簿記3級講座 第5回:商品を売り買いする①基本の「三分法」と「売上」「仕入」の仕訳

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第4回では、会社のお金の基本である「現金」「普通預金」「当座預金」の仕訳を学びました。お金の動きを記録する方法はバッチリですね!

さて、会社(特に小売業や卸売業)の活動の中心は、何といっても「商品を仕入れて、売る」ことです。これがなければ利益は生まれません。

今回は、この「商品の売り買い」をどのように帳簿に記録していくのか、その最も基本的なルールについて学んでいきましょう。簿記3級の試験でカギとなる「三分法」という考え方と、「仕入」「売上」の仕訳を徹底マスターします!

今日のゴール

  • 商品売買の基本的な記帳方法「三分法」とは何かを理解する
  • 商品を仕入れたときの勘定科目「仕入」の仕訳ができる
  • 商品を売り上げたときの勘定科目「売上」の仕訳ができる
  • 商品を仕入れたり、売り上げたりした時の「送料(発送運賃)」の処理方法がわかる

商品売買のルール「三分法」とは?

商品の売り買い(商品売買)を帳簿に記録する方法には、実はいくつか種類があります。簿記3級で学習するのは、その中で最も一般的で重要な「三分法」という方法です。

「三分法」がなぜ「三」分法と呼ばれるかというと、商品の取引を以下の3つの勘定科目(グループ)に分けて記録するからです。

  1. 仕入
    • 使うタイミング: 商品を購入(仕入れ)した時
    • グループ: 費用
    • 意味: 売るための商品を買った代金
  2. 売上使うタイミング: 商品が売れた時
    • グループ: 収益
    • 意味: 商品を売って得た代金
  3. 繰越商品
    • 使うタイミング: 決算の時(期末に売れ残った商品の棚卸をした時)
    • グループ: 資産
    • 意味: 売れ残った商品(在庫)の価値

ここで非常に重要なポイントがあります。

三分法では、日々の取引(期中)では「仕入(費用)」と「売上(収益)」の2つしか使いません。

「繰越商品(資産)」は、年に一度の決算の時まで使いません。「商品が売れたから、手元の在庫(資産)が減った」という仕訳は、売れるたびには行わないのです。

まずは「買ったら『仕入(費用)』、売ったら『売上(収益)』」と覚えてください。

「仕入」の仕訳(商品を買ったとき)

商品を仕入れたときは、「仕入」という勘定科目を使います。これは「費用」のグループです。

第2回の復習です。費用が発生したら、借方(左側)? 貸方(右側)?

そうです、借方(左側)ですね。

  • 費用が発生したら → 借方(左側)に「仕入」

設例①:商品を仕入れて現金で支払った

【設例1】A商店から商品50,000円を仕入れ、代金は現金で支払った。

【考え方】

  • 「仕入」(費用)が50,000円発生した → 借方(左)に「仕入 50,000」
  • 「現金」(資産)が50,000円減った → 貸方(右)に「現金 50,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
仕入 50,000 現金 50,000

設例②:商品を仕入れて小切手で支払った

【設例2】B商店から商品30,000円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。

【考え方】

  • 「仕入」(費用)が30,000円発生した → 借方(左)に「仕入 30,000」
  • 小切手を振り出した(当社が発行した)ので、「当座預金」(資産)が30,000円減った → 貸方(右)に「当座預金 30,000」(第4回の復習です!)

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
仕入 30,000 当座預金 30,000

「売上」の仕訳(商品が売れたとき)

商品が売れたときは、「売上」という勘定科目を使います。これは「収益」のグループです。

収益が発生したら、どちら側に記録するでしょうか?

はい、貸方(右側)ですね。

  • 収益が発生したら → 貸方(右側)に「売上」

設例③:商品を売り上げて現金を受け取った

【設例3】C商店に商品80,000円を売り上げ、代金は現金で受け取った。

【考え方】

  • 「売上」(収益)が80,000円発生した → 貸方(右)に「売上 80,000」
  • 「現金」(資産)が80,000円増えた → 借方(左)に「現金 80,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
現金 80,000 売上 80,000

設例④:商品を売り上げて他人振出小切手を受け取った

【設例4】D商店に商品40,000円を売り上げ、代金としてD商店振出の小切手を受け取った。

【考え方】

  • 「売上」(収益)が40,000円発生した → 貸方(右)に「売上 40,000」
  • 他人(D商店)振出の小切手を受け取ったので、「現金」(資産)が40,000円増えた → 借方(左)に「現金 40,000」(第4回の最重要ポイントです!)

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
現金 40,000 売上 40,000

【重要】送料(発送運賃)の処理

商品を仕入れたり、売り上げたりする際、荷物を送るための「送料(発送運賃)」がかかることがあります。この送料を「当社(自分の会社)」が負担した場合、仕入れと売上で処理方法が異なります。ここは試験でよく狙われるポイントです!

① 仕入諸掛 – 買ったときの送料

商品を仕入れる(買う)ときにかかった送料(運賃、引取費用など)を「仕入諸掛」といいます。

ルール:当社が負担した仕入諸掛は、商品の購入代価に含めて「仕入」勘定で処理します。

なぜなら、「その商品を仕入れて、自分の店に持ってくるまでにかかった費用」は、すべてその商品の「仕入原価(もともとの値段)」の一部と考えるからです。

設例⑤:仕入れたときの送料を当社が負担した

【設例5】E商店から商品100,000円を仕入れ、代金は現金で支払った。また、商品を引き取るための送料(当社負担)5,000円も現金で支払った。

【考え方】

  • 商品代金100,000円+送料5,000円=105,000円が、今回の「仕入」の総額になります。
  • 「仕入」(費用)が105,000円発生した → 借方(左)に「仕入 105,000」
  • 「現金」(資産)が合計105,000円減った → 貸方(右)に「現金 105,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
仕入 105,000 現金 105,000

※「支払運賃」のような別の勘定科目は使いません。送料も「仕入」に含めるのがポイントです。

② 売上諸掛 – 売ったときの送料

商品を売り上げる(売る)ときにかかった送料を「売上諸掛」といいます。

ルール:当社が負担した売上諸掛は、「売上」勘定とは別に、「発送費」という勘定科目(費用)で処理します。

これは、「売上」という収益はあくまで「商品の本体価格」であり、発送サービスはそれとは別の「費用」と考えるからです。

設例⑥:売り上げたときの送料を当社が負担した

【設例6】F商店に商品70,000円を売り上げ、代金は現金で受け取った。また、商品を発送するための送料(当社負担)2,000円を現金で支払った。

【考え方】

この取引は「売上が発生した取引」と「送料を支払った取引」の2つが同時に起こったと考えます。

  • 売上取引:
    • 「売上」(収益)が70,000円発生した → 貸方(右)に「売上 70,000」
    • 「現金」(資産)が70,000円増えた → 借方(左)に「現金 70,000」
  • 送料取引:
    • 「発送費」(費用)が2,000円発生した → 借方(左)に「発送費 2,000」
    • 「現金」(資産)が2,000円減った → 貸方(右)に「現金 2,000」

【仕訳(2つを合体させます)】

借方 金額 貸方 金額
現金 70,000 売上 70,000
発送費 2,000 現金 2,000

※「売上」の金額は70,000円のままです。送料は「発送費」という別の費用として処理します。

(注:借方の「現金 70,000」と貸方の「現金 2,000」を相殺して、借方「現金 68,000」と1行にまとめることもできますが、まずはこの形が一番わかりやすいです。)

送料のまとめ(図解)

仕入と売上の送料の扱いは混乱しやすいので、図で整理しましょう。

送料(当社負担)の処理方法

① 仕入れた時 (購入)

商品代金 + 送料
すべて
「仕入」(費用)
に含める

② 売り上げた時 (販売)

送料は
「発送費」(費用)
として別に処理

POINTまとめ

  • 簿記3級で学ぶ商品売買のルールは「三分法」
  • 三分法では、日々の取引で「仕入(費用)」「売上(収益)」を使う。
  • 商品を仕入れたら(買ったら)、借方(左)「仕入」を記入する。
  • 商品が売れたら、貸方(右)「売上」を記入する。
  • 仕入れにかかった送料(当社負担)は、「仕入」勘定に含めて処理する。
  • 売上にかかった送料(当社負担)は、「発送費」という別の費用勘定で処理する。

ミニクイズ

お疲れ様でした!今回の内容が理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。

【Q1】商品70,000円を売り上げ、代金として普通預金口座に振り込まれた。このときの仕訳として正しいものはどれ?

  1. (借) 売上 70,000 / (貸) 普通預金 70,000
  2. (借) 普通預金 70,000 / (貸) 仕入 70,000
  3. (借) 普通預金 70,000 / (貸) 売上 70,000
答えを見る

【A1】3. (借) 普通預金 70,000 / (貸) 売上 70,000

解説:商品が売れたので、「売上(収益)」が貸方(右)に発生します。代金は「普通預金(資産)」で受け取ったので、借方(左)で資産が増加します。

【Q2】商品30,000円を仕入れ、代金は現金で支払った。このとき、当社が負担する送料1,000円も現金で支払った。借方(左側)の「仕入」勘定の金額はいくらになる?

  1. 1,000円
  2. 30,000円
  3. 31,000円
答えを見る

【A2】3. 31,000円

解説:商品を「仕入れた」ときにかかった送料(当社負担)は、「仕入」勘定に含めます。したがって、商品代金30,000円+送料1,000円=31,000円が「仕入」の金額となります。

今回は「三分法」という簿記3級の土台となるルールを学びました。特に送料の扱いは、仕入時と売上時で異なるため、しっかり区別できるようにしておきましょう!

しかし、いつも商品を買ったり売ったりするときに、すぐに現金や預金で支払い(受け取り)するとは限りませんよね。いわゆる「ツケ」や「後払い」です。

次回は、この「ツケ」の処理である「売掛金」「買掛金」について学んでいきます。お楽しみに!

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