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第20回では、「費用の繰延べ」として、支払ったお金(費用)のうち「来年分」を取り除く(前払費用)処理を学びました。これは「前払い」のパターンでしたね。
今回は、その真逆のパターンです。
「サービスは当期(今年)に受けた。でも、支払日は翌期(来年)だ」…というケースです。
例えば、決算日が3月31日の会社で、3月分の給料の支払日が4月10日だった場合。
従業員は3月中に働いていますが、会社はまだお金を払っていません。
簿記の超重要ルール「発生主義」では、お金を払っていなくても、3月中に働いてもらった分の給料は「3月の費用」として計上しなければなりません。
今回は、このように「当期の費用」として計上すべき未払い分を認識する、「費用の見越し」の仕訳をマスターしましょう!
今日のゴール
- 「費用の見越し」がなぜ必要なのか(発生主義)を理解する
- 新しい勘定科目「未払費用」(負債)の役割がわかる
- 当期に発生した未払い分の費用を「月割計算」できる
- 決算整理仕訳と、翌期首の「再振替仕訳」という一連の流れをマスターする
「費用の見越し」とは?
「費用の見越し」とは、当期にすでにサービスは受けている(=費用は発生している)にもかかわらず、支払日がまだ到来していないため、当期の費用として計上されていないものを、決算で正しく計上する手続きです。
当期のP/L(損益計算書)に、「当期に発生した費用」を正しく載せるために行います。
代表的な例は以下の通りです。
- 未払給料:3月分の給料を4月に支払う(当月締め・翌月払い)
- 未払利息:借金(借入金)の利息を、返済時にまとめて後払いする
- 未払家賃:当月分の家賃を、翌月に後払いする契約
「未払費用」は「負債」
この決算整理仕訳で使う勘定科目が「未払費用」です。
「当期分のサービスを受けたのに、まだ払っていない」ということは、会社にとって「後で支払わなければならない義務」があることを意味します。
したがって、「未払費用」は「負債」のグループになります。
「未払金」との違いは?
第9回で、費用(広告費など)や固定資産の後払いに「未払金」を使うと学びました。
「未払費用」と「未払金」は、どちらも「負債」ですが、簿記では以下のように使い分けるのが一般的です。
- 未払金:商品の仕入「以外」で、すでに請求書が届くなど、支払うべき金額が「確定」している後払い。(例:備品を掛けで買った)
- 未払費用:家賃や利息のように「継続的なサービス」で、決算日時点ではまだ支払期日が来ていない(金額が確定していない)ものを、決算整理で「見越して」計上するもの。
決算整理で「時間の経過」に伴う未払い分を計上する時は「未払費用」を使う、と覚えておきましょう。
イラスト解説:費用を当期に「見越す」
決算日が3月31日の会社が、当期の3月分の給料20万円を、翌期の4月10日に支払うケースで見てみましょう。
費用の期間(3月分給料)
4/10 支払い
【決算整理の作業】
3月中は、給料の支払いがないため、仕訳は何も起こりません。
しかし、3月31日の決算では、「3月分の労働」というサービスは受けています。
そこで、支払いがまだでも、3月分の給料20万円を「当期の費用」として計上(見越し計上)します。
「費用の見越し」の仕訳(3ステップ)
この一連の流れも、「①期中」「②決算整理時」「③翌期首」の3ステップで見ていきましょう。
【設例】
決算日は3月31日。当期の10月1日に銀行から1,000,000円を借り入れた(期間1年)。利息(年率3%)は、1年後の翌期9月30日に元本とともに一括で支払う契約である。
① 期中(10/1~3/30)
利息の支払いはまだ発生しないため、利息に関する仕訳は「なし」。
② 期末(3/31):決算整理仕訳(★これが見越し★)
【計算】
・1年分の利息: 1,000,000円 × 3% = 30,000円/年
・当期に発生した利息(10月1日~3月31日):
使用した月は「10, 11, 12, 1, 2, 3」の6ヶ月間。
・当期分の費用: 30,000円 ×(6ヶ月 ÷ 12ヶ月) = 15,000円 ← この金額を見越す
【仕訳】
当期分の費用(支払利息)を「発生」させ(借方)、その分を「未払費用」(負債)として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 15,000 | 未払費用 | 15,000 |
→ この結果、「支払利息」15,000円が当期のP/Lに計上されます。
「未払費用」15,000円がB/Sに負債として計上されます。
③ 翌期首(4/1):再振替仕訳
「繰延べ」の時と同じく、翌期の初日(4月1日)になったら、決算整理仕訳の「真逆の仕訳」(再振替仕訳)を行います。
【仕訳】
決算で行った「見越し」を、いったんリセット(振り戻し)します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払費用 | 15,000 | 支払利息 | 15,000 |
【なぜこれが必要?】
翌期の9月30日に、利息30,000円(1年分)を全額支払います。
その時の仕訳は(借)支払利息 30,000 / (貸)現金 30,000 です。
もし再振替仕訳をしないと、翌期の費用が30,000円になってしまいます(多すぎる)。
再振替仕訳(貸方15,000)をしておくことで、支払時の仕訳(借方30,000)と相殺され、翌期の支払利息は 30,000 – 15,000 = 15,000円(翌期分)となり、正しく計算されます。
POINTまとめ
- 費用の見越しとは、当期にサービスを受けたが、「未払い」の費用を当期の費用として計上すること。
- 使う勘定科目は「未払費用」で、「負債」のグループ。
- 計算は「月割計算」で、当期分のサービス(まだ支払っていない期間)の金額を計算する。
- 決算整理仕訳(期末):
(借)支払家賃など / (貸)未払費用 [←当期分の未払額] - 再振替仕訳(翌期首):
(借)未払費用 / (貸)支払家賃など [←決算整理仕訳と逆]
ミニクイズ
お疲れ様でした!「繰延べ」(前払い)と「見越し」(後払い)、セットで覚えると効果的です。クイズで確認しましょう。
【Q1】費用の見越しで使う「未払費用」は、どのグループの勘定科目?
- 資産
- 負債
- 費用
答えを見る
【A1】2. 負債
解説:「後で支払わなければならない義務」を表すため、「負債」となります。
【Q2】決算日(3月31日)になった。当月分の給料300,000円は、翌月10日に支払うことになっている。決算整理仕訳として正しいものはどれ?
- (借) 給料 300,000 / (貸) 未払費用 300,000
- (借) 給料 300,000 / (貸) 未払金 300,000
- (借) 前払費用 300,000 / (貸) 給料 300,000
答えを見る
【A2】1. (借) 給料 300,000 / (貸) 未払費用 300,000
解説:3月分の労働サービス(費用)は当期に発生しています。これを「見越し」て計上します。費用(給料)を借方に計上し、相手科目は「未払費用」(負債)を使います。
これで「費用」の期間のズレ(繰延べ・見越し)を調整する方法をマスターしました。
次回からは、これと全く同じことを「収益」サイドで行います!
「お金は貰ったけど、来年の売上だよね?」「サービスは提供したけど、お金は来年貰うんだよね?」
まずは、「収益の繰延べ」(前受け)について学んでいきます!お楽しみに!

