簿記3級無料講座 第14回:仕訳ミスを発発見する魔法のツール「試算表」の作成方法と見方

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第13回では、仕訳帳(日記)に記録した取引を、総勘定元帳(勘定科目ごとのノート)に書き写す「転記」という作業を学びました。T勘定を使って、科目ごとに金額を集計しましたね。

しかし、人間が作業する以上、どうしてもミスは起こります。

  • 仕訳の借方だけ転記して、貸方を忘れた!
  • 10,000円を1,000円と書き間違えた!
  • 借方に書くべきなのに、T勘定の貸方に書いてしまった!

こんなミスがあったら、この先の決算作業(会社の成績表づくり)がすべて狂ってしまいます。
そこで今回は、転記が正しく行われたかをチェックするための、簿記における超重要なツール「試算表(しさんひょう)」の作り方と見方をマスターしましょう!

今日のゴール

  • なぜ試算表が必要なのか、その役割と目的がわかる
  • 簿記の基本原則である「貸借平均の原理」を理解する
  • 「合計試算表」の作り方とチェックポイントがわかる
  • 「残高試算表」の作り方とチェックポイントがわかる
  • 試算表で発見できるミスと、発見できないミスの違いがわかる

試算表(T/B)とは? なぜ必要なの?

試算表(Trial Balance、略してT/Bとも言います)とは、「総勘定元帳」に転記されたすべての勘定科目の金額を集計した一覧表のことです。

なぜこれを作るのか? 目的はただ一つ、「転記が正しく行われたかを検証する」ためです。

この検証は、簿記の最大のルールである「貸借平均の原理」に基づいて行われます。

【貸借平均の原理】
すべての仕訳は、必ず「借方(左)の金額」と「貸方(右)の金額」が等しくなるように記録される。(=複式簿記)

したがって、すべての仕訳を合計しても、
「借方の合計金額」は、必ず「貸方の合計金額」と一致する!

試算表は、「本当に一致してる?」を確かめるための「検算シート」なのです。

試算表の作り方(設例)

まずは、転記の元となる「総勘定元帳(T勘定)」が必要です。第13回で作成した、以下のT勘定を例に見ていきましょう。

【元のデータ:総勘定元帳(T勘定)】

現金
借方 貸方
4/1 資本金 100,000
4/10 売上 80,000
4/15 支払家賃 50,000
資本金
借方 貸方
4/1 現金 100,000
売上
借方 貸方
4/10 現金 80,000
支払家賃
借方 貸方
4/15 現金 50,000

試算表には大きく分けて「合計試算表」と「残高試算表」の2種類があります。(次回、3種類目を学びます)

① 合計試算表

合計試算表は、各T勘定の「借方合計」と「貸方合計」を、そのまま一覧表に書き写したものです。
「とにかく全部の合計を比べてみよう」という、最もシンプルな試算表です。

【ステップ1】 T勘定の「合計」を計算する

  • 現金: 借方合計 180,000 / 貸方合計 50,000
  • 資本金: 借方合計 0 / 貸方合計 100,000
  • 売上: 借方合計 0 / 貸方合計 80,000
  • 支払家賃: 借方合計 50,000 / 貸方合計 0

【ステップ2】 一覧表(合計試算表)に転記する

合計試算表
勘定科目 借方合計 貸方合計
現金 180,000 50,000
資本金 0 100,000
売上 0 80,000
支払家賃 50,000 0
合計 230,000 230,000

【チェック!】
借方の総合計(180,000 + 0 + 0 + 50,000 = 230,000)と、貸方の総合計(50,000 + 100,000 + 80,000 + 0 = 230,000)が、ピッタリ一致しました!
これで、転記ミスは(たぶん)無いな、と確認できるわけです。

② 残高試算表

合計試算表はミスのチェックには役立ちますが、「結局、現金はいくら残ってるの?」が一覧でわかりません。
そこで、より実務的で重要なのが「残高試算表」です。これは、各T勘定の「差引残高」だけを一覧表に書き写したものです。

【ステップ1】 T勘定の「残高」を計算する

  • 現金: 借方 180,000 – 貸方 50,000 = 借方残高 130,000
  • 資本金: 貸方 100,000 – 借方 0 = 貸方残高 100,000
  • 売上: 貸方 80,000 – 借方 0 = 貸方残高 80,000
  • 支払家賃: 借方 50,000 – 貸方 0 = 借方残高 50,000

【ステップ2】 一覧表(残高試算表)に転記する

残高試算表
勘定科目 借方残高 貸方残高
現金 130,000
資本金 100,000
売上 80,000
支払家賃 50,000
合計 180,000 180,000

【チェック!】
残高試算表でも、借方の総合計(130,000 + 50,000 = 180,000)と、貸方の総合計(100,000 + 80,000 = 180,000)が、またもやピッタリ一致しました!
これで、会社の「財産や儲けの状況」が一覧でき、かつ「計算ミスがない」ことも確認できました。

この「残高試算表」が、最終ゴールである「貸借対照表」や「損益計算書」の元(もと)になります。

試算表で発見できるミス・できないミス

試算表は万能ではありません。試算表はあくまで「借方合計=貸方合計」になっているか、という機械的なチェックしかできません。

発見できるミス(合計がズレる)

  • 転記を片方(借方だけ、貸方だけ)しかやらなかった。
  • 借方と貸方の金額を違う数字で転記した。(例:借10,000、貸1,000)
  • 借方に書くべきものを貸方に転記した。(両方とも貸方に転記してしまった)

発見できないミス(合計は合ってしまう)

  • 仕訳そのものを丸ごと忘れていた。(借方も貸方も0なので、ズレない)
  • 勘定科目を間違えていた。(例:「支払家賃」でなく「通信費」のT勘定に転記した。借方には書いているので合計は合う)
  • 借方と貸方の両方を、同じように間違った金額で転記した。(例:10,000円の取引を、両方とも1,000円で転記した)

試算表が一致することは、簿記の第一関門です。しかし、一致したからといって「完璧に正しい」とは限らない、という点も覚えておきましょう。

POINTまとめ

  • 試算表(T/B)は、転記が正しく行われたかを確認するための「検算シート」である。
  • 簿記の「貸借平均の原理」(借方合計=貸方合計)を利用してミスを発見する。
  • 合計試算表:T勘定の「借方合計」と「貸方合計」をすべて集めた表。
  • 残高試算表:T勘定の「差引残高」だけを集めた表。これが決算書の元になる。
  • どちらの試算表でも、最終的な「借方」の総合計と「貸方」の総合計は、必ず一致する。
  • 試算表は機械的な転記ミスは発見できるが、仕訳そのものの漏れや、勘定科目の間違いは発見できない。

ミニクイズ

お疲れ様でした!簿記のプロセスが「仕訳」→「転記」→「試算表」と繋がりましたね。クイズで理解度をチェックしましょう!

【Q1】試算表を作成する最大の目的として、最も適切なものはどれ?

  1. 仕訳をすること。
  2. 勘定科目ごとの残高を計算し、転記の正しさを検証すること。
  3. 商品を宣伝すること。
答えを見る

【A1】2. 勘定科目ごとの残高を計算し、転記の正しさを検証すること。

解説:試算表は、仕訳と転記が終わった後の「チェック(検算)」のために作成します。

【Q2】「合計試算表」を作成したところ、借方の総合計が500,000円だった。このとき、貸方の総合計はいくらになるはずか?

  1. 0円
  2. 250,000円
  3. 500,000円
答えを見る

【A2】3. 500,000円

解説:「貸借平均の原理」により、借方の総合計と貸方の総合計は、必ず一致するはずです。

【Q3】「現金」勘定のT勘定が、借方合計300,000円、貸方合計120,000円だった。「残高試算表」の「現金」の欄はどのようになる?

  1. 借方(左)の欄に 180,000円
  2. 貸方(右)の欄に 180,000円
  3. 借方(左)の欄に 300,000円
答えを見る

【A3】1. 借方(左)の欄に 180,000円

解説:残高=差引額です。現金(資産)は借方(左)で増えるので、借方 300,000 – 貸方 120,000 = 180,000円 が借方残高となります。

今回は、転記作業のチェックツールである「合計試算表」と「残高試算表」を学びました。どちらも借方合計と貸方合計が一致することが大切でしたね。

次回は、この2つを合体させた、さらに便利な「合計残高試算表」という3種類目の試算表をマスターして、第3部を締めくくります!お楽しみに!

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