「法人税や所得税は必須だけど、残りの科目はどれを選ぼう?」
「これからの時代、相続税法が稼げるって本当?」
「計算ミスが命取りになるって聞いたけど、難易度はどれくらい?」
税理士試験の選択科目の中で、近年圧倒的な注目を集めているのが「相続税法」です。
超高齢社会を迎えた日本において、その市場価値は「最強」とも言われています。
しかし、その魅力の裏には、独特の「怖さ」と「難しさ」が潜んでいます。
この記事では、相続税法がなぜ実務で強いのか、その理由とリアルな難易度、そして合格を勝ち取るための具体的な学習のコツを徹底解説します。
なぜ今、「相続税法」が実務で最強と言われるのか?
多くの現役税理士が「取っておけばよかった」「取って正解だった」と口を揃える相続税法。その理由は、明確な「市場の拡大」と「収益性の高さ」にあります。
① 課税対象者の爆発的増加
2015年の税制改正で基礎控除額が引き下げられた結果、「普通の家庭」でも相続税がかかる時代になりました。さらに高齢化が進む日本において、相続税申告のニーズは今後も右肩上がりです。
② 高単価な報酬(資産税ビジネス)
法人の顧問料が価格競争にさらされる中、資産税(相続・贈与)は依然として高単価なスポット業務です。1件あたりの報酬が大きく、独立開業時の大きな収益の柱となります。
③ 専門家としてのブランディング
相続税は、不動産評価や遺産分割など高度な専門知識が必要です。そのため、法人税しかできない税理士と差別化しやすく、「資産税専門税理士」としてのブランドを築きやすい分野です。
相続税法の難易度と勉強ボリューム
「魅力的なのは分かったけど、受かるのは大変?」
結論から言うと、法人税法・所得税法に次ぐ「No.3」のボリュームと難易度を誇ります。決して楽な科目ではありません。
| 必要勉強時間 | 約 450 〜 600 時間 (消費税法や国税徴収法より多く、法人税法の6〜7割程度) |
|---|---|
| 合格率 | 約 10% 〜 13% (近年は他の科目と同様に推移) |
| 理論の特徴 | 民法(家族法)の理解が必須。 条文量はそこまで多くないが、事例形式の応用問題が出やすい。 |
| 計算の特徴 | 「連動性」が高く、ミスが許されない。 財産評価(特に土地)の正確性とスピードが勝負。 |
⚠️ 最大のリスク:計算の「ドミノ倒し」
相続税法の計算問題は、非常にリスクが高い構造になっています。
- ❌ 最初の「相続人の判定」を間違える ⇒ 基礎控除額も税率も全て狂い、0点になる可能性がある。
- ❌ 「土地の評価」を間違える ⇒ 課税価格が狂い、納付税額も全て間違える。
他の科目以上に、「ケアレスミス=不合格」に直結するシビアな試験であることを覚悟しなければなりません。
合格を勝ち取るための「学習のコツ」
この「ミスの許されない試験」を突破するには、相続税法特有の対策が必要です。
① 理論:民法(親族・相続)を好きになる
相続税法は、税法科目の中で最も「人間ドラマ」に近い科目です。
「誰が相続人になるのか(法定相続人)」「遺言がある場合はどうするのか」といった判断は、民法の知識がベースになります。
条文の丸暗記だけでなく、「家系図」を書きながら人間関係を整理し、誰に権利があるのかを瞬時に判断するトレーニングが重要です。
② 計算:土地評価(財産評価)を極める
計算問題の配点の多くを占めるのが「土地の評価」です。不整形地、広大地、路線価の見方など、パターンは多岐にわたります。
また、他の科目と違い、問題文の指示だけでなく「別紙資料(登記簿謄本や公図)」から情報を読み取る能力が求められます。実務に近い形式に慣れておく必要があります。
③ 戦略:捨てる勇気を持つ
本試験では、制限時間内(2時間)に解き終わらない分量が出題されることが多々あります。
「未上場株式の評価」などの超難解で計算工数のかかる項目に時間を使いすぎると、確実に取れる基本問題を落とします。
「みんなが解ける箇所(土地や家屋、現預金)」を完璧に合わせ、難問は部分点狙いで割り切る。この判断力が合否を分けます。
「相続税法」を選ぶべき人、避けるべき人
最後に、あなたが相続税法を選ぶべきかどうか、キャリアの観点から整理します。
選ぶべき人(おすすめ)
- 独立開業を目指している人(最強の武器になる)
- 資産税専門の事務所に就職したい人
- 「法人税法」や「所得税法」のボリュームに挫折したが、主要科目は取りたい人
- 民法や不動産に興味がある人
慎重になるべき人
- とにかく「早く」5科目を揃えたい人(ミニ税法の方が早い)
- ケアレスミスが多い自覚がある人(相性が悪い可能性大)
- 企業内税理士(一般企業の経理)を目指す人(実務で使う機会が少ない)
まとめ:高リスクだが、リターンは巨大
相続税法は、計算の連動性というリスクがあり、学習ボリュームも決して少なくありません。
しかし、合格して実務に出たとき、これほど「直接的に稼げる」「顧客から感謝される」知識はありません。
将来、独立して高収入を得たい、専門性の高い税理士になりたいと願うなら、相続税法への挑戦は、あなたのキャリアにとって最高の投資になるはずです。

