「税理士試験の勉強中だけど、転職は5科目合格しないと無理?」
「今、2科目(簿財)持っている。この状態で転職できる?」
「科目合格って、実際のところ市場価値はどれくらいあるの?」
税理士試験は、5科目すべてに合格して初めて「税理士」となれる、非常に過酷な長期戦です。
そのため、多くの受験生が「5科目を揃えるまで、今の職場で我慢しよう…」と考えがちです。しかし、それは大きな間違いです。
結論から言えば、税理士試験の「科目合格」は、転職市場、特に会計事務所への転職において非常に強力な武器となります。
この記事では、会計業界のプロの視点から、「科目合格」が持つ本当の市場価値について、科目数別に徹底解説します。
結論:科目合格は「超」有利。特に会計事務所が最重要視する
税理士試験は5科目合格(官報合格)しなければ意味がない、というのは受験生だけの思い込みです。採用する側(特に会計事務所や税理士法人)から見れば、「科目合格者」は非常に魅力的な人材です。
採用側が「科目合格」を評価する3つの理由
- 1. 高い学習意欲と基礎知識の証明:
税理士試験の科目に1つでも合格していることは、日商簿記2級などとは比較にならないほどの専門知識と努力の証です。 - 2. 即戦力としての期待(特に「簿財」):
後述しますが、特に会計の基礎である「簿記論」「財務諸表論」の合格者は、実務の理解が早く、即戦力として期待できます。 - 3. 将来の税理士候補としての「投資価値」:
事務所としては、将来的に税理士となり、クライアントを持って活躍してくれる人材(=幹部候補)を常に探しています。科目合格者はその最有力候補です。
未経験者であっても、「日商簿記2級」しか持っていない人より、「税理士試験1科目合格」の人の方が、採用される可能性が格段に高くなります。
【科目数別】転職市場におけるリアルな市場価値
では、具体的に「何科目」持っていれば、どれくらいの価値があるのでしょうか。未経験から会計事務所への転職を想定して解説します。
1科目合格(簿記論 or 財務諸表論)
市場価値:★☆☆☆☆(未経験者枠の「スタートライン」)
1科目(特に簿記論)の合格は、「未経験から会計業界に本気で入りたい」という熱意の最強の証明書となります。
日商簿記1級の壁に阻まれた人や、2級からステップアップしたい人にとって、まず1科目合格して転職活動をするのは非常に有効な戦略です。ただし、この段階ではまだ「ポテンシャル採用」の枠を出ません。
2科目合格(簿記論+財務諸表論)=「簿財」
市場価値:★★★★☆(最強のカード。「簿財」は水戸黄門の印籠)
もしあなたが「簿財(ぼざい)」の2科目に合格しているなら、転職市場で困ることはほぼありません。
会計事務所の仕事の根幹は「会計(記帳・決算)」と「税務」です。「簿財」は、その「会計」部分のプロフェッショナルであることを証明します。多くの会計事務所の求人票には、応募資格として「日商簿記2級以上」と並んで、「税理士試験 簿財合格者 歓迎」と明記されています。
- 日商簿記1級よりも「会計実務の専門家」として高く評価されることも多い。
- 「簿財」さえあれば、未経験でも30代から十分にキャリアチェンジが可能です。
- 給与面でも、無資格者や簿記2級保持者よりも優遇されます。
3科目合格(簿財+税法1科目)
市場価値:★★★★★(即戦力の「優良人材」。事務所が欲しがる)
「簿財」に加えて、税法(法人税法、所得税法、消費税法のいずれか)を1科目でも持っていると、市場価値はさらに跳ね上がります。
これは「会計」だけでなく「税務」の基礎も理解していることの証明です。税務申告書の作成補助など、より専門的な業務を任せられるため、事務所側も「即戦力」として採用します。
このレベルになると、複数の事務所から内定をもらえる可能性が高く、待遇交渉も有利に進められます。
4科目合格(官報リーチ)
市場価値:殿堂入り(ほぼ税理士扱い)
いわゆる「官報リーチ」の状態。ここまで来ると、転職市場での扱いは「科目合格者」ではなく、ほぼ「有資格者」と同等です。「来年確実に合格してくれる」という期待値から、非常に高い待遇で迎えられます。もはや「有利」かどうかを議論するレベルではありません。
「実務経験」と「年齢」も重要なファクター
もちろん、科目数だけで全てが決まるわけではありません。「実務経験」と「年齢」が掛け合わされます。
ケース1:20代・実務未経験
戦略:1科目(簿記論)または2科目(簿財)で即転職すべき
20代は「ポテンシャル」が最大の武器です。「簿財」を持っていれば理想的ですが、1科目でも合格していれば、熱意をアピールして優良な会計事務所に滑り込めます。実務を学びながら残りの科目を勉強するのが最強のルートです。
ケース2:30代・実務未経験
戦略:最低でも「簿財」の2科目合格を目指す
30代の未経験転職は、20代に比べてポテンシャル採用が難しくなります。しかし、「簿財」の2科目があれば、そのハンデを覆すことが可能です。会計への本気度と基礎能力が示せるため、採用のハードルは大きく下がります。
ケース3:経理・会計の実務経験あり
戦略:科目合格で「専門性」をアピール
一般企業での経理経験者が「簿財」や「税法科目」を持っていると、会計事務所と一般企業の経理(税務)部門、両方への道が開けます。
「実務経験」×「税理士科目の専門知識」は、非常に市場価値の高い組み合わせです。
一般企業(事業会社)への転職は?
これまで主に会計事務所への転職について話してきましたが、一般企業の経理部門への転職ではどうでしょうか?
正直なところ、一般企業(特にメーカーなど)では、税理士の「税法科目」よりも、日商簿記1級(原価計算を含むため)や「簿財」の会計知識の方が、直接的に評価されやすい傾向があります。
しかし、連結決算や税務申告を内製化している大手企業や、専門の「税務部門」がある企業では、税理士の科目合格(特に法人税法や消費税法)は、会計事務所への転職と同様、あるいはそれ以上に高く評価されます。
まとめ
税理士試験の「科目合格」は、決して「中途半端」ではありません。それは、あなたの市場価値を劇的に高める「資産」です。
- 1科目は、「本気度」の証明書。
- 2科目(簿財)は、未経験でも転職可能な「最強の切符」。
- 3科目は、事務所が欲しがる「即戦力」の証。
5科目合格を目指す道のりは長く、不安になることも多いでしょう。しかし、あなたが積み上げた「1科目」の価値は、あなたが思っている以上に大きいものです。
今のあなたの「科目合格」という資産を活かして、実務経験と学習環境を同時に手に入れる「戦略的な転職」を検討してみてはいかがでしょうか。

