こんにちは!「簿記3級合格へ導く!無料Web講座」へようこそ。
第4回では、会社のお金の基本である「現金」「普通預金」「当座預金」の仕訳を学びました。お金の動きを記録する方法はバッチリですね!
さて、会社(特に小売業や卸売業)の活動の中心は、何といっても「商品を仕入れて、売る」ことです。これがなければ利益は生まれません。
今回は、この「商品の売り買い」をどのように帳簿に記録していくのか、その最も基本的なルールについて学んでいきましょう。簿記3級の試験でカギとなる「三分法」という考え方と、「仕入」「売上」の仕訳を徹底マスターします!
今日のゴール
- 商品売買の基本的な記帳方法「三分法」とは何かを理解する
- 商品を仕入れたときの勘定科目「仕入」の仕訳ができる
- 商品を売り上げたときの勘定科目「売上」の仕訳ができる
- 商品を仕入れたり、売り上げたりした時の「送料(発送運賃)」の処理方法がわかる
商品売買のルール「三分法」とは?
商品の売り買い(商品売買)を帳簿に記録する方法には、実はいくつか種類があります。簿記3級で学習するのは、その中で最も一般的で重要な「三分法」という方法です。
「三分法」がなぜ「三」分法と呼ばれるかというと、商品の取引を以下の3つの勘定科目(グループ)に分けて記録するからです。
- 仕入
- 使うタイミング: 商品を購入(仕入れ)した時
- グループ: 費用
- 意味: 売るための商品を買った代金
- 売上使うタイミング: 商品が売れた時
- グループ: 収益
- 意味: 商品を売って得た代金
- 繰越商品
- 使うタイミング: 決算の時(期末に売れ残った商品の棚卸をした時)
- グループ: 資産
- 意味: 売れ残った商品(在庫)の価値
ここで非常に重要なポイントがあります。
三分法では、日々の取引(期中)では「仕入(費用)」と「売上(収益)」の2つしか使いません。
「繰越商品(資産)」は、年に一度の決算の時まで使いません。「商品が売れたから、手元の在庫(資産)が減った」という仕訳は、売れるたびには行わないのです。
まずは「買ったら『仕入(費用)』、売ったら『売上(収益)』」と覚えてください。
「仕入」の仕訳(商品を買ったとき)
商品を仕入れたときは、「仕入」という勘定科目を使います。これは「費用」のグループです。
第2回の復習です。費用が発生したら、借方(左側)? 貸方(右側)?
そうです、借方(左側)ですね。
- 費用が発生したら → 借方(左側)に「仕入」
設例①:商品を仕入れて現金で支払った
【設例1】A商店から商品50,000円を仕入れ、代金は現金で支払った。
【考え方】
- 「仕入」(費用)が50,000円発生した → 借方(左)に「仕入 50,000」
- 「現金」(資産)が50,000円減った → 貸方(右)に「現金 50,000」
【仕訳】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 50,000 | 現金 | 50,000 |
設例②:商品を仕入れて小切手で支払った
【設例2】B商店から商品30,000円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。
【考え方】
- 「仕入」(費用)が30,000円発生した → 借方(左)に「仕入 30,000」
- 小切手を振り出した(当社が発行した)ので、「当座預金」(資産)が30,000円減った → 貸方(右)に「当座預金 30,000」(第4回の復習です!)
【仕訳】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 30,000 | 当座預金 | 30,000 |
「売上」の仕訳(商品が売れたとき)
商品が売れたときは、「売上」という勘定科目を使います。これは「収益」のグループです。
収益が発生したら、どちら側に記録するでしょうか?
はい、貸方(右側)ですね。
- 収益が発生したら → 貸方(右側)に「売上」
設例③:商品を売り上げて現金を受け取った
【設例3】C商店に商品80,000円を売り上げ、代金は現金で受け取った。
【考え方】
- 「売上」(収益)が80,000円発生した → 貸方(右)に「売上 80,000」
- 「現金」(資産)が80,000円増えた → 借方(左)に「現金 80,000」
【仕訳】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 80,000 | 売上 | 80,000 |
設例④:商品を売り上げて他人振出小切手を受け取った
【設例4】D商店に商品40,000円を売り上げ、代金としてD商店振出の小切手を受け取った。
【考え方】
- 「売上」(収益)が40,000円発生した → 貸方(右)に「売上 40,000」
- 他人(D商店)振出の小切手を受け取ったので、「現金」(資産)が40,000円増えた → 借方(左)に「現金 40,000」(第4回の最重要ポイントです!)
【仕訳】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 40,000 | 売上 | 40,000 |
【重要】送料(発送運賃)の処理
商品を仕入れたり、売り上げたりする際、荷物を送るための「送料(発送運賃)」がかかることがあります。この送料を「当社(自分の会社)」が負担した場合、仕入れと売上で処理方法が異なります。ここは試験でよく狙われるポイントです!
① 仕入諸掛 – 買ったときの送料
商品を仕入れる(買う)ときにかかった送料(運賃、引取費用など)を「仕入諸掛」といいます。
ルール:当社が負担した仕入諸掛は、商品の購入代価に含めて「仕入」勘定で処理します。
なぜなら、「その商品を仕入れて、自分の店に持ってくるまでにかかった費用」は、すべてその商品の「仕入原価(もともとの値段)」の一部と考えるからです。
設例⑤:仕入れたときの送料を当社が負担した
【設例5】E商店から商品100,000円を仕入れ、代金は現金で支払った。また、商品を引き取るための送料(当社負担)5,000円も現金で支払った。
【考え方】
- 商品代金100,000円+送料5,000円=105,000円が、今回の「仕入」の総額になります。
- 「仕入」(費用)が105,000円発生した → 借方(左)に「仕入 105,000」
- 「現金」(資産)が合計105,000円減った → 貸方(右)に「現金 105,000」
【仕訳】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 105,000 | 現金 | 105,000 |
※「支払運賃」のような別の勘定科目は使いません。送料も「仕入」に含めるのがポイントです。
② 売上諸掛 – 売ったときの送料
商品を売り上げる(売る)ときにかかった送料を「売上諸掛」といいます。
ルール:当社が負担した売上諸掛は、「売上」勘定とは別に、「発送費」という勘定科目(費用)で処理します。
これは、「売上」という収益はあくまで「商品の本体価格」であり、発送サービスはそれとは別の「費用」と考えるからです。
設例⑥:売り上げたときの送料を当社が負担した
【設例6】F商店に商品70,000円を売り上げ、代金は現金で受け取った。また、商品を発送するための送料(当社負担)2,000円を現金で支払った。
【考え方】
この取引は「売上が発生した取引」と「送料を支払った取引」の2つが同時に起こったと考えます。
- 売上取引:
- 「売上」(収益)が70,000円発生した → 貸方(右)に「売上 70,000」
- 「現金」(資産)が70,000円増えた → 借方(左)に「現金 70,000」
- 送料取引:
- 「発送費」(費用)が2,000円発生した → 借方(左)に「発送費 2,000」
- 「現金」(資産)が2,000円減った → 貸方(右)に「現金 2,000」
【仕訳(2つを合体させます)】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 70,000 | 売上 | 70,000 |
| 発送費 | 2,000 | 現金 | 2,000 |
※「売上」の金額は70,000円のままです。送料は「発送費」という別の費用として処理します。
(注:借方の「現金 70,000」と貸方の「現金 2,000」を相殺して、借方「現金 68,000」と1行にまとめることもできますが、まずはこの形が一番わかりやすいです。)
送料のまとめ(図解)
仕入と売上の送料の扱いは混乱しやすいので、図で整理しましょう。
送料(当社負担)の処理方法
① 仕入れた時 (購入)
⬇
商品代金 + 送料
すべて
「仕入」(費用)
に含める
② 売り上げた時 (販売)
⬇
送料は
「発送費」(費用)
として別に処理
POINTまとめ
- 簿記3級で学ぶ商品売買のルールは「三分法」。
- 三分法では、日々の取引で「仕入(費用)」と「売上(収益)」を使う。
- 商品を仕入れたら(買ったら)、借方(左)に「仕入」を記入する。
- 商品が売れたら、貸方(右)に「売上」を記入する。
- 仕入れにかかった送料(当社負担)は、「仕入」勘定に含めて処理する。
- 売上にかかった送料(当社負担)は、「発送費」という別の費用勘定で処理する。
ミニクイズ
お疲れ様でした!今回の内容が理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。
【Q1】商品70,000円を売り上げ、代金として普通預金口座に振り込まれた。このときの仕訳として正しいものはどれ?
- (借) 売上 70,000 / (貸) 普通預金 70,000
- (借) 普通預金 70,000 / (貸) 仕入 70,000
- (借) 普通預金 70,000 / (貸) 売上 70,000
答えを見る
【A1】3. (借) 普通預金 70,000 / (貸) 売上 70,000
解説:商品が売れたので、「売上(収益)」が貸方(右)に発生します。代金は「普通預金(資産)」で受け取ったので、借方(左)で資産が増加します。
【Q2】商品30,000円を仕入れ、代金は現金で支払った。このとき、当社が負担する送料1,000円も現金で支払った。借方(左側)の「仕入」勘定の金額はいくらになる?
- 1,000円
- 30,000円
- 31,000円
答えを見る
【A2】3. 31,000円
解説:商品を「仕入れた」ときにかかった送料(当社負担)は、「仕入」勘定に含めます。したがって、商品代金30,000円+送料1,000円=31,000円が「仕入」の金額となります。
今回は「三分法」という簿記3級の土台となるルールを学びました。特に送料の扱いは、仕入時と売上時で異なるため、しっかり区別できるようにしておきましょう!
しかし、いつも商品を買ったり売ったりするときに、すぐに現金や預金で支払い(受け取り)するとは限りませんよね。いわゆる「ツケ」や「後払い」です。
次回は、この「ツケ」の処理である「売掛金」「買掛金」について学んでいきます。お楽しみに!

