簿記2級無料講座 第6回:固定資産攻略(2) 除却・廃棄・買換え・圧縮記帳の処理パターン

前回は固定資産を「使う」期間の処理(減価償却)を学びました。
今回は、使い終わった固定資産の「最期」を看取る処理です。

「ボロボロになったので捨てた」「新しいものに買い替えた」「国から補助金をもらって買った」
こうしたイレギュラーなイベントが発生したとき、経理担当者はどう処理すべきでしょうか?
一見複雑そうに見えますが、「帳簿上の価値(簿価)を消す」という基本ルールさえ守れば、パズルのように解けます!

前回の記事はこちら→第5回

今日のゴール

  • 固定資産の「除却」と「廃棄」の違いと仕訳をマスターする
  • 古い資産を下取りに出して新車を買う「買換え」を一発で処理する
  • 補助金をもらった時の特殊ルール「圧縮記帳(直接減額方式)」を理解する

1. いらなくなった資産を処分する(除却・廃棄)

固定資産を手放すとき、最も重要なのは「その瞬間の価値(帳簿価額)」を把握することです。

📝 帳簿価額(簿価)の計算式

取得原価 - 減価償却累計額 = 今の価値

① 除却

事業で使うのをやめて、倉庫などに撤去することです。「もう使わないけど、ゴミとしては捨てていない」状態です。
この場合、その資産の価値を見積もって「貯蔵品」という資産科目に振り替えます。

【設例】
備品(取得原価 1,000円、減価償却累計額 900円)を除却した。なお、この備品の処分価値(スクラップ価値)は 50円と見積もられた。

仕訳の考え方
  1. 備品(資産)を貸方で消す。 →(貸)備品 1,000
  2. セットの累計額も借方で消す。 →(借)減価償却累計額 900
  3. 今の価値(1,000-900=100円)のモノを捨てたが、50円の価値(貯蔵品)は残った。
  4. 差額の50円は損をした。 →(借)固定資産除却損 50
(借)減価償却累計額 900 / (貸)備品 1,000
(借)貯蔵品      50 /
(借)固定資産除却損  50 /

② 廃棄

物理的に捨ててしまった場合です。「貯蔵品」は発生しません。簿価がまるごと損になります。

  • 科目:固定資産廃棄損(営業外費用または特別損失)

2. 実務で頻出! 買換え(下取り)

営業車などを新しくするとき、古い車をディーラーに下取りに出し、その代金を差し引いて新車代金を支払うケースです。
これは「①古い車の売却」「②新しい車の購入」を1つの仕訳で行うと考えれば簡単です。

【設例】
営業車(取得原価 1,000円、減価償却累計額 800円)を下取りに出し、新車 2,000円を購入した。
下取り価格 150円が差し引かれ、残額は小切手を振り出して支払った。

STEP 1:古い車を消す

(借)減価償却累計額 800 / (貸)車両運搬具 1,000

STEP 2:新しい車を計上する

(借)車両運搬具  2,000 /

STEP 3:損益と支払額を埋める

  • 古い車の簿価:1,000 – 800 = 200円
  • 下取り額:150円(200円の価値のものを150円で売った=50円損!)
  • 支払い額:新車2,000 – 下取り150 = 1,850円
(借)車両運搬具  2,000 / (貸)車両運搬具 1,000
(借)減価償却累計額 800 / (貸)当座預金  1,850
(借)固定資産売却損  50 /

※注意!
期中に買い替えた場合、「期首から売却日までの減価償却費」を月割り計算して計上するのを忘れないでください。(上記設例は簡略化のため省略しています)

3. 国からお金をもらう! 圧縮記帳

ここが2級特有の論点です。
国や自治体から「補助金(国庫補助金)」をもらって固定資産を買うことがあります。
そのまま処理すると、補助金が「収益」になってしまい、多額の税金がかかってしまいます。
「せっかく設備投資のために補助金をもらったのに、税金で持っていかれるのはおかしい!」ということで、税金を先送りする特例が認められています。これが圧縮記帳です。

処理の流れ(直接減額方式)

試験では主に「直接減額方式」が出題されます。3ステップで覚えましょう。

【設例】
国から補助金 100万円を受け取り、当座預金とした。その後、その補助金を使って備品 500万円を購入し、代金は小切手を振り出した。圧縮記帳(直接減額方式)を行う。

① 補助金を受け取った時

まずは「収益」として計上します。

(借)当座預金 100 / (貸)国庫補助金受贈益 100

② 備品を買った時

普通に購入処理をします。

(借)備品 500 / (貸)当座預金 500

③ 圧縮記帳を行う時(重要!)

ここがポイントです。
①で計上した「受贈益(収益)」を消すために、借方に持ってきます。
その相手として、買ったばかりの「備品(資産)」の金額を減らします。

(借)固定資産圧縮損 100 / (貸)備品 100

※実務上は「国庫補助金受贈益」と「固定資産圧縮損」を相殺して利益ゼロにするイメージです。

この後の減価償却はどうなる?

備品は500万円で買いましたが、圧縮記帳で100万円減らしたので、帳簿上の取得原価は400万円になりました。
決算での減価償却は、この「圧縮後の金額(400万円)」をベースに計算します。


🌱 今回のPOINTまとめ

  • 除却するときは、資産価値を見積もって「貯蔵品」にする。
  • 買換えは、「売却」と「購入」の複合技。下取り額と簿価の差額が損益になる。
  • 期中取引での売却・除却は、必ず「期首からその日までの減価償却費」を計上するのを忘れずに!
  • 圧縮記帳は、補助金の分だけ資産の価格を減らす(圧縮する)処理。減価償却費が減ることで、税金の支払いが後回しになる効果がある。

✏️ ミニクイズ

理解度を確認してみましょう!

Q. 100万円の補助金を受け取り、1,000万円の機械を購入して圧縮記帳を行った。この機械の耐用年数が10年(定額法・残存価額ゼロ)の場合、1年目の減価償却費はいくらか?

  1. 100万円
  2. 90万円
  3. 110万円
答えを見る

正解:2

解説:
購入額1,000万円 - 補助金100万円 = 900万円(圧縮後の取得原価)
この900万円をベースに減価償却を行います。
900万円 ÷ 10年 = 90万円

もし圧縮記帳をしないと100万円の費用になります。費用が少なくなる=利益が増える=税金が増える、ということで、補助金をもらった時の税金を、将来の減価償却費を減らすことで調整しているのです。

次回は、固定資産の中でもちょっと特殊なカタチ。
リース契約やソフトウェア、のれんといった「第7回:リース会計とは? ファイナンス・リース取引の仕組みと仕訳」に入ります。最近のビジネスでは「買わずに借りる」が主流ですので、重要度アップ中です!

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