「貸倒引当金の決算整理仕訳が、いまいちピンとこない…」
「期首の残高や、期中の貸倒れが絡むと、計算がごちゃごちゃになる!」
「差額補充法って、結局いくら繰り入れればいいの?」
簿記3級・2級の学習で、多くの受験生が「壁」として意識するのが「貸倒引当金」の決算整理です。
頭の中だけで計算しようとすると、期首の残高、当期に貸倒れた額、期末に必要な額…と情報が錯綜し、パニックになりがちです。
この記事では、そんな貸倒引当金の問題を「絶対にミスなく、かつ機械的に」解くための最強の武器、「T勘定(Tフォーム)」(箱図とも呼ばれます)を使った解法テクニックを、図解で徹底的に解説します!
T勘定(Tフォーム)を使う3つのメリット
なぜT勘定を使うべきなのでしょうか? それは、以下の絶大なメリットがあるからです。
- メリット①:情報が「視覚化」される
「期首」「期中」「期末」という時系列のお金の動きが、一つの図で一目瞭然になります。 - メリット②:計算ミス(ケアレスミス)が激減する
「足すべき」か「引くべき」か悩む必要がなくなります。T勘定のルールに従って数字を埋めるだけで、答えが自動的に導き出されます。 - メリット③:応用問題に強くなる
簿記2級などで、より複雑な問題(貸倒れの処理が複数回あるなど)になっても、同じ解法で対応できます。
貸倒引当金の「T勘定」基本形を覚えよう
まず、貸倒引att金が「どっちの仲間」か覚えていますか?
貸倒引当金は、売掛金などの「資産」からマイナスする(控除する)勘定です。これを「評価勘定」と呼びます。ルール上、「負債」の仲間(ホームポジション=貸方)として扱います。
ホームポジションが「貸方(右側)」ということは、増えたら「貸方」、減ったら「借方」に書きます。
これを踏まえて、貸倒引当金のT勘定の基本形(=設計図)を見てみましょう。
・当期の貸倒れ(取崩)・期末残高(翌期繰越)
(借方合計と貸方合計を
一致させるための数字)
・期首残高(前期繰越)
・当期繰入(決算整理)
(差額補充法で計算)
【図解】T勘定を使った4ステップ解法
では、このT勘定(設計図)を使って、実際の問題を解いてみましょう。
- 期首の貸倒引当金残高(前期繰越):1,000円
- 当期中に、得意先が倒産し売掛金 300円 が貸倒れた。(引当金で充当)
- 決算日を迎え、売掛金の期末残高は 50,000円 だった。
- 貸倒実績率(設定率)は 2% とする。
(問)決算整理仕訳を行いなさい。
この問題を、T勘定の4ステップで解いていきます。
Step 1:T勘定の「箱」を描き、①期首残高 を記入する
まず、下書き用紙にT勘定を描き、分かっている数字を入れます。最初は「期首残高(前期繰越)」です。ホームポジション(貸方)に入れます。
Step 2:②当期中の取引(貸倒)を記入する
次に、当期中に貸倒れた額 300円 を記入します。貸倒引当金が「減少」するので「借方」に入れます。
(この時点で、引当金残高は 1,000 – 300 = 700円 になっていることが分かります)
Step 3:③期末の「あるべき残高(ゴール)」を計算し、記入する
決算のゴール(期末にあるべき残高)を計算します。これはT勘定の外で計算します。
売掛金 50,000円 × 設定率 2% = 1,000円
これが「期末残高(翌期繰越)」です。T勘定を締め切るため、借方に記入します。
③ 期末残高 1,000
Step 4:貸借の差額で「④当期繰入額」を計算する
いよいよクライマックスです。T勘定は左右の合計(貸借)が必ず一致します。借方と貸方の合計を比べて、足りない側(貸方)に差額を入れます。この差額こそが、あなたが求める「当期繰入額」です。
借方合計: ② 300円 + ③ 1,000円 = 1,300円
貸方合計: ① 1,000円
差額: 1,300円 − 1,000円 = 300円
この 300円 が決算整理仕訳で繰り入れるべき金額です!
③ 期末残高 1,000
④ 当期繰入 300
T勘定の「貸方」に「当期繰入 300」と入ったのですから、仕訳は自動的に決まります。
(借) 貸倒引当金繰入 300 / (貸) 貸倒引当金 300
応用:期首残高より貸倒額が多かったら?
例えば、上の例題で「当期中の貸倒れが 1,500円」だったらどうでしょう?
期首残高は 1,000円 しかありません。この場合、T勘定(引当金)から取り崩せるのは 1,000円 までです。残りの 500円 は「貸倒損失」として費用処理します。
この場合、Step 2 でT勘定の借方(減少)に書くのは、取り崩した「1,000」です。
<T勘定の計算>
借方:② 当期貸倒 1,000 + ③ 期末残高 1,000 = 2,000
貸方:① 期首残高 1,000
差額(当期繰入):2,000 − 1,000 = 1,000円
決算整理仕訳は「(借) 貸倒引当金繰入 1,000 / (貸) 貸倒引当金 1,000」となります。
このように、T勘定を使えば「期中の貸倒損失」と「期末の繰入」の処理がごちゃ混ぜにならず、冷静に解き進められます。
まとめ
貸倒引当金の問題が出たら、迷わず下書き用紙に「T勘定」の箱を描いてください。
そして、「①期首残高」「②当期貸倒(取崩額)」「③期末残高(あるべき額)」の3つの数字をT勘定の所定の位置に埋めるだけ。
あとは、貸借の差額(電卓で叩くだけ)で「④当期繰入額」が自動的に算出されます。
この「機械的」な解法をマスターすれば、貸倒引当金はもう「壁」ではありません。あなたの「得点源」に変わります。ぜひ、練習問題で試してみてください!

