こんにちは!「簿記3級合格へ導く!無料Web講座」へようこそ。
第5部(第24回〜第27回)では、「決算整理後残高試算表」を作り、そこから「P/L(損益計算書)」と「B/S(貸借対照表)」を作成し、最後に帳簿を締め切るという、決算の一連の「正式な」流れを学びました。
しかし、実際の試験では「決算整理後残高試算表をイチから作りなさい」という問題は少なく、代わりに「精算表」という、決算作業全体を見渡せる「一覧表(ワークシート)」の作成が頻繁に出題されます。
今回から始まる第6部「合格を掴む!試験特有の論点と対策」では、こうした試験でよく問われる実践的なテーマを扱います。
その第一弾として、簿記3級の試験(特に第3問)で合否を分けると言っても過言ではない、「精算表」の作り方を徹底的にマスターしましょう!
今日のゴール
- 「精算表」が何のためのツール(決算の下書き)なのか、その役割を理解する
- 精算表の基本的な8桁(8列)の構造がわかる
- 「決算整理前残高試算表」と「決算整理仕訳」から「精算表」を完成させる手順がわかる
- 精算表上で「当期純利益」を計算する方法がわかる
- 精算表を見ればP/LとB/Sが簡単に作れることを理解する
「精算表」とは? – 決算作業の羅針盤
精算表(Settlement Sheet / Work Sheet)とは、決算の一連の流れ(①整理前残高 → ②決算整理 → ③整理後残高 → ④P/L・B/S作成)を、1枚のシートにまとめて行うための「下書き用紙」です。
これを使えば、T勘定(総勘定元帳)に転記しなくても、決算整理仕訳が正しく反映されているかを確認でき、そのままP/LとB/Sの数字を導き出すことができます。
簿記3級の試験では、一般的に以下の「8桁精算表」が使われます。
精算表の基本構造(8桁精算表)
精算表は、左から4つのブロック(各ブロックが借方・貸方の2列)で構成されています。
精算表のフォーマット
| 勘定科目 | ① 残高試算表 | ② 修正記入 | ③ 損益計算書 | ④ 貸借対照表 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | |
| 現金 | (A) | (E) | ||||||
| 仕入 | (B) | (C) | (D) | (F) | ||||
| … | ||||||||
① 残高試算表:スタート地点。「決算整理前残高試算表」の数字がそのまま入る。
② 修正記入:第4部で学んだ「決算整理仕訳」を、この欄に記入する。
③ 損益計算書:「収益」と「費用」の最終残高がここに入る。
④ 貸借対照表:「資産」「負債」「純資産」の最終残高がここに入る。
※試験によっては、①と②の間に「決算整理後残高試算表」の欄がある「10桁精算表」も出ますが、基本的な考え方は同じです。
精算表の作成手順(4ステップ)
精算表は、左の列から右の列へ、計算結果をリレーしていくイメージで作ります。
ステップ1:「残高試算表」欄を埋める
これは問題用紙に最初から書かれています。ここの借方合計と貸方合計が一致していることを確認します。
ステップ2:「修正記入」欄に「決算整理仕訳」を転記する
第4部で学んだ決算整理仕訳(しーくり,くりしー、減価償却など)を、この「修正記入」欄に書き込みます。
このとき、決算整理仕訳で新しく出てきた勘定科目(例:減価償却費、未払費用など)は、一番下の空欄に追加して記入します。
【例】(借) 減価償却費 20,000 / (貸) 減価償却累計額 20,000 の場合
→「減価償却費」の行の「修正記入」欄の借方に 20,000 と記入。
→「減価償却累計額」の行の「修正記入」欄の貸方に 20,000 と記入。
すべての決算整理仕訳を転記したら、「修正記入」欄の借方合計と貸方合計が一致することを必ず確認します!
ステップ3:「P/L」欄と「B/S」欄に、最終残高を振り分ける
ここが精算表の最大のポイントです。
各勘定科目ごとに、左から右へ「横の計算」を行い、最終残高を「P/L」か「B/S」のどちらか(必ず片方)に記入します。
【計算ルール】
- ルールA(資産・費用):
(①借方)+(②借方)-(②貸方) = 最終残高を「③借方(費用)」or「④借方(資産)」へ - ルールB(負債・純資産・収益):
(①貸方)-(②借方)+(②貸方) = 最終残高を「③貸方(収益)」or「④貸方(負債・純資産)」へ
【振り分けルール】(第25・26回の復習)
- 「収益・費用」グループ → ③損益計算書(P/L)の欄へ
- 「資産・負債・純資産」グループ → ④貸借対照表(B/S)の欄へ
ステップ4:「当期純利益(損失)」を計算し、合計を一致させる
ステップ3が終わると、③P/L欄と④B/S欄は、それぞれ借方合計と貸方合計がズレているはずです。
(※もしP/L欄の合計が合っていたら、それは「利益ゼロ」ということです)
1. P/L欄の差額(=利益)を計算する
(例)P/L貸方(収益)合計 510,000 - P/L借方(費用)合計 425,000 = 利益 85,000
2. 当期純利益を記入する
この差額85,000円を「当期純利益」として、P/L欄の金額が少ない方(借方)に記入します。
これで、P/L欄の左右の合計が 510,000円 で一致します。
3. B/S欄に利益を転記し、一致を確認する
この「当期純利益 85,000円」は、純資産の増加を意味します(第26回)。
したがって、この85,000円を、今度はB/S欄の金額が少ない方(貸方・純資産側)に、P/Lの差額と「クロス」させる形で転記します。
正しく計算できていれば、これでB/S欄の借方合計と貸方合計も、ピッタリ一致します!
(一致しなければ、どこかで計算ミスをしています)
【精算表(下部)の動き】
| 勘定科目 | ① 残高試算表 | ② 修正記入 | ③ 損益計算書 | ④ 貸借対照表 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| (合計) | … | … | (A) | (A) | 425,000 | 510,000 | (B) | (C) |
| 当期純利益 | 85,000 | 85,000 | ||||||
| 合計 | 510,000 | 510,000 | (D) | (D) | ||||
POINTまとめ
- 精算表は、決算手続きを1枚にまとめた「下書き用紙(ワークシート)」。
- 試験では8桁精算表(①残高試算表、②修正記入、③損益計算書、④貸借対照表)が主流。
- ステップ①:「残高試算表」欄は問題文から転記(または印刷済み)。
- ステップ②:「修正記入」欄に「決算整理仕訳」を転記。この時点で借方合計=貸方合計を確認!
- ステップ③:各勘定科目の最終残高を計算し、「P/L欄」か「B/S欄」のどちらかに振り分ける。
- ステップ④:「P/L」欄の差額で「当期純利益」を計算し、少ない側(借方)に記入して合計を一致させる。
- ステップ⑤:P/Lの当期純利益を、B/Sの少ない側(貸方)に「クロス」させて転記し、B/Sの左右の合計も一致することを確認する。
ミニクイズ
お疲れ様でした!精算表は「パズル」のようなものです。何度も練習して、計算の手順(特にステップ③と④)を指に覚え込ませることが合格の鍵です!
【Q1】精算表の「修正記入」欄(②)に記入するものは何?
- 日々のすべての仕訳
- 決算整理仕訳
- 損益計算書の内容
答えを見る
【A1】2. 決算整理仕訳
解説:「修正記入」欄は、決算整理仕訳を転記するための欄です。ここの借方合計と貸方合計は必ず一致します。
【Q2】精算表の「損益計算書」欄(③)で、貸方合計(収益)が80万、借方合計(費用)が60万だった。当期純利益20万は、精算表のどこに記入する?
- P/L欄の「貸方」と、B/S欄の「借方」
- P/L欄の「借方」と、B/S欄の「貸方」
- P/L欄の「貸方」と、B/S欄の「貸方」
答えを見る
【A2】2. P/L欄の「借方」と、B/S欄の「貸方」
解説:P/L欄は、少ない側(借方・費用側)に20万を記入して合計を80万に揃えます。B/S欄は、利益は純資産(貸方)を増やすので、少ない側(貸方)に20万を「クロス」させて転記します。
精算表は、まさに決算作業の集大成です。この表が作れれば、P/LもB/Sも自動的に完成します。
さて、これまでは「仕訳帳」と「総勘定元帳」という2つの主要簿を中心に見てきましたが、実務ではもっと細かいメモ帳(補助簿)を使います。
次回は、試験でも時々問われる「特殊な帳簿」、「伝票」について学びます!お楽しみに!

