「税法科目の合格率10%の壁がどうしても越えられない…」
「大学院に行けば税理士になれるって本当?」
「逃げだと思われる? 費用はどれくらいかかるの?」
税理士試験は平均合格年数が5年〜10年とも言われる長距離マラソンです。その過酷なレースにおける「戦略的なショートカット」として存在するのが、「大学院免除(院免除)」というルートです。
かつては「試験から逃げた」と揶揄されることもありましたが、現在は合格者の半数以上がこの制度を利用しているというデータもあるほど、一般的な選択肢となっています。
この記事では、大学院免除制度の仕組み、リアルなメリット・デメリット、費用や期間を徹底検証し、あなたがこのルートを選ぶべきかどうかの判断材料を提供します。
そもそも「大学院免除」とはどんな制度?
税理士試験は全部で5科目合格する必要がありますが、大学院で修士論文を執筆し、国税審議会の認定を受けることで、一部の科目が免除されます。
現在の免除ルール(平成14年4月以降)
最も一般的なのが、最難関である「税法科目」の一部を免除してもらうパターンです。
- 税法免除(修士):
大学院で「税法」に関する修士論文を書いて修了すると、税法科目「2科目」が免除されます。
※ただし、税法3科目のうち「1科目」は自力で試験に合格する必要があります。 - 会計免除(修士):
大学院で「会計学」に関する修士論文を書いて修了すると、会計科目「1科目」が免除されます。
※簿記論・財務諸表論のどちらか1科目は自力で合格する必要があります。
【戦略の王道】
「簿記論・財務諸表論」は試験で合格し、「税法1科目(消費税法など)」も試験で合格。残りの「税法2科目(法人税・所得税などの難関)」を大学院で免除する、というパターンが最も多く選ばれています。
大学院免除の「3つのメリット」
なぜ多くの受験生が、安くない学費を払ってまで大学院を目指すのでしょうか?
① 「確実性」が手に入る(不合格のリスク回避)
税理士試験の最大の恐怖は「何年勉強しても受からないかもしれない」という不確実性です。合格率10%台の試験では、運も左右します。
一方、大学院は「入試に合格し、真面目に通って論文を完成させれば」ほぼ確実に修了(免除)できます。計算できる未来が手に入るのは最大のメリットです。
② 期間が「2年」で固定される
税法2科目を試験で合格するには、働きながらだと平均3〜5年、沼にハマればそれ以上かかります。
大学院なら「2年間」と期間が決まっています。土日や平日の夜間に開講している社会人大学院も多く、働きながらの修了も十分に可能です。
③ 「租税法」の深い理解と仲間ができる
試験勉強は「暗記」ですが、大学院は「研究」です。「なぜこの法律ができたのか(立法趣旨)」「判例はどう解釈すべきか」を深く学びます。
この深い知識は、実務で複雑な案件(税務訴訟や更正の請求など)を扱う際に強力な武器になります。また、同期の税理士仲間との人脈は一生の財産になります。
大学院免除の「デメリット」と注意点
良いことばかりではありません。コストと世間体(?)の壁があります。
① 費用が高い(学費)
後述しますが、2年間で数百万円の学費がかかります。予備校代とは桁が違います。
② 論文執筆は「楽」ではない
「お金で資格を買う」ような感覚で入学すると痛い目を見ます。数万字に及ぶ修士論文の執筆は、膨大な文献調査と論理構成力が必要で、試験勉強とは違う種類の「生みの苦しみ」があります。
③ 「試験組」からの視線(院免除差別?)
一昔前は「院免除は実力がない」という偏見がありましたが、現在はほとんど気にする必要はありません。
実務に出れば「どうやって資格を取ったか」より「仕事ができるか」が全てです。むしろ、論文を書ける論理的思考力が高く評価されるケースも増えています。
【費用と期間】どれくらいのお金と時間がかかる?
最も気になるコストパフォーマンスについて検証します。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 期間 | 2年間(修士課程) |
| 学費(私立) | 約 150万 〜 300万円 (入学金+授業料2年分) |
| 学費(国公立) | 約 130万 〜 150万円 (安価だが、社会人向け夜間コースが少ない) |
| 通学頻度 | 平日夜間(18:00以降)や土日が中心。 週2〜4回程度。 |
💰 コストを抑える裏技:「教育訓練給付制度」
厚生労働大臣指定の講座(大学院)であれば、「専門実践教育訓練給付金」の対象となる場合があります。
一定の要件を満たせば、学費の最大70%(上限112万円)がハローワークから支給されます。これを使えば、実質負担を大幅に減らすことができます。必ず入学前にチェックしましょう。
【結論】あなたは「試験」向き?「大学院」向き?
最後に、どちらのルートを選ぶべきかの判断基準をまとめます。
試験ルート(官報合格)が向いている人
- 20代前半で、時間に余裕がある人。
- 暗記が得意で、試験のプレッシャーに強い人。
- 費用を最小限(予備校代のみ)に抑えたい人。
- 「5科目官報合格」という名誉・達成感が欲しい人。
大学院免除ルートが向いている人
- あと1〜2科目が何年も受からず、足踏みしている人。
- 30代以上の社会人で、時間を「お金で買いたい」人。
- 「税理士になること」がゴールで、手段にはこだわらない人。
- 論理的に文章を書くのが苦ではない人。
まとめ
大学院免除は、決して「逃げ」や「楽な道」ではありません。
時間とお金を投資し、より確実な方法でキャリアを切り拓く「立派な戦略」の一つです。
特に、「税理士資格を取って独立したい」「早く実務で活躍したい」という目的があるなら、試験合格にこだわりすぎて何年も停滞するより、大学院で確実に資格を手にする方が、トータルの人生設計においてはプラスになることが多いでしょう。
あなたの置かれた状況(年齢、予算、残り科目数)を冷静に分析し、最適なルートを選んでください。

