「ネットで『税理士試験 簡単だった』という書き込みを見た…」
「科目合格制だから、誰でも受かるって本当?」
「公認会計士よりは楽なんでしょ?」
これから税理士を目指す方、あるいは現在苦戦中の方にとって、この「簡単だった」という言葉ほど心をざわつかせるものはありません。
結論から申し上げます。
「税理士試験が簡単」というのは、大きな間違い(生存者バイアス)です。
この記事では、なぜそのような噂が流れるのかという「カラクリ」と、実際の難易度、そして「簡単だ」と油断して沼にハマらないための正しい心構えを徹底解説します。
なぜ「税理士試験 簡単だった」という噂が出るのか? 3つの理由
火のない所に煙は立ちません。この誤解が生まれる背景には、税理士試験特有の制度や、比較対象の存在があります。
理由①:「科目合格制」の罠
税理士試験は、1年に1科目ずつ合格を積み上げられる「科目合格制」です。「一度に全科目合格しなくていいなら、働きながらでも楽勝じゃん!」と錯覚しやすいのです。
しかし、実際は「1科目ごとの合格率が10%〜15%」という狭き門を、5回(5科目分)くぐり抜けなければなりません。「少しずつ進める」ことと「簡単である」ことはイコールではありません。
理由②:公認会計士試験との比較
「短答式・論文式を一発勝負で受ける公認会計士試験に比べれば、税理士試験はマシ(簡単)」という文脈で語られることがあります。
確かに「瞬発力」や「地頭の良さ」は会計士の方が求められますが、税理士試験は「忍耐力」と「正確性」を極限まで問われる試験です。「マラソン(税理士)」と「100m走(会計士)」を比べて、マラソンの方が楽だと言っているようなもので、難しさの質が全く異なります。
理由③:「簿記論」だけ受かった人の声
初学者が最初に受ける「簿記論」は、日商簿記1級と範囲が被っており、計算が得意な人は比較的短期で合格できることがあります。
その段階で「(簿記論は)意外と簡単だった」と発言したものが、試験全体の評価として独り歩きしているケースがあります。
数字で見る「絶望的」な難易度
「簡単だった」という感覚論を、客観的なデータで論破しましょう。
| 項目 | 実態 |
|---|---|
| 科目ごとの合格率 | 10% 〜 15% 前後(上位層しか受からない) |
| 5科目到達までの平均年数 | 5年 〜 10年(途中で挫折する人が大半) |
| 合格者の年齢層 | 30代・40代が中心(ベテラン受験生がライバル) |
| 1科目あたりの勉強時間 | 500 〜 1,000時間以上(特に税法科目は膨大) |
これが現実です。特に「法人税法」や「所得税法」といった重量級の税法科目は、理論の丸暗記だけでも膨大な時間を要し、「簡単」という言葉など微塵も出てこない過酷な世界です。
「簡単だった」と言えるのは、どんな人?
もし本当に「簡単だった」と感じる人がいるとすれば、以下のような特殊な背景を持つ人たちだけでしょう。
- 大学院免除を使った人:
大学院で論文を書き、税法2科目(または会計1科目)を免除された場合、試験負担が減るため「(5科目受験に比べれば)楽だった」と感じるかもしれません。 - 専念受験生(学生・無職):
仕事をせず、朝から晩まで勉強だけに没頭できる環境にあった人。社会人受験生とは条件が違いすぎます。 - 元・公認会計士受験生:
会計士試験で計算力を極限まで鍛えていた人が、税理士試験の「簿記論・財務諸表論」を受けた場合、相対的に簡単に感じることがあります。
油断禁物!「簡単だ」と思って始めると地獄を見る
最も危険なのは、「簡単らしいから、とりあえず始めてみるか」という軽い気持ちで参入することです。
税理士試験は「相対評価(競争試験)」です。合格ラインが60点とされていますが、実際は上位10〜15%に入らなければ合格できません。
ライバルは誰でしょうか?
- 何年も同じ科目を勉強し続けている「ベテラン受験生」
- 実務経験豊富な「会計事務所職員」
- 人生をかけて勉強している「専念生」
彼らを押しのけて上位に入る必要があります。「簡単」という甘い言葉を信じて、中途半端な努力で挑めば、間違いなく返り討ちに遭います。
まとめ:簡単ではない。だからこそ「価値」がある
「税理士試験 簡単だった?!」という問いに対する答えは、明確に「NO」です。
しかし、逆説的ですが、「簡単ではないからこそ、税理士資格には一生モノの価値がある」のです。
誰でも簡単に取れる資格なら、
高い年収も、社会的ステータスも得られません。
数千時間の努力と、数年にわたる忍耐。
その「壁」を乗り越えた人だけが、税理士というプロフェッショナルになれるのです。
ネットの噂に惑わされず、目の前のテキストと問題集に向き合ってください。
「簡単ではなかった。でも、挑戦してよかった」と心から言える日が、合格の先には必ず待っています。

