「税理士試験って、どの科目を選べばいいの?」
「早く合格できる組み合わせが知りたい!」
「合格後のキャリアに有利な科目はどれ?」
税理士試験は、全11科目から5科目を選択するという特殊な試験制度です。この「科目選択」は、あなたの学習期間だけでなく、合格後のキャリア(就職、転職、独立)にも直結する、受験戦略上「最も重要な決断」と言っても過言ではありません。
「とにかく合格しやすい科目を…」と安易に選んでしまうと、合格後に実務で苦労する可能性もあります。
この記事では、会計のプロの視点から、合格後のキャリアまで見据えた「科目選択の最適解」と、合格までの最短ルート戦略を徹底的に解説します。
まずは「税理士試験のルール」をおさらい
戦略を立てる前に、まずはルールを確認しましょう。税理士試験は、以下の3つのグループから合計5科目に合格する必要があります。
税理士試験 5科目の構成
- 必須科目(2科目)
①簿記論、②財務諸表論
(全員が合格必須。通常「簿財(ぼざい)」と呼ばれ、会計の土台となる科目です) - 選択必須科目(1科目)
③法人税法 または 所得税法
(どちらか1科目を必ず選択して合格する必要があります) - 選択科目(2科目)
④・⑤相続税法、消費税法、国税徴収法、住民税、事業税など
(残りの税法8科目から、自由に2科目を選択します)
最大の特徴は「科目合格制」。一度合格した科目は生涯有効なため、社会人でも働きながら1科目ずつ着実に合格を積み上げていけるのが魅力です。
結論:迷ったらこの「王道5科目」を選べ!
先に結論から述べます。将来、税理士として会計事務所で働く、あるいは独立開業を目指すのであれば、「実務での重要度」を最優先に選ぶべきです。
その最適解(王道の組み合わせ)は、以下の5科目です。
👑 最強の王道5科目 👑
「簿記論」+「財務諸表論」(必須)
+
「法人税法」(選択必須)
+
「消費税法」+「相続税法」(選択)
この5科目は、税理士実務の根幹をなす「会計」「法人税務」「個人(資産)税務」をすべて網羅しています。学習ボリュームは非常に大きいですが、合格後に「あの時、この科目を選んでおいてよかった」と心から思える、最も市場価値の高い組み合わせです。
最短ルート戦略①:「簿財」から始める理由
最初のステップは全員共通です。それは「簿記論」と「財務諸表論」の2科目を(できれば同時に)学習することです。
なぜなら、法人税も所得税も消費税も、すべての税金計算は、簿財(会計)で作成された「決算書(利益)」をスタート地点として行われるからです。
会計という「土台」がなければ、税法という「家」は建てられません。
- 学習範囲が重複しており、同時に学習する方が効率が良い。
- 「簿財」2科目合格は、会計事務所への転職市場で最強のカードになる。
まずはこの2科目を制覇することが、税理士への第一歩です。
最短ルート戦略②:最大の分岐点「法人税法」 vs 「所得税法」
次にぶつかる壁が「法人税法」と「所得税法」の選択です。どちらも学習ボリュームが非常に多く、「税法のラスボス」と呼ばれます。
| 法人税法 (おすすめ!) |
特徴:企業の税金計算のルール。 メリット:税理士の顧問先の9割以上は「法人」のため、実務で圧倒的に多用する。独立・転職に必須の知識。 デメリット:全科目中、学習ボリュームが最大。 |
|---|---|
| 所得税法 | 特徴:個人の税金計算のルール。 メリット:個人事業主や不動産オーナー、副業者の顧問で役立つ。法人税法よりはボリュームが少ない(とされるが、それでも膨大)。 デメリット:顧問業務のメインは法人であるため、これだけだと実務対応力が弱いと見なされがち。 |
結論:将来、会計事務所で働く、または独立を目指すのであれば、迷わず「法人税法」を選択してください。ボリュームに圧倒されますが、ここから逃げてはいけません。
最短ルート戦略③:「残り2科目」の選び方
最後の2科目は、あなたのキャリアプランと「学習ボリューム」のバランスで選びます。
実務重視(市場価値)で選ぶなら
1. 消費税法(超おすすめ)
「法人税法」と「消費税法」は、実務で必ずセットで使います。ほぼすべての事業者が関係する非常に重要な税金です。理論と計算のバランスも良く、学習しやすい科目とされています。
2. 相続税法(おすすめ)
高齢化社会で「資産税」のニーズは爆発的に増加しています。相続・事業承継は税理士の腕の見せ所であり、専門家として独立も可能です。ただし、学習ボリュームは法人税法に次いで多いため、相応の覚悟が必要です。
合格スピード重視(学習ボリューム)で選ぶなら
「実務での重要度は下がるが、とにかく早く5科目を揃えたい」という戦略もあります。これらは「ミニ税法」と呼ばれます。
1. 国税徴収法
計算問題がほぼなく、「理論暗記」が中心の科目。暗記が得意な人、計算が苦手な人に選ばれます。実務で直接使う機会は少ないですが、税金滞納時の対応などで役立ちます。
2. 住民税 / 事業税
「法人税法」や「所得税法」の知識があると学習しやすい(派生的な内容が多いため)のが特徴。学習ボリュームが比較的少ないため、税法の最後の1科目として選ばれやすいです。
⚠️ 注意:学習ボリューム最小化ルートのリスク
例えば「簿財」+「所得税法」+「住民税」+「事業税」という組み合わせは、学習負担が最も少ないと言われます。しかし、実務で必須の「法人税法」と「消費税法」がないため、「資格は持っているが実務ができない」という状況に陥りやすく、転職や独立で不利になる可能性があります。
おすすめの「受験スケジュール」戦略
科目選択と同時に「どの順番で受験するか」も重要です。学習ボリュームを分散させるのがポイントです。
【王道・堅実ルート】(例:1年1科目合格)
- 1年目:簿記論(合格)
- 2年目:財務諸表論(合格)
- 3年目:法人税法(最難関に集中)(合格)
- 4年目:消費税法(合格)
- 5年目:相続税法(合格)
ポイント:
学習ボリュームが非常に大きい「法人税法」と「相続税法」を同時に(同じ年に)受験するのは絶対に避けてください。
また、「簿記論」と「財務諸表論」は、可能であれば1年で同時合格を目指すのが最も効率的です。
まとめ
税理士試験の科目選択は、あなたの「税理士としての未来」を設計する最初のステップです。
学習ボリュームが少なく楽な道(ミニ税法)を選ぶこともできますが、その資格で何をしたいのかを明確にすることが重要です。
もしあなたが、経営者の良きパートナーとして活躍し、転職や独立で困らない「市場価値の高い税理士」を目指すのであれば、選択すべき道は決まっています。
まずは会計の土台である「簿記論」「財務諸表論」から。
そして、実務の核となる「法人税法」「消費税法」へ。
最後に、専門性を高める「相続税法」へ。
遠回りに見えるこの「王道ルート」こそが、合格後にあなたが輝くための「最短ルート」です。
自信を持って、最初の一歩を踏み出してください。

