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第14回では、転記ミスを発見するための魔法のツール「試算表」について学びました。T勘定に集計した数字を使って、「合計試算表」と「残高試算表」の2種類を作成しましたね。
どちらの試算表も、借方の総合計と貸方の総合計が必ず一致する(貸借平均の原理)というのが最大のポイントでした。
今回は第3部の締めくくりとして、これら2つの試算表の「いいとこ取り」をした、最も情報量が多い3種類目の試算表、「合計残高試算表」をマスターします!
今日のゴール
- 「合計試算表」と「残高試算表」の役割をもう一度おさらいする
- 「合計残高試算表」の構造とメリットを理解する
- T勘定から「合計残高試算表」を作成できる
- 3種類の試算表の違いを説明できる
試算表のおさらい:合計試算表と残高試算表
新しい試算表を学ぶ前に、前回のおさらいです。なぜ2種類も学ぶ必要があったのでしょうか?それは、それぞれの「目的」が少し違うからです。
① 合計試算表
- 作る方法:T勘定の「借方合計」と「貸方合計」をそのまま転記。
- 目的:仕訳帳からの転記が「漏れなくダブりなく」行われたかをチェックするのに最適。
- 弱点:「で、結局いくら残ってるの?」が分かりにくい。
② 残高試算表
- 作る方法:T勘定の「差引残高」だけを転記。
- 目的:各科目の「現在の最終残高」が一覧できる。この先の決算書のベースになる。
- 弱点:合計金額が消えるため、ミスの原因特定が少し難しい場合がある。
最強の試算表?「合計残高試算表」とは?
今回学ぶ「合計残高試算表」は、その名の通り、上記2つの試算表を合体させたものです。
1つの表の中に「合計欄(合計試算表の機能)」と「残高欄(残高試算表の機能)」の両方を持っており、実務でもよく使われる非常に便利な一覧表です。
構造はこのようになっています。
合計残高試算表のフォーマット
| 勘定科目 | 合計(合計試算表の機能) | 残高(残高試算表の機能) | ||
|---|---|---|---|---|
| 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | |
| 現金 | (合計を転記) | (合計を転記) | (残高を転記) | |
| 売上 | (合計を転記) | (残高を転記) | ||
設例:合計残高試算表の作り方
百聞は一見に如かず。第14回とまったく同じT勘定データを使って、合計残高試算表を作ってみましょう。
【元のデータ:総勘定元帳(T勘定)】
| 現金 | |
|---|---|
| 借方 | 貸方 |
| 4/1 資本金 100,000 4/10 売上 80,000 |
4/15 支払家賃 50,000 |
| 資本金 | |
|---|---|
| 借方 | 貸方 |
| 4/1 現金 100,000 | |
| 売上 | |
|---|---|
| 借方 | 貸方 |
| 4/10 現金 80,000 | |
| 支払家賃 | |
|---|---|
| 借方 | 貸方 |
| 4/15 現金 50,000 | |
【ステップ1】 各勘定の「合計」と「残高」を計算する(前回と同じ)
- 現金:
- 合計:借方 180,000 / 貸方 50,000
- 残高:180,000 – 50,000 = 借方 130,000
- 資本金:
- 合計:借方 0 / 貸方 100,000
- 残高:100,000 – 0 = 貸方 100,000
- 売上:
- 合計:借方 0 / 貸方 80,000
- 残高:80,000 – 0 = 貸方 80,000
- 支払家賃:
- 合計:借方 50,000 / 貸方 0
- 残高:50,000 – 0 = 借方 50,000
【ステップ2】 合計残高試算表にすべて転記する
| 勘定科目 | 合計 | 残高 | ||
|---|---|---|---|---|
| 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | |
| 現金 | 180,000 | 50,000 | 130,000 | |
| 資本金 | 100,000 | 100,000 | ||
| 売上 | 80,000 | 80,000 | ||
| 支払家賃 | 50,000 | 50,000 | ||
| 合計 | 230,000 | 230,000 | 180,000 | 180,000 |
【チェック!】
これが「合計残高試算表」の完成形です。
「合計」の借方・貸方が 230,000円で一致し、かつ「残高」の借方・貸方も 180,000円で一致しています。
このように、2つのペアが両方とも一致することを確認するのが、合計残高試算表の役割です。
3種類の試算表のまとめ(図解)
これで3種類の試算表がすべて出揃いました。それぞれの特徴を図で整理しましょう。
3種類の試算表の機能
T勘定の「合計」だけを抜き出したもの。
✓ 転記ミスのチェックに強い。
T勘定の「残高」だけを抜き出したもの。
✓ 財産状況の把握や、決算書(B/S, P/L)の作成に使われる。
①と②を合体させた「全部入り」。
✓ ミスチェックと残高把握が同時にできる。
POINTまとめ
- 試算表は「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」の3種類がある。
- 合計試算表は、T勘定の「借方合計」「貸方合計」を一覧にした表。
- 残高試算表は、T勘定の「差引残高」を一覧にした表。
- 合計残高試算表は、「合計」欄と「残高」欄の両方を持つ、全部入りの試算表。
- 合計残高試算表では、「合計」の借方・貸方と、「残高」の借方・貸方の両方が、それぞれ一致する必要がある。
- どの試算表も、大本のルールは「貸借平均の原理」(借方合計=貸方合計)である。
ミニクイズ
お疲れ様でした!これで第3部「帳簿の集計と確認」はすべて終了です。仕訳から転記、試算表までの流れをしっかり掴んでください。
【Q1】T勘定の「合計」と「残高」の両方を1つの表にまとめた試算表を何というか?
- 合計試算表
- 残高試算表
- 合計残高試算表
答えを見る
【A1】3. 合計残高試算表
解説:その名の通り、「合計」と「残高」の両方を備えた試算表です。
【Q2】合計残高試算表を作成したところ、「合計」欄の借方合計は1,500,000円、「残高」欄の借方合計は800,000円だった。このとき、「合計」欄の貸方合計はいくらになるはずか?
- 800,000円
- 1,500,000円
- 700,000円
答えを見る
【A2】2. 1,500,000円
解説:「合計」の借方と貸方は必ず一致します。また、「残高」の借方と貸方も必ず一致します(この場合800,000円になるはずです)。「合計」と「残高」の金額が一致する必要はありません。
さあ、これで簿記の一連の流れ(期中取引)が完了しました!
仕訳 → 転記 → 試算表(でチェック)
この流れで作成した「残高試算表」が、会社の「成績表(決算書)」の元になります。
「やった!じゃあ、この残高試算表の数字をそのまま並べれば完成だ!」…と行きたいところですが、実はもう一つだけ、大事な作業が残っています。
私たちが作った試算表は、あくまで「日々の取引」を集計しただけ。
第8回で学んだ「減価償却」のような「期末に一度だけ行う計算」や、「まだ払ってないけど、今年の費用だよね?」といった調整が、まだ反映されていません。
次回からの第4部「決算整理編」では、この残高試算表の数字を、会社の「正しい成績」になるよう修正(アジャスト)する作業、「決算整理仕訳」を学んでいきます!いよいよ簿記のクライマックスです!お楽しみに!

