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第19回では、固定資産の価値の減少を記録する「減価償却」の決算整理仕訳、特に「月割計算」を学びました。これで決算整理のビッグ3(売上原価、貸倒引当金、減価償却)が完了です!
さて、ここからが決算整理のもう一つの大きな山場です。
簿記の超重要ルール「発生主義」(お金の動きに関係なく、事実が発生した時点で収益・費用を認識する)を覚えていますか?
日々の取引では、お金が動いた時点で「(借)支払家賃 / (貸)現金」のように仕訳していますが、決算の時点で見ると、その中には「来年の分」が混ざっていることがあります。
例えば、1年分の家賃をまとめて前払いした場合です。
今回は、この「来年(翌期)の費用」を、今年(当期)の費用から取り除く作業、「費用の繰延べ」について徹底的にマスターしましょう!
今日のゴール
- 「費用の繰延べ」がなぜ必要なのか(発生主義)を理解する
- 新しい勘定科目「前払費用」(資産)の役割がわかる
- 当期分と翌期分を正しく「月割計算」できる
- 決算整理仕訳と、翌期首の「再振替仕訳」という一連の流れをマスターする
「費用の繰延べ」とは?
「費用の繰延べ」とは、当期中に支払った費用のうち、まだサービスを受けていない「翌期以降の分」が含まれている場合に、その翌期分を当期の費用から取り消し、翌期に繰り越す(持ち越す)ための決算整理手続きです。
代表的な例は、「支払家賃」や「支払保険料」を1年分まとめて前払い(前払い)した場合です。
決算整理の目的は、「当期の費用は、当期の分だけ!」を徹底することです。
したがって、支払った金額に含まれる「翌期の分」は、当期の費用(P/L)から除外し、「前払費用」という勘定科目を使って資産(B/S)として翌期に繰り越します。
なぜ「前払費用」は「資産」なの?
「前払費用」は、「来年、家賃分のサービスを受ける権利」や「保険のサービスを受ける権利」を表しています。
「権利」は、第11回で学んだ「前払金」などと同じく、「資産」のグループになります。
イラスト解説:費用の期間を分ける
例えば、決算日が3月31日の会社が、当期の10月1日に1年分(12ヶ月分)の保険料 12,000円を支払ったケースを考えてみましょう。
費用の期間(10/1〜翌9/30)
↑ 10/1に1年分(12,000円)を支払った
【決算整理の作業】
支払った12,000円のうち、「当期分」の6ヶ月(10, 11, 12, 1, 2, 3月)は、当期の費用(支払保険料)のままです。
しかし、「翌期分」の6ヶ月(4, 5, 6, 7, 8, 9月)は、当期の費用から取り消し、「前払費用」(資産)として翌期に繰り越します。
「費用の繰延べ」の仕訳(3ステップ)
この一連の流れは、「①支払時」「②決算整理時」「③翌期首」の3ステップで考えると完璧に理解できます。
【設例】
決算日は3月31日。当期の10月1日に、向こう1年分(12ヶ月分)の支払保険料 12,000円を現金で支払った。
① 期中(10/1):支払時の仕訳
支払った時点では、ひとまず全額を費用として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払保険料 | 12,000 | 現金 | 12,000 |
② 期末(3/31):決算整理仕訳(★これが繰延べ★)
【計算】
・1ヶ月あたり: 12,000円 ÷ 12ヶ月 = 1,000円/月
・当期分(10月~3月): 1,000円 × 6ヶ月 = 6,000円
・翌期分(4月~9月): 1,000円 × 6ヶ月 = 6,000円 ← この金額を繰り延べる
【仕訳】
翌期分の費用(支払保険料)を「取り消し」(貸方)、その分を「前払費用」(資産)に振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払費用 | 6,000 | 支払保険料 | 6,000 |
→ この結果、「支払保険料」勘定の残高は 12,000 – 6,000 = 6,000円(当期分)となり、P/Lに計上されます。
「前払費用」勘定の残高は 6,000円 となり、B/Sに資産として計上されます。
③ 翌期首(4/1):再振替仕訳
決算整理仕訳は、あくまで「当期末」の帳簿を正しく締めるための「一時的」な仕訳です。
翌期(4月1日)になったら、決算整理仕訳の「真逆の仕訳」(これを再振替仕訳といいます)を行います。
【仕訳】
「前払費用」(資産)を取り崩し、「支払保険料」(翌期の費用)に戻してあげます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払保険料 | 6,000 | 前払費用 | 6,000 |
→ これで、翌期の「支払保険料」として正しく6,000円が計上され、翌期がスタートします。
POINTまとめ
- 費用の繰延べとは、当期に支払った費用のうち、「翌期分」を当期の費用から取り消すこと。
- 翌期に繰り越すための勘定科目は「前払費用」で、「資産」のグループ。
- 計算は「月割計算」で、翌期分(まだサービスを受けていない期間)の金額を正確に計算する。
- 決算整理仕訳(期末):
(借)前払費用 / (貸)支払家賃など [←翌期分の金額] - 再振替仕訳(翌期首):
(借)支払家賃など / (貸)前払費用 [←決算整理仕訳と逆]
ミニクイズ
お疲れ様でした!「繰延べ」は「翌期に繰り越して延ばす」とイメージしてください。経過勘定の第一弾、クイズで復習です!
【Q1】費用の繰延べで使う「前払費用」は、どのグループの勘定科目?
- 資産
- 負債
- 費用
答えを見る
【A1】1. 資産
解説:「翌期にサービスを受ける権利」を表すため、「資産」となります。
【Q2】決算日(3月31日)になった。当期の2月1日に、向こう1年分の支払家賃 60,000円を支払っていた(期中に(借)支払家賃 60,000 と処理済み)。決算整理仕訳として正しいものはどれ?
- (借) 前払費用 10,000 / (貸) 支払家賃 10,000
- (借) 前払費用 50,000 / (貸) 支払家賃 50,000
- (借) 支払家賃 50,000 / (貸) 前払費用 50,000
答えを見る
【A2】2. (借) 前払費用 50,000 / (貸) 支払家賃 50,000
解説:
①1ヶ月あたり: 60,000円 ÷ 12ヶ月 = 5,000円/月
②当期分(2月1日~3月31日): 2ヶ月(2月、3月)→ 10,000円
③翌期分(4月1日~翌1月31日): 10ヶ月 → 50,000円
決算整理では「翌期分」の50,000円を繰り延べる(費用から取り消す)仕訳を行います。
今回は「費用の繰延べ」(前払い)を学びました。
次回は、この「繰延べ」の反対バージョンです。
「当期中にサービスは受けた(働いてもらった)けど、支払いは来年だ…」という、「費用の見越し」について学んでいきます!お楽しみに!

