こんにちは!「簿記3級合格へ導く!無料Web講座」へようこそ。第28回では、決算作業の「下書き用紙」である「精算表」の作り方を学びました。精算表をマスターすれば、決算の流れ全体を効率よく把握できることが分かりましたね。
さて、これまで私たちは「取引が発生したら『仕訳帳』に記入する」という前提で学んできました。しかし、実際の会社では、取引が発生するたびに経理担当者が1冊の仕訳帳に書き込むのは非効率です。
そこで今回は、仕訳帳の「代わり」に使われる、もう一つの記録方法「伝票」について学びます。これは試験でも問われることがある、簿記3級の試験特有の論点の一つです。
今日のゴール
- 「伝票」が何のために使われるのか、その役割を理解する
- 「3伝票制」(入金・出金・振替)の3種類の伝票の使い分けがわかる
- それぞれの伝票の書き方(起票)ができる
- 【重要】「一部現金取引」(現金と掛けが混ざった取引)の伝票の起票ができる
伝票とは?
伝票とは、取引が発生したときに、その内容を記録するための「小さな紙片」のことです。イメージとしては、「1回の取引専用の、小さな仕訳カード」のようなものです。
仕訳帳が「全取引を日付順に書くノート」だとしたら、伝票は「取引1件ごとに作るメモ」です。
<伝票を使うメリット>
- 分業ができる: 営業担当が「売上」の伝票を、購買担当が「仕入」の伝票を…というように、複数の人が同時に取引を記録できます。
- 証拠になる: 取引の証拠として、上司の承認印をもらったり、保管したりするのに便利です。
簿記3級で学ぶのは、最も一般的な「3伝票制」です。これは、取引を以下の3種類の伝票だけで記録する方法です。
3伝票制の種類と書き方(起票)
3伝票制は、取引を「現金が入ってきたか」「現金が出ていったか」「それ以外か」の3パターンで分類します。
① 入金伝票
使う場面: 現金が「入ってきた」取引(入金)のときだけ使います。
「入金伝票」を使う時点で、仕訳の借方(左側)は必ず「現金」になることが確定しています。
したがって、伝票には「なぜ現金が入ってきたのか」という貸方(右側)の勘定科目と金額だけを書きます。
【設例1】商品を10,000円で売り上げ、代金は現金で受け取った。
【仕訳】 (借) 現金 10,000 / (貸) 売上 10,000
【起票】 → これは「現金が入ってきた」取引なので、入金伝票を使います。
入金伝票
科目: 売上
金額: 10,000 円
摘要: 商品売上
※この伝票1枚で「(借) 現金 10,000 / (貸) 売上 10,000」の仕訳を表します。
② 出金伝票
使う場面: 現金が「出ていった」取引(出金)のときだけ使います。
「出金伝票」を使う時点で、仕訳の貸方(右側)は必ず「現金」になることが確定しています。
したがって、伝票には「なぜ現金が出ていったのか」という借方(左側)の勘定科目と金額だけを書きます。
【設例2】消耗品(文房具)5,000円を購入し、代金は現金で支払った。
【仕訳】 (借) 消耗品費 5,000 / (貸) 現金 5,000
【起票】 → これは「現金が出ていった」取引なので、出金伝票を使います。
出金伝票
科目: 消耗品費
金額: 5,000 円
摘要: 文房具代
※この伝票1枚で「(借) 消耗品費 5,000 / (貸) 現金 5,000」の仕訳を表します。
③ 振替伝票
使う場面: 「現金が動かない」すべての取引で使います。
例:掛け売上、掛け仕入、預金への預け入れ、預金からの引き落とし、手形の取引など。
これは「現金」という前提がないため、仕訳そのものを借方・貸方の両方とも記入します。見た目はほぼ仕訳帳と同じです。
【設例3】商品20,000円を売り上げ、代金は掛けとした。
【仕訳】 (借) 売掛金 20,000 / (貸) 売上 20,000
【起票】 → これは「現金が動かない」取引なので、振替伝票を使います。
振替伝票
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 20,000 | 売上 | 20,000 |
【最重要】「一部現金取引」の処理
では、「商品30,000円を売り上げ、10,000円は現金で、残りは掛け」のような、現金とそれ以外が混ざった取引はどうするのでしょうか?
この場合、取引を「現金の動き」と「それ以外」の2つに分解します。
設例④:一部現金売上(入金+振替)
【設例4】商品30,000円を売り上げ、代金のうち10,000円は現金で受け取り、残額20,000円は掛けとした。
【仕訳】 (借) 現金 10,000, (借) 売掛金 20,000 / (貸) 売上 30,000
【起票】 → この取引を2つに分解します。
- 「現金 10,000円が入金された」部分 → 入金伝票
- 「掛け 20,000円で売り上げた」部分 → 振替伝票
入金伝票
科目: 売上
金額: 10,000 円
振替伝票
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 20,000 | 売上 | 20,000 |
※この2枚の伝票で、1つの仕訳を表現しています。貸方の「売上」が2つに分かれていますが、後で合計すれば30,000円になるので問題ありません。
設例⑤:一部現金仕入(出金+振替)
【設例5】商品50,000円を仕入れ、代金のうち20,000円は現金で支払い、残額30,000円は掛けとした。
【仕訳】 (借) 仕入 50,000 / (貸) 現金 20,000, (貸) 買掛金 30,000
【起票】 → この取引も2つに分解します。
- 「現金 20,000円が出金された」部分 → 出金伝票
- 「掛け 30,000円で仕入れた」部分 → 振替伝票
出金伝票
科目: 仕入
金額: 20,000 円
振替伝票
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 30,000 | 買掛金 | 30,000 |
※この2枚で、借方の「仕入」が合計50,000円になります。
POINTまとめ
- 「伝票」は、仕訳帳の代わりとなる、取引1件ごとの記録用紙。
- 入金伝票:現金が「入った」ときだけ。貸方(相手科目)を記入。
- 出金伝票:現金が「出た」ときだけ。借方(相手科目)を記入。
- 振替伝票:現金が「動かない」すべての取引。借方・貸方の両方を記入。
- 一部現金取引は、「現金が動いた部分(入金or出金伝票)」と「それ以外の部分(振替伝票)」の2枚に分解する。
ミニクイズ
お疲れ様でした!「伝票」は、取引を「現金」で切るか、「それ以外」で切るかの仕分け作業です。クイズで確認しましょう。
【Q1】「普通預金口座から50,000円を引き出し、現金にした」という取引で使う伝票はどれ?
- 入金伝票のみ
- 出金伝票のみ
- 振替伝票のみ
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【A1】1. 入金伝票のみ
解説:仕訳は (借) 現金 50,000 / (貸) 普通預金 50,000 です。
この取引は「現金が入ってきた」取引なので、「入金伝票」1枚で処理します。(科目:普通預金、金額:50,000)
※(注)考え方によっては「振替伝票」でも処理できますが、3伝票制の原則では「現金の動き」を最優先します。
【Q2】「買掛金80,000円を支払うため、小切手を振り出した」という取引で使う伝票はどれ?
- 入金伝票のみ
- 出金伝票のみ
- 振替伝票のみ
答えを見る
【A2】3. 振替伝票のみ
解説:仕訳は (借) 買掛金 80,000 / (貸) 当座預金 80,000 です。
この取引では「現金」は一切動いていません。したがって「振替伝票」を使います。
【Q3】商品10万円を売り渡し、3万円は現金で受け取り、残りは掛けとした。この処理に必要な伝票の組み合わせは?
- 入金伝票(10万円)のみ
- 入金伝票(3万円)と振替伝票(7万円)
- 振替伝票(10万円)のみ
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【A3】2. 入金伝票(3万円)と振替伝票(7万円)
解説:一部現金取引です。「現金が入った」部分 3万円を「入金伝票」で、「掛け(現金以外)」の部分 7万円を「振替伝票」で、2枚に分けて起票します。
「伝票」は、簿記の基本である「仕訳」の別パターンとして押さえておきましょう。
さて、次回からは簿記3級の「純資産の部」を深く掘り下げていきます。
「資本金」とは? 会社が儲けた「利益」の行き先は? そして「増資」や「配当」とは?
会社のお金の「核」となる部分、「資本金」「資本準備金」「繰越利益剰余金」について学びます!お楽しみに!

