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第21回では、「費用の見越し」として、まだ支払っていなくても当期の費用として計上する「未払費用」(負債)の処理を学びました。これは「後払い」のパターンでしたね。
今回は、第20回で学んだ「費用の繰延べ」(前払い)の、ちょうど「収益」バージョンです。
もし、お客様から「来年1年分の家賃」を、当期(今年)にまとめて受け取ったらどうでしょう?
お金は当期にもらいましたが、サービス(場所を貸すこと)の提供は「来年」です。
簿記の「発生主義」では、まだサービスを提供していない分は、当期の収益(儲け)にしてはいけません。
今回は、この「当期に受け取った、来年分の収益」を当期の収益から取り除く作業、「収益の繰延べ(くりのべ)」の仕訳をマスターしましょう!
今日のゴール
- 「収益の繰延べ」がなぜ必要なのか(発生主義)を理解する
- 新しい勘定科目「前受収益」(負債)の役割がわかる
- 当期分と翌期分を正しく「月割計算」できる
- 決算整理仕訳と、翌期首の「再振替仕訳」という一連の流れをマスターする
「収益の繰延べ」とは?
「収益の繰延べ」とは、当期中に受け取った収益のうち、まだサービスを提供していない「翌期以降の分」が含まれている場合に、その翌期分を当期の収益から取り消し、翌期に繰り越すための決算整理手続きです。
目的は「費用の繰延べ」と同じで、「当期の収益は、当期の分だけ!」を徹底することです。
代表的な例は、「受取家賃」や「受取利息」を1年分まとめて「前受け」した場合です。
当期の収益(P/L)から除外した「翌期分の収益」は、「前受収益」という勘定科目を使って、負債(B/S)として翌期に繰り越します。
なぜ「前受収益」は「負債」なの?
「前受収益」は、「来年、家賃分のサービスを提供する義務」や「サービスを提供する義務」を表しています。
「義務」は、第12回で学んだ「前受金」や「預り金」などと同じく、「負債」のグループになります。
「前受金」との違いは?
どちらも「前受け」で「負債」ですが、以下のように使い分けます。
- 前受金(まえうけきん):本業の「商品」を引き渡す前に、手付金などを受け取ったときの負債。
- 前受収益(まえうけしゅうえき):家賃や利息など、「継続的なサービス」の対価を、期間が到来する前に受け取ったときの負債。(決算整理で使います)
イラスト解説:収益の期間を分ける
決算日が3月31日の会社が、当期の10月1日に1年分(12ヶ月分)の家賃 12,000円を受け取ったケースで考えてみましょう。
収益の期間(10/1〜翌9/30)
↑ 10/1に1年分(12,000円)を受け取った
【決算整理の作業】
受け取った12,000円のうち、「当期分」の6ヶ月(10, 11, 12, 1, 2, 3月)は、当期の収益(受取家賃)のままです。
しかし、「翌期分」の6ヶ月(4, 5, 6, 7, 8, 9月)は、当期の収益から取り消し、「前受収益」(負債)として翌期に繰り越します。
「収益の繰延べ」の仕訳(3ステップ)
この流れも、「①受取時」「②決算整理時」「③翌期首」の3ステップで見ていきましょう。
【設例】
決算日は3月31日。当期の10月1日に、向こう1年分(12ヶ月分)の受取家賃 12,000円を現金で受け取った。
① 期中(10/1):受取時の仕訳
受け取った時点では、ひとまず全額を収益として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 12,000 | 受取家賃 | 12,000 |
② 期末(3/31):決算整理仕訳(★これが繰延べ★)
【計算】
・1ヶ月あたり: 12,000円 ÷ 12ヶ月 = 1,000円/月
・当期分(10月~3月): 1,000円 × 6ヶ月 = 6,000円
・翌期分(4月~9月): 1,000円 × 6ヶ月 = 6,000円 ← この金額を繰り延べる
【仕訳】
翌期分の収益(受取家賃)を「取り消し」(借方)、その分を「前受収益」(負債)に振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 受取家賃 | 6,000 | 前受収益 | 6,000 |
→ この結果、「受取家賃」勘定の残高は 12,000 – 6,000 = 6,000円(当期分)となり、P/Lに計上されます。
「前受収益」勘定の残高は 6,000円 となり、B/Sに負債として計上されます。
③ 翌期首(4/1):再振替仕訳
「費用の繰延べ」の時と全く同じです。
翌期(4月1日)になったら、決算整理仕訳の「真逆の仕訳」(再振替仕訳)を行います。
【仕訳】
「前受収益」(負債)を取り崩し、「受取家賃」(翌期の収益)に戻してあげます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前受収益 | 6,000 | 受取家賃 | 6,000 |
→ これで、翌期の「受取家賃」として正しく6,000円が計上され、翌期がスタートします。
POINTまとめ
- 収益の繰延べとは、当期に受け取った収益のうち、「翌期分」を当期の収益から取り消すこと。
- 翌期に繰り越すための勘定科目は「前受収益」で、「負債」のグループ。
- 計算は「月割計算」で、翌期分(まだサービスを提供していない期間)の金額を計算する。
- 決算整理仕訳(期末):
(借)受取家賃など / (貸)前受収益 [←翌期分の金額] - 再振替仕訳(翌期首):
(借)前受収益 / (貸)受取家賃など [←決算整理仕訳と逆]
ミニクイズ
お疲れ様でした!「繰延べ」は「費用」も「収益」も、考え方は同じです。「来年分」を動かす、と覚えてください。
【Q1】収益の繰延べで使う「前受収益」は、どのグループの勘定科目?
- 資産
- 負債
- 収益
答えを見る
【A1】2. 負債
解説:「翌期にサービスを提供する義務」を表すため、「負債」となります。
【Q2】決算日(3月31日)になった。当期の12月1日に、向こう半年分(6ヶ月分)の受取手数料 30,000円を受け取っていた(期中に(貸)受取手数料 30,000 と処理済み)。決算整理仕訳として正しいものはどれ?
- (借) 受取手数料 10,000 / (貸) 前受収益 10,000
- (借) 受取手数料 20,000 / (貸) 前受収益 20,000
- (借) 前受収益 10,000 / (貸) 受取手数料 10,000
答えを見る
【A1】1. (借) 受取手数料 10,000 / (貸) 前受収益 10,000
解説:
①1ヶ月あたり: 30,000円 ÷ 6ヶ月 = 5,000円/月
②当期分(12月1日~3月31日): 4ヶ月(12, 1, 2, 3月)→ 20,000円
③翌期分(4月1日~5月31日): 2ヶ月 → 10,000円
決算整理では「翌期分」の10,000円を繰り延べる(収益から取り消す)仕訳を行います。
これで「繰延べ」(前払い・前受け)が完了しました。
残すはあと一つ!
「当期中にサービスは提供した(儲かった)けど、お金を受け取るのは来年だ…」という、「収益の見越し」について学んでいきます!
これが経過勘定のラストです。頑張りましょう!

