簿記3級講座 第15回:3種類の試算表をマスターしよう!合計・残高・合計残高試算表

こんにちは!「簿記3級合格へ導く!無料Web講座」へようこそ。

第14回では、転記ミスを発見するための魔法のツール「試算表」について学びました。T勘定に集計した数字を使って、「合計試算表」「残高試算表」の2種類を作成しましたね。

どちらの試算表も、借方の総合計と貸方の総合計が必ず一致する(貸借平均の原理)というのが最大のポイントでした。

今回は第3部の締めくくりとして、これら2つの試算表の「いいとこ取り」をした、最も情報量が多い3種類目の試算表、「合計残高試算表」をマスターします!

今日のゴール

  • 「合計試算表」と「残高試算表」の役割をもう一度おさらいする
  • 「合計残高試算表」の構造とメリットを理解する
  • T勘定から「合計残高試算表」を作成できる
  • 3種類の試算表の違いを説明できる

試算表のおさらい:合計試算表と残高試算表

新しい試算表を学ぶ前に、前回のおさらいです。なぜ2種類も学ぶ必要があったのでしょうか?それは、それぞれの「目的」が少し違うからです。

① 合計試算表

  • 作る方法:T勘定の「借方合計」と「貸方合計」をそのまま転記。
  • 目的:仕訳帳からの転記が「漏れなくダブりなく」行われたかをチェックするのに最適。
  • 弱点:「で、結局いくら残ってるの?」が分かりにくい。

② 残高試算表

  • 作る方法:T勘定の「差引残高」だけを転記。
  • 目的:各科目の「現在の最終残高」が一覧できる。この先の決算書のベースになる。
  • 弱点:合計金額が消えるため、ミスの原因特定が少し難しい場合がある。

最強の試算表?「合計残高試算表」とは?

今回学ぶ「合計残高試算表」は、その名の通り、上記2つの試算表を合体させたものです。

1つの表の中に「合計欄(合計試算表の機能)」と「残高欄(残高試算表の機能)」の両方を持っており、実務でもよく使われる非常に便利な一覧表です。

構造はこのようになっています。

合計残高試算表のフォーマット

勘定科目 合計(合計試算表の機能) 残高(残高試算表の機能)
借方 貸方 借方 貸方
現金 (合計を転記) (合計を転記) (残高を転記)
売上 (合計を転記) (残高を転記)

設例:合計残高試算表の作り方

百聞は一見に如かず。第14回とまったく同じT勘定データを使って、合計残高試算表を作ってみましょう。

【元のデータ:総勘定元帳(T勘定)】

現金
借方 貸方
4/1 資本金 100,000
4/10 売上 80,000
4/15 支払家賃 50,000
資本金
借方 貸方
4/1 現金 100,000
売上
借方 貸方
4/10 現金 80,000
支払家賃
借方 貸方
4/15 現金 50,000

【ステップ1】 各勘定の「合計」と「残高」を計算する(前回と同じ)

  • 現金
    • 合計:借方 180,000 / 貸方 50,000
    • 残高:180,000 – 50,000 = 借方 130,000
  • 資本金
    • 合計:借方 0 / 貸方 100,000
    • 残高:100,000 – 0 = 貸方 100,000
  • 売上
    • 合計:借方 0 / 貸方 80,000
    • 残高:80,000 – 0 = 貸方 80,000
  • 支払家賃
    • 合計:借方 50,000 / 貸方 0
    • 残高:50,000 – 0 = 借方 50,000

【ステップ2】 合計残高試算表にすべて転記する

合計残高試算表
勘定科目 合計 残高
借方 貸方 借方 貸方
現金 180,000 50,000 130,000
資本金 100,000 100,000
売上 80,000 80,000
支払家賃 50,000 50,000
合計 230,000 230,000 180,000 180,000

【チェック!】
これが「合計残高試算表」の完成形です。
「合計」の借方・貸方が 230,000円で一致し、かつ「残高」の借方・貸方も 180,000円で一致しています。
このように、2つのペアが両方とも一致することを確認するのが、合計残高試算表の役割です。

3種類の試算表のまとめ(図解)

これで3種類の試算表がすべて出揃いました。それぞれの特徴を図で整理しましょう。

3種類の試算表の機能

① 合計試算表
T勘定の「合計」だけを抜き出したもの。
✓ 転記ミスのチェックに強い。
② 残高試算表
T勘定の「残高」だけを抜き出したもの。
✓ 財産状況の把握や、決算書(B/S, P/L)の作成に使われる。
③ 合計残高試算表
①と②を合体させた「全部入り」。
✓ ミスチェックと残高把握が同時にできる。

POINTまとめ

  • 試算表は「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」の3種類がある。
  • 合計試算表は、T勘定の「借方合計」「貸方合計」を一覧にした表。
  • 残高試算表は、T勘定の「差引残高」を一覧にした表。
  • 合計残高試算表は、「合計」欄と「残高」欄の両方を持つ、全部入りの試算表。
  • 合計残高試算表では、「合計」の借方・貸方と、「残高」の借方・貸方の両方が、それぞれ一致する必要がある。
  • どの試算表も、大本のルールは「貸借平均の原理」(借方合計=貸方合計)である。

ミニクイズ

お疲れ様でした!これで第3部「帳簿の集計と確認」はすべて終了です。仕訳から転記、試算表までの流れをしっかり掴んでください。

【Q1】T勘定の「合計」と「残高」の両方を1つの表にまとめた試算表を何というか?

  1. 合計試算表
  2. 残高試算表
  3. 合計残高試算表
答えを見る

【A1】3. 合計残高試算表

解説:その名の通り、「合計」と「残高」の両方を備えた試算表です。

【Q2】合計残高試算表を作成したところ、「合計」欄の借方合計は1,500,000円、「残高」欄の借方合計は800,000円だった。このとき、「合計」欄の貸方合計はいくらになるはずか?

  1. 800,000円
  2. 1,500,000円
  3. 700,000円
答えを見る

【A2】2. 1,500,000円

解説:「合計」の借方と貸方は必ず一致します。また、「残高」の借方と貸方も必ず一致します(この場合800,000円になるはずです)。「合計」と「残高」の金額が一致する必要はありません。

さあ、これで簿記の一連の流れ(期中取引)が完了しました!

仕訳 → 転記 → 試算表(でチェック)

この流れで作成した「残高試算表」が、会社の「成績表(決算書)」の元になります。
「やった!じゃあ、この残高試算表の数字をそのまま並べれば完成だ!」…と行きたいところですが、実はもう一つだけ、大事な作業が残っています。

私たちが作った試算表は、あくまで「日々の取引」を集計しただけ。
第8回で学んだ「減価償却」のような「期末に一度だけ行う計算」や、「まだ払ってないけど、今年の費用だよね?」といった調整が、まだ反映されていません。

次回からの第4部「決算整理編」では、この残高試算表の数字を、会社の「正しい成績」になるよう修正(アジャスト)する作業、「決算整理仕訳」を学んでいきます!いよいよ簿記のクライマックスです!お楽しみに!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です