簿記3級無料講座 第31回:会社のお金②「株式の発行(増資)」と「配当」の仕訳

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第30回では、貸借対照表(B/S)の「純資産の部」を構成する3つの主要メンバー、「資本金」「資本準備金」「繰越利益剰余金」の「意味」について学びました。
「純資産」が、①株主からの出資(元手)と、②会社が稼いだ利益の蓄積(儲け)の2つから成ることが分かりましたね。

では、これらの純資産は、実際の取引でどのように動くのでしょうか?
今回は、会社がさらに出資を集める「増資」と、儲け(利益)を株主に還元する「配当」という、純資産の部が動く最重要の仕訳をマスターしましょう!

今日のゴール

  • 会社が新しく株式を発行(増資)したときの仕訳ができる
  • 「資本金」と「資本準備金」への振り分けルールを理解する
  • 利益を株主に「配当」するときの2段階の仕訳(決議時・支払時)ができる
  • 配当時に必要な「利益準備金」の積立計算と仕訳がわかる
  • 「未払配当金」(負債)の役割がわかる

株式の発行(増資)の仕訳

会社は、設立後も事業を拡大するためなどに、新しく「株式」を発行して、株主から追加でお金を出資してもらうことがあります。これを「増資」といいます。

これは、株主からの「元手」が増える取引(資本取引)です。
受け取ったお金(払込金)は、第30回で学んだ「資本金」または「資本準備金」(どちらも純資産)として処理します。

【ルール】
株主から払い込まれた金額のうち、少なくとも半分(1/2)は「資本金」にしなければなりません。残りの半分までを「資本準備金」にすることができます。

設例①:全額を「資本金」とする場合

【設例1】増資のため、新しく株式を100株(1株あたり1,000円)発行し、合計100,000円が当座預金に振り込まれた。なお、払込額は全額を資本金とした。

【考え方】

  • 「当座預金」(資産)が100,000円増えた → 借方(左)に「当座預金 100,000」
  • 「資本金」(純資産)が100,000円増えた → 貸方(右)に「資本金 100,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
当座預金 100,000 資本金 100,000

設例②:「資本準備金」にも振り分ける場合

【設例2】増資のため、新しく株式を100株(1株あたり1,000円)発行し、合計100,000円が当座預金に振り込まれた。なお、払込額のうち資本金に組み入れない最低限度額(=半分の50,000円)を「資本準備金」とした。

【考え方】

  • 「当座預金」(資産)が100,000円増えた → 借方(左)に「当座預金 100,000」
  • 「資本金」(純資産)が50,000円増えた → 貸方(右)に「資本金 50,000」
  • 「資本準備金」(純資産)が50,000円増えた → 貸方(右)に「資本準備金 50,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
当座預金 100,000 資本金 50,000
資本準備金 50,000

利益の配当の仕訳

会社が稼いだ利益は「繰越利益剰余金」(純資産)という貯金箱に貯まっていきます。
会社はこの貯金箱から、株主へのお礼として、儲けの一部を還元(分配)することができます。これを「配当」といいます。

配当を行うと、会社の「利益の貯金(繰越利益剰余金)」が減る(=純資産の減少)ことになります。

配当の仕訳は、「①決めた日(決議時)」「②支払った日」の2段階で処理するのが特徴です。

【重要】配当と「利益準備金」

配当(利益)が社外に出ていくと、会社の財産が減ってしまいます。会社の財産を守るため、会社法では「配当をする場合、その配当額の一部を会社内に留保(キープ)しなさい」というルールがあります。

このキープしておくお金のことを「利益準備金」といいます。
これも「純資産」のグループです(利益剰余金の一種)。

【簿記3級の計算ルール】
配当として支払う金額(繰越利益剰余金から出す額)の 10%(1/10)を、「利益準備金」として積み立てなければなりません。

ステップ1:配当を決めた日(株主総会 決議時)

「配当を〇〇円払います」と株主総会で決めた日。この時点ではまだ支払っていません。
代わりに「後で株主に配当を支払う義務」が発生します。
この義務を「未払配当金」という「負債」の勘定科目で処理します。

【設例3】株主総会にて、繰越利益剰余金を財源として、株主に50,000円の配当を行うことが承認された。あわせて、会社法に基づき利益準備金を積み立てる。

【考え方】

  • ①株主へ支払う分(未払配当金・負債): 50,000円
  • ②会社にキープする分(利益準備金・純資産): 50,000円 × 10% = 5,000円
  • ③減る「利益の貯金」(繰越利益剰余金・純資産): 50,000円 + 5,000円 = 55,000円

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
繰越利益剰余金 55,000 未払配当金 50,000
利益準備金 5,000

※「繰越利益剰余金」という貯金箱から55,000円を取り出し、50,000円は「支払待ち(負債)」に、5,000円は「社内キープ(純資産)」に振り分けたイメージです。

ステップ2:配当を支払った日

後日、決議した配当金を株主に支払います。
これで「支払う義務(未払配当金)」が消滅します。

【設例4】上記設例3の配当金50,000円を、普通預金から株主に支払った。

【考え方】

  • 「未払配当金」(負債)が50,000円減った → 借方(左)に「未払配当金 50,000」
  • 「普通預金」(資産)が50,000円減った → 貸方(右)に「普通預金 50,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
未払配当金 50,000 普通預金 50,000

※「利益準備金」は、ステップ1で計上したら、支払時には動きません。

POINTまとめ

  • 増資(株式発行):株主からの出資金。「資本金」と「資本準備金」(ともに純資産)が貸方(右)に増える。
  • 配当(利益の分配):「繰越利益剰余金」(純資産)が借方(左)で減る。
  • 配当の仕訳は「決議時」と「支払時」の2回行う。
  • 決議時:「後で支払う義務」として「未払配当金」(負債)を計上する。
  • 決議時:配当額の10%「利益準備金」(純資産)として積み立てる必要がある。
  • 決議時の仕訳:
    (借)繰越利益剰余金 / (貸)未払配当金 , (貸)利益準備金
  • 支払時の仕訳:
    (借)未払配当金 / (貸)現金預金など

ミニクイズ

お疲れ様でした!「純資産の部」の動きは、試験でも頻出の論点です。特に配当の仕訳は複雑なので、しっかり復習しましょう。

【Q1】株主総会で、繰越利益剰余金を財源に100,000円の配当を決議し、所定の利益準備金を積み立てた。このときの仕訳として正しいものはどれ?

  1. (借) 繰越利益剰余金 100,000 / (貸) 現金 100,000
  2. (借) 繰越利益剰余金 110,000 / (貸) 未払配当金 100,000 / (貸) 利益準備金 10,000
  3. (借) 繰越利益剰余金 100,000 / (貸) 未払配当金 90,000 / (貸) 利益準備金 10,000
答えを見る

【A1】2. (借) 繰越利益剰余金 110,000 / (貸) 未払配当金 100,000 / (貸) 利益準備金 10,000

解説:配当額 100,000円(→未払配当金[負債])と、その10%の 10,000円(→利益準備金[純資産])の、合計 110,000円 が「繰越利益剰余金」[純資産の減少]から出ていきます。

【Q2】上記Q1で決議した配当金100,000円を、現金で支払った。このときの仕訳は?

  1. (借) 未払配当金 100,000 / (貸) 現金 100,000
  2. (借) 繰越利益剰余金 100,000 / (貸) 現金 100,000
  3. (借) 利益準備金 10,000 / (借) 未払配当金 90,000 / (貸) 現金 100,000
答えを見る

【A2】1. (借) 未払配当金 100,000 / (貸) 現金 100,000

解説:支払時には、決議時に計上した「未払配当金」(負債)を取り崩します。

これで「純資産の部」の主な動きはマスターしました。
さて、会社を運営していると、必ず払わなければならないものがあります。それは「税金」です。

次回は、簿記3級で特に重要な2つの税金、商品売買に関わる「消費税」と、会社の利益にかかる「法人税等」の処理について学びます!お楽しみに!

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