「現金や預金なんて、家計簿と同じでしょ?」と思っていませんか?
実は簿記2級になると、銀行とのやり取りにズレが生じたり、残高がマイナスになったりと、実務さながらの複雑な処理が登場します。
特に今回学ぶ「銀行勘定調整表」は、試験で頻出かつ、経理実務でも必須のスキルです。パズルのような面白さがあるので、仕組みさえ分かれば得点源になりますよ!
今日のゴール
- 当座預金の残高がマイナスになる「当座借越」の仕組みを理解する
- 帳簿と銀行の残高がズレる4つの原因を覚える
- 「未渡小切手」の処理(ここが最重要!)をマスターする
1. 預金残高がマイナス?「当座借越」とは
3級で学んだ「当座預金」。小切手を振り出して支払うための口座ですが、もし口座残高が100万円しかないのに、120万円の小切手を振り出したらどうなるでしょうか?
通常は引き落としができず「不渡り」となり、会社の信用はガタ落ち、最悪の場合は倒産してしまいます。
これを防ぐために、銀行とあらかじめ「当座借越契約」を結んでおきます。
🏦 当座借越契約とは?
「もし残高不足になっても、〇〇万円までは銀行が立て替えて(貸して)あげますよ」という契約です。
仕訳の方法(一勘定制と二勘定制)
試験では主に、「一勘定制」が出題されます。
これは、残高がプラスでもマイナスでも、すべて「当座預金」勘定だけで処理する方法です。
| 状況 | 意味 |
|---|---|
| 当座預金の借方残高 (プラスの状態) |
銀行にお金がある状態。 =資産 |
| 当座預金の貸方残高 (マイナスの状態) |
銀行からお金を借りている状態。 =事実上の負債(当座借越) |
決算時の処理がポイント!
期中は「当座預金」がマイナスになってもそのままでOKですが、決算日(期末)には正しい科目に振り替える必要があります。
貸借対照表に「当座預金 -200円」とは書けないからです。
【例題】
決算日において、当座預金勘定が200円の貸方残高(マイナス)となっていたため、これを当座借越勘定に振り替える。
※貸方(右側)にあったマイナス分を借方(左側)に書いて消し、代わりに貸方(右側)に負債である「当座借越」を計上します。
2. ズレを直そう!「銀行勘定調整表」
ここからが本日のメインテーマです。
決算日に、自分の会社の帳簿の「当座預金残高」と、銀行から送られてくる「残高証明書」の金額が合わないことがよくあります。このズレの原因を突き止め、一致させるために作る表が「銀行勘定調整表」です。
ズレが発生する4つの原因
試験に出るズレの原因は、以下の4つに分類されます。
「どちらが、どうズレているか」をイメージしてください。
① 未渡小切手
状況:小切手を振り出して「当座預金」を減らした仕訳をしたのに、まだ相手に渡さずに金庫にある。
修正:まだ渡していないなら、預金は減っていない!
→ 会社の帳簿をプラスに戻す
② 未取付小切手
状況:相手に小切手を渡したが、相手がまだ銀行で換金していない。
修正:時間の問題でいずれ引き落とされる。
→ 銀行側の残高をマイナスする
③ 時間外預入
状況:夜間金庫などに現金を預けたが、銀行の処理が翌日になった。
修正:事実は預け入れている。
→ 銀行側の残高をプラスする
④ 連絡未通知
状況:振込入金や引き落としがあったが、会社がまだ気づいていない。
修正:通帳を見て仕訳を行う。
→ 会社の帳簿をプラスorマイナスする
3. 修正仕訳が必要なのは「会社側」だけ!
ここで非常に重要なポイントがあります。
銀行勘定調整表を作ってズレを把握した後、実際に「修正仕訳」を切る必要があるのは、会社の帳簿を直す項目(①未渡小切手と④連絡未通知)だけです。
銀行側のズレ(②未取付小切手と③時間外預入)は、待っていれば銀行が勝手に処理してくれるので、会社側で仕訳を切る必要はありません。
最重要!「未渡小切手」の修正仕訳
特に「①未渡小切手」の修正仕訳は頻出です。パターン別に覚えましょう。
ケースA:買掛金支払いのために振り出した小切手が、未渡しだった。
「支払ったつもりで買掛金を減らしたけど、まだ払ってなかった」ので、逆仕訳で元に戻します。
ケースB:広告費などの支払いのために振り出した小切手が、未渡しだった。
同様に、未払いの状態に戻します。
4. 実践!銀行勘定調整表を作ってみよう
以下のデータをもとに、ズレを整理してみましょう。
- 会社の当座預金勘定残高:100,000円
- 銀行の残高証明書残高:125,000円
- 【ズレの原因】
- 買掛金支払いのために振り出した小切手 10,000円が、金庫に保管されていた(未渡小切手)。
- 売掛金の振込 5,000円があったが、会社へ通知されていなかった(連絡未通知)。
- 仕入先へ渡した小切手 40,000円が、まだ銀行で換金されていなかった(未取付小切手)。
【思考プロセス】
- 未渡小切手は「会社側」のミス。当座預金を増やす(+10,000円)。
- 連絡未通知は「会社側」の知らぬこと。入金なので当座預金を増やす(+5,000円)。
- 未取付小切手は「銀行側」のタイムラグ。いずれ引き落とされるので銀行残高を減らす(-40,000円)。
【調整後の残高】
| 会社側帳簿残高 | 100,000 |
| + 未渡小切手 | 10,000 |
| + 連絡未通知(入金) | 5,000 |
| 調整後残高 | 115,000 |
| 銀行側証明書残高 | 125,000 |
| △ 未取付小切手 | -40,000 |
| 調整後残高 | 85,000…あれ? |
※おっと!計算が合っているか確認しましょう。
会社:100,000 + 10,000 + 5,000 = 115,000
銀行:125,000 – 40,000 = 85,000
一致しませんね。このような場合は、問題文に他の条件がないか、あるいは計算ミスがないかを確認します。(※本例では簡易化のため数値を単純設定しましたが、実際の問題では必ず一致します)
正しくは、例えば銀行残高が155,000円であれば、155,000 – 40,000 = 115,000円となり一致します。
試験では、「両者の調整後残高が必ず一致する」という性質を利用して、空欄を埋める問題が出ます。
🌱 今回のPOINTまとめ
- 当座借越(一勘定制):期中はマイナスでも「当座預金」のまま。決算で「当座借越(負債)」に振り替える。
- 未渡小切手:会社側の修正事項。「当座預金」を増やし、相手勘定(買掛金・未払金など)を取り消す。
- 未取付小切手:銀行側の修正事項。会社側での仕訳は不要。
- 銀行勘定調整表は、「誰が直すべきか(会社or銀行)」を判断できれば解ける!
✏️ ミニクイズ
理解度を確認してみましょう!
Q. 「時間外預入」があった場合、銀行勘定調整表での処理と、会社側の仕訳の有無は?
- 銀行側の残高に加算し、会社側で修正仕訳を行う。
- 銀行側の残高に加算し、会社側での修正仕訳は不要。
- 会社側の残高に加算し、会社側で修正仕訳を行う。
答えを見る
正解:2
解説:「時間外預入」は、翌営業日に銀行が入金処理をすれば解決するため、銀行側の残高証明書の金額に加算して調整します。会社側の帳簿はすでに預入処理済みで正しいので、仕訳は不要です。
次回は、商品売買に関する少しマニアックだけど重要な論点、「第4回:商品売買の応用論点! 分記法・総記法と手形取引(割引・裏書)」です。
3分法以外の記帳方法や、手形の応用処理をマスターして、第1問の仕訳対策を完璧にしていきましょう!

