簿記3級無料講座 第13回:仕訳の次は「転記」!総勘定元帳の役割と作り方

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第2部「仕訳マスター編」(第3回〜第12回)まで、本当にお疲れ様でした!これで、日々の取引を「仕訳」という簿記の言語に翻訳する方法は、ほぼマスターしました。

しかし、思い出してください。仕訳は「日付順」に取引を記録した、いわば「日記」のようなものです。
「4月1日に商品を仕入れた」「4月2日に備品を買った」「4月3日に商品が売れた」…
これでは、「今、現金は合計でいくら残っているの?」とか、「A社への売掛金(未回収代金)はいくら?」といった、勘定科目ごとの合計金額(残高)がサッパリわかりません。

そこで今回から始まる第3部では、仕訳(日記)を「集計」する作業に入ります!
今回はその第一歩、仕訳帳の内容を「勘定科目ごと」にまとめるノートに書き写す作業、「転記」と、そのノートである「総勘定元帳」について学んでいきましょう!

今日のゴール

  • 「仕訳帳」と「総勘定元帳」の役割の違いがわかる
  • なぜ「転記」という作業が必要なのかを理解する
  • 総勘定元帳の簡易版である「T勘定(Tフォーム)」の書き方がわかる
  • 仕訳帳から総勘定元帳へ「転記」する具体的な手順をマスターする

仕訳帳と総勘定元帳 – 2つの主要簿

簿記の帳簿には色々ありますが、最も中心となる2つの帳簿(主要簿)が、これまで学んだ「仕訳帳」と、これから学ぶ「総勘定元帳」です。

2つの帳簿の役割

① 仕訳帳 (日記)

時系列(日付順)
すべての取引を
記録する

② 総勘定元帳 (科目別ノート)

勘定科目ごと
科目ごとの増減と
残高を計算する

仕訳帳から総勘定元帳へ書き写す作業 = 「転記」 (Posting)

仕訳帳(日記)に書かれた「現金が減った」「売上が増えた」という情報を、総勘定元帳の中にある「現金のページ」「売上のページ」に、それぞれコツコツと書き写していく。この地道な作業が「転記」です。

この転記を行うことで、初めて「現金のページ」を見れば「現金残高がいくらか」がわかるようになります。

総勘定元帳の書き方 – 「T勘定」をマスターしよう

「総勘定元帳」は、本来は日付や相手科目、仕訳帳のページ番号などを書く詳細なフォーマットがあります。しかし、簿記3級の学習や試験では、これを簡略化した「T勘定(Tフォーム)」を使います。

名前の通り、アルファベットの「T」の字で勘定科目を表現します。

勘定科目名(例:現金)
借方 (左)
(資産・費用は増加)
(負債・純資産・収益は減少)
貸方 (右)
(資産・費用は減少)
(負債・純資産・収益は増加)

見ての通り、T勘定の左側が「借方」、右側が「貸方」となっており、仕訳のルールと完全に一致しています。
総勘定元帳とは、このT勘定がすべての勘定科目(現金、売掛金、仕入、売上…)の分だけ集まったファイルブックだとイメージしてください。

「転記」の具体的な手順

では、実際に仕訳をT勘定に「転記」してみましょう。ルールは2つだけです。

【転記のルール】

  1. 仕訳で書かれた「同じ側」(借方→借方、貸方→貸方)「金額」を書き写す。
  2. その際、何の取引だったか分かるように「日付」「相手勘定科目」も一緒に書く。

設例①:一つの仕訳を転記する

【仕訳】4月5日、商品10,000円を仕入れ、現金で支払った。

借方 金額 貸方 金額
仕入 10,000 現金 10,000

⬇ 転記 ⬇

【総勘定元帳(T勘定)】

仕入
借方 貸方
4/5 現金 10,000
現金
借方 貸方
4/5 仕入 10,000

【解説】

  1. 仕訳の借方(左)は「仕入 10,000」です。
    →「仕入」勘定の借方(左)に、日付「4/5」、相手科目「現金」、金額「10,000」を転記します。
  2. 仕訳の貸方(右)は「現金 10,000」です。
    →「現金」勘定の貸方(右)に、日付「4/5」、相手科目「仕入」、金額「10,000」を転記します。

設例②:複数の仕訳を転記し、残高を計算する

転記の本当の目的は「残高」を知ることです。いくつかの取引を転記してみましょう。

【仕訳】

  • 4/1:現金100,000円を元入れして開業した。
    → (借) 現金 100,000 / (貸) 資本金 100,000
  • 4/10:商品80,000円を売り上げ、現金で受け取った。
    → (借) 現金 80,000 / (貸) 売上 80,000
  • 4/15:事務所の家賃50,000円を現金で支払った。
    → (借) 支払家賃 50,000 / (貸) 現金 50,000

⬇ 転記 ⬇

【総勘定元帳(T勘定)】

現金
借方 (増加) 貸方 (減少)
4/1 資本金 100,000
4/10 売上 80,000
4/15 支払家賃 50,000
借方合計 180,000 貸方合計 50,000
資本金
4/1 現金 100,000
売上
4/10 現金 80,000
支払家賃
4/15 現金 50,000

【残高の計算】

転記が終わった「現金」のT勘定を見てください。

  • 借方(増加)の合計:100,000 + 80,000 = 180,000円
  • 貸方(減少)の合計:50,000円

差引残高:180,000円(借方) – 50,000円(貸方) = 130,000円

これで、4月15日時点の「現金残高は130,000円である」ことが分かりました!これが総勘定元帳の最大の目的なのです。

POINTまとめ

  • 仕訳帳は「日付順」の全取引日記。
  • 総勘定元帳は「勘定科目ごと」の集計ノート。
  • 仕訳帳から総勘定元帳へ書き写す作業を「転記」という。
  • 学習上、総勘定元帳は「T勘定」という簡易形式で書く。
  • 転記のルールは、仕訳の「同じ側」「金額」「相手勘定科目」を書くこと。
  • 転記の目的は、勘定科目ごとの「残高(合計金額)」を計算するため。

ミニクイズ

お疲れ様でした!「転記」は簿記の流れの中で、仕訳の次に来る重要なステップです。クイズで確認してみましょう。

【Q1】仕訳帳に記録された取引を、勘定科目ごとに総勘定元帳へ書き写す作業のことを何というか?

  1. 仕訳
  2. 転記
  3. 決算
答えを見る

【A1】2. 転記

解説:仕訳帳(日記)から総勘定元帳(科目別ノート)へ書き写す(Transfer)ことを「転記」(Posting)といいます。

【Q2】「(借) 消耗品費 3,000 / (貸) 現金 3,000」という仕訳を「消耗品費」のT勘定に転記する場合、正しいものはどれ?

  1. 借方(左)に「現金 3,000」と記入する
  2. 貸方(右)に「現金 3,000」と記入する
  3. 借方(左)に「消耗品費 3,000」と記入する
答えを見る

【A2】1. 借方(左)に「現金 3,000」と記入する

解説:転記のルールは「同じ側」に「相手科目」です。
仕訳の借方(左)が「消耗品費」なので、「消耗品費」勘定の借方(左)に、相手科目である「現金」と金額「3,000」を記入します。

今回は、地道ですが非常に重要な「転記」作業を学びました。すべての仕訳を転記すれば、すべての勘定科目の残高が計算できます。

しかし、人間が手作業で転記すると、どうしてミスが起こります。
「借方と貸方を逆に書いた」「10,000円を1,000円と書き間違えた」「片方しか転記しなかった」…

次回は、これらの転記ミスを自動的に発見する魔法のツール「試算表(しさんひょう)」について学びます!お楽しみに!

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