「勉強範囲が広すぎて、どこから手を付ければいいか分からない…」
「得意科目で稼いでも、苦手科目で足切り(不合格)にならないか不安」
「短答式と論文式、それぞれどう頭を切り替えればいいの?」
公認会計士試験は、満点を目指す試験ではありません。「みんなが解ける問題を落とさず、守るべきラインを死守する」試験です。
特に恐ろしいのが「足切り(あしきり)」制度。1科目でも基準(満点の40%など)を下回ると、他がどれだけ優秀でも不合格となります。
この記事では、短答式・論文式のそれぞれの試験特性に合わせ、「攻める科目」と「守る科目」を明確にした、科目別の具体的攻略法を徹底解説します。
【大前提】合格のための「70:40」の黄金ルール
科目別の対策に入る前に、全受験生が刻み込むべきルールがあります。
勝負は「Cランク問題」を捨てる勇気で決まる
試験問題は難易度別にAランク(基本)、Bランク(応用)、Cランク(難問・奇問)に分かれます。
- 合格者:A・Bランクを完璧に正解し、Cランクは即座に捨てる。
- 不合格者:Cランクに時間を使いすぎ、A・Bランクでケアレスミスをする。
「足切り(40%)」を回避し、「合格ライン(短答70%・論文52偏差値)」を超えるためには、難問を解く力ではなく、基本問題を落とさない「精度」が命です。
【短答式試験】科目別攻略法(マークシート戦)
短答式は「スピード」と「正確性」の勝負です。4科目の特徴と戦略を見ていきましょう。
| 科目 | 役割 | 目標点数 |
|---|---|---|
| 財務会計論 | 絶対的エース | 160点 / 200点 |
| 管理会計論 | 最大の地雷(守り) | 60点 / 100点 |
| 監査論 | 安定の守り | 75点 / 100点 |
| 企業法 | 最強の得点源 | 85点 / 100点 |
① 財務会計論(計算・理論)
配点が200点(他は100点)あるため、ここで失敗すると即終了です。
- 計算:「総合問題」を毎日解き、計算スピードを維持する。仕訳の精度を極限まで高める。
- 理論:計算とリンクさせて理解する。「なぜその処理になるか」の理由を押さえれば、暗記量は減ります。
② 管理会計論(計算・理論)
短答式における「魔物」です。計算問題の分量が異常に多く、まともに解くと時間が足りません。
- 戦略:「計算は半分捨て、理論で稼ぐ」。
- 理論問題(原価計算基準など)は満点を狙い、計算は簡単な問題だけ拾って、残りは鉛筆を転がすくらいの割り切りが、足切り回避の秘訣です。
③ 監査論
実務イメージが湧きにくく、点数が伸び悩みやすい科目です。
- 戦略:細かい規定の暗記よりも「言い回し(日本語の違和感)」に気づく読解力が重要。
- 過去問を繰り返し解き、出題者が「どこをひっかけてくるか」のパターン(主語の入れ替え、義務と任意の入れ替えなど)を体得します。
④ 企業法
完全な暗記科目であり、努力が点数に直結する「裏切らない科目」です。
- 戦略:条文の読み込みと、肢別問題集(一問一答)の反復。
- ここで85点以上稼げると、管理会計のミスをカバーでき、合格がグッと近づきます。スキマ時間は全て企業法に捧げましょう。
【論文式試験】科目別攻略法(論述戦)
論文式は「相対評価(偏差値)」の試験です。
「誰も知らないことを書く」と落ち、「みんなが書けることを書き漏らす」と落ちます。
会計学(財務・管理)
「計算結果」が合うかどうかが最大の加点ポイントです。記述(理論)部分は、キーワードさえ入っていれば部分点がもらえます。
構造的な論点(連結会計、組織再編、事業部制など)の計算プロセスを、下書き用紙にきれいに書けるように訓練しましょう。
監査論
暗記した「監査基準」のフレーズを、問題文の状況に合わせて貼り付けるパズルです。
「規範(ルール)→あてはめ(状況)→結論」という文章構成を崩さないことが合格答案の条件です。
企業法
条文検索(法規集貸与)が可能です。よって、暗記ではなく「論理展開」が問われます。
「問題提起 → 規範定立(条文の趣旨) → あてはめ → 結論」という法的三段論法を徹底的にマスターしてください。
租税法(法人・所得・消費)
学習ボリュームが膨大で、多くの受験生が後回しにしがちです。
しかし、「計算問題」の配点が高いため、実は得点源になりやすい科目です。細かい理論暗記よりも、法人税の計算パターンを徹底反復した人が勝ちます。
選択科目(経営学など)
多くの人が選ぶ「経営学」は、試験範囲が狭く、対策が立てやすいです。
直前期(試験3ヶ月前)からの詰め込みでも間に合うケースが多いので、それまでは主要科目に時間を使いましょう。
まとめ:合格する受験生の「マインドセット」
公認会計士試験の攻略法を一言で言えば、「完璧主義を捨てること」です。
苦手科目は「足切り回避(40点)」を目指して守り、
得意科目は「貯金(80点)」を目指して攻める。
このトータルバランスの戦略を持てるかどうかが、数千時間の努力を合格という結果に変える鍵となります。
目の前の難問に一喜一憂せず、「合格点」というゴールを見据えて、冷静に学習を進めてください。

