「試験に合格したら、すぐにバリバリ監査をするの?」
「『J1(ジェイワン)』ってよく聞くけど、何のこと?」
「1年目の給料はどれくらい? 研修と仕事の両立はキツイ?」
公認会計士試験に合格し、監査法人に入所したばかりのスタッフは、業界用語で「J1(スタッフ1年目)」と呼ばれます。
身分としてはまだ正式な公認会計士ではなく、「公認会計士試験合格者(いわゆる会計士補)」という立場です。
華やかなプロフェッショナルの入り口ですが、その実態は「泥臭い作業」と「過酷な勉強」の日々でもあります。
この記事では、監査法人の新人(J1)が具体的に何をしているのか、その仕事内容から懐事情まで、リアルな実態を徹底解剖します。
そもそも「J1(会計士補)」とは?
監査法人では、職階(ランク)によって呼び名が変わります。その一番下が「J1」です。
🔰 スタッフ(Junior)の階級
- J1(1年目):
右も左も分からない新人。指示された単純作業をこなすのが仕事。 - J2(2年目):
後輩(J1)ができ、少し複雑な勘定科目を任され始める。 - J3(3年目〜):
修了考査受験生。現場の主戦力としてシニアのサポートを行う。
J1の期間は、いわば「見習い期間」です。プロとしての基礎体力と、社会人としてのマナーを叩き込まれる時期と言えます。
J1のリアルな仕事内容 〜泥臭い現場の実態〜
「企業の不正を見抜く!」といったドラマのようなシーンは、1年目にはまず訪れません。J1の仕事は、地味で根気のいる作業が中心です。
① 証憑突合(しょうひょうとつごう)
通称:バウチング
会社の帳簿(仕訳データ)と、請求書や領収書などの「証拠書類(紙やPDF)」が合っているか、ひたすらチェックする作業です。
何百枚、何千枚という書類をめくり続ける、監査の基本にして最も重要な単純作業です。
② 確認状(かくにんじょう)の発送・回収
通称:確認(コンファメーション)
クライアントの取引銀行や得意先に、「残高は合っていますか?」という手紙を送り、回答を回収する業務です。
宛名印刷、封入、投函、返信の管理、差異のチェックなど、事務作業の極みですが、監査証拠としては最強の効力を持ちます。
③ 現金実査・棚卸立会
通称:実査(じっさ)・立会(たちあい)
実際にクライアントの金庫の中身(現金や手形)を数えたり、工場や倉庫に行って在庫の数を数えたりします。
J1が一人で現場に派遣されることも多く、新人にとっての「初めてのお使い」的な緊張感があります。
④ 雑用全般
チームの庶務係
会議室の予約、お弁当の手配、監査調書ファイルの整理、プリンターのトナー交換など。
チームが円滑に動くための潤滑油としての役割も求められます。
J1最大の試練:「仕事」と「補習所」の二重生活
J1が他の新入社員と決定的に違うのは、「夜は学生に戻る」という点です。
公認会計士試験合格者は、3年間「実務補習所(補習所)」に通い、単位を取り、考査(テスト)に合格しなければなりません。
「昼は監査現場でヘトヘトになるまで働き、夜や土日は補習所の講義と課題レポートに追われる」。これがJ1のリアルな日常です。
※監査法人は補習所通学を優先してくれるため、講義のある日は早めに退社できる制度が整っています。
気になる「給与」事情:1年目から高水準!
仕事は地味で勉強も大変ですが、給与水準は新卒としては破格です。
| 項目 | 金額の目安(BIG4) |
|---|---|
| 月額基本給 | 約 30万 〜 35万円 |
| 賞与(ボーナス) | 約 4ヶ月分 / 年 |
| 残業代 | 全額支給(繁忙期は多い) |
| 年収総額 | 約 550万 〜 600万円 |
一般的な大卒初任給(年収300万〜400万円)と比較すると、1年目から圧倒的な差があります。
この経済的な余裕が、激務と勉強を乗り越えるモチベーションの一つになります。
J1の一日(繁忙期 vs 閑散期)
監査法人の生活は、季節によって天国と地獄ほど違います。
🔥 繁忙期(4月〜5月)
- 9:30 クライアント先へ直行
- 10:00 ひたすら証憑突合&質問対応
- 12:00 チームでコンビニ弁当
- 13:00 確認状のチェック作業
- 18:00 先方担当者が帰宅。ここから作業本番
- 23:00 タクシーで帰宅(土日も出勤)
※J1は先輩より少し早く帰れます。
🏖️ 閑散期(8月)
- 長期休暇中(サマーバケーション)
- 2週間〜3週間の休みを取り、海外旅行へ。
- 出勤日でも17:00定時退社。
- 補習所の課題をまとめて消化する時期。
※このメリハリが監査法人の魅力です。
まとめ:J1は「プロへの助走期間」
J1の仕事は、地味な作業の連続かもしれません。しかし、バウチング(証憑突合)一つとっても、「会社の取引がどう記録され、どう決算書になるのか」を肌で理解するための、極めて重要なプロセスです。
高い給与をもらいながら、先輩会計士の背中を見て学び、補習所で理論を深める。
大変ではありますが、会計のプロフェッショナルとして、これほど贅沢で成長できる環境は他にありません。
これからJ1になる皆さんは、ぜひ泥臭い仕事を前向きに楽しんでください。その経験が、将来の監査現場での「違和感に気づく力」になります。

