒ 親会社

子が親に商品を売る。
子(下流)から親(上流)へ逆流するのでアップ。
【処理】面倒(非支配株主への按分が必要)

2. なぜアップストリームだけ「非支配株主」が出てくるの?

ここが最大のポイントです。未実現利益(グループ内部でつけた利益)を消去する際、「誰がつけた利益を消すのか?」を考えてください。

ダウンストリームの場合(親の利益を消す)

親会社の利益は、100%親会社株主(連結上の主役)のものです。
だから、親の利益を消しても、文句を言う人はいません。単純に利益を消せば終わりです。


アップストリームの場合(子の利益を消す)

子会社の利益は、誰のものですか?
「親会社(60%)」と「非支配株主(40%)」の共有財産です。

子会社の利益(未実現利益)を100消去すると、子会社の利益が100減ります。
すると、その利益の一部をもらえるはずだった「非支配株主」の取り分も減らさないと計算が合わなくなるのです。

「子の利益を減らすなら、連帯責任で非支配株主の持分も減らせ!」
これがアップストリームの本質です。

3. 【実践】商品売買の未実現利益消去(仕訳パターン)

では、具体的な仕訳を見ていきましょう。
例題:期末商品のうち、子会社から仕入れた商品に含まれる未実現利益が1,000円ある。子会社の非支配株主比率は40%である。

ステップ①:まずは「ダウン」と同じように利益を消す

まずは基本の処理です。在庫に含まれる利益を消去し、売上原価を増やします(=利益を減らす)。

(借) 売上原価 1,000  (貸) 商品 1,000

これで、連結グループ全体の利益が1,000減りました。ここまではダウンストリームと同じです。

ステップ②:【アップ特有】非支配株主に「痛み分け」させる

利益が1,000減ったので、その影響を非支配株主にも負担させます。
負担額:1,000 × 40% = 400

(借) 非支配株主持分当期変動額 400
(貸) 非支配株主に帰属する当期純利益 400

【考え方のコツ】

  • 貸方(右)の「非支配〜利益」は、P/Lの費用(利益のマイナス)のような動きをします。
    → 「子会社の利益が減ったから、非支配株主への配分も減らしますよ」という意味です。
  • 借方(左)の「非支配〜変動額」は、B/Sの純資産のマイナスです。
    → 「非支配株主の取り分(資産)も減りますよ」という意味です。

4. 翌期の「開始仕訳」はどうなる?(これが一番ややこしい)

翌期になると、前期の未実現利益を実現させます(逆仕訳)。
ここで受験生がパニックになるのが「開始仕訳」です。

P/L科目は「利益剰余金当期首残高」に変身することを思い出してください。

ステップ①の逆仕訳(開始仕訳バージョン)

「売上原価」は前年の費用なので、「利益剰余金」に変えます。

(借) 商品 1,000  (貸) 利益剰余金当期首残高 1,000

ステップ②の逆仕訳(開始仕訳バージョン)

ここが重要です。
「非支配株主に帰属する当期純利益(P/L)」は、翌期には「非支配株主持分(B/S)」に取り込まれて消えています。
つまり、開始仕訳では「利益剰余金」と「非支配株主持分」の調整になります。

(借) 非支配株主持分当期首残高 400
(貸) 利益剰余金当期首残高 400

【解説:何が起きている?】

ステップ①で貸方に「利益剰余金 1,000」が出ました。これは「前期に消した利益が復活した(実現した)」という意味です。
しかし、この復活した1,000のうち、40%(400)は非支配株主のものです。
だから、「復活した利益剰余金(貸方)を400減らして(借方)、非支配株主に返してあげる(貸方)」という調整を行っているのです。

※実務的には借方の科目は「利益剰余金」となりますが、簿記検定の開始仕訳では、前期末の仕訳の再現として借方を「非支配株主持分」と書くケースもあります(流派によりますが、要は利益の按分戻しです)。
※最も簡単な覚え方:
前期の仕訳(借:非支配持分 / 貸:非支配利益)の逆仕訳をして、P/L科目を利益剰余金に変えるだけ!

まとめ:アップストリームは「セット」で覚える

難しく考える必要はありません。アップストリームの処理は、以下の「セット仕訳」として機械的に覚えてしまいましょう。

【アップストリーム攻略の鉄則】

① 未実現利益を消去する(借:売原 / 貸:商品)

直後に必ず!

その金額 × 非支配比率 を計算する

③ 非支配株主に負担させる仕訳を切る
(借) 非支配株主持分 ×× (貸) 非支配〜利益 ××

「利益をいじったら、必ず非支配もいじる」。このリズムさえ身体に染み込ませれば、アップストリームはもう怖くありません。
連結会計を得点源にして、合格に大きく近づきましょう!

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