簿記3級無料講座 第9回:給料や家賃、広告費など様々な「費用」の仕訳

こんにちは!「簿記3級合格へ導く!無料Web講座」へようこそ。

第8回では、会社が長期間使う「固定資産」(備品、建物など)の購入ルールと、その価値の減少を記録する「減価償却」について学びました。特に、商品以外の掛け(後払い)には「未払金」を使う、というルールが重要でしたね。

さて、会社を運営していくためには、商品を仕入れたり、固定資産を買ったりする以外にも、日々さまざまなお金が出ていきます。従業員への「給料」、オフィスの「家賃」、商品を宣伝するための「広告費」…。

今回は、こうした事業活動に不可欠な様々な「費用」の仕訳をまとめてマスターしましょう!ルールはとてもシンプルです。

今日のゴール

  • 「費用」の基本的な仕訳ルールを再確認する
  • 簿記3級でよく出る「費用」の勘定科目を覚える
  • 様々な費用の支払い(現金、預金、未払い)に関する仕訳ができる
  • 費用が「未払い」のときに使う勘定科目(未払金)を正しく使える

「費用」の基本的なルール(復習)

第2回で学んだ「5つのグループ」を思い出してください。「費用」は、会社の利益を計算するために「収益」から差し引かれるマイナス要素でした。

費用の仕訳ルールはただ一つです。

「費用」が発生したら、借方(左側)に記入する。

(借)〇〇費(費用) / (貸)現金・預金など(資産の減少)

今回の学習のポイントは、左側(借方)に来る「〇〇費」という勘定科目のレパートリーを増やすことです。右側(貸方)は、第4回で学んだ「現金」や「普通預金」などで支払うパターンがほとんどです。

簿記3級で頻出!「費用」の勘定科目

「仕入」(売るための商品の原価)や「減価償却費」(固定資産の費用配分)以外に、以下のような勘定科目を覚える必要があります。名前と内容が一致しているので、比較的覚えやすいはずです。

  • 給料
    • 従業員に支払う労働の対価。
  • 支払家賃
    • 事務所や店舗、倉庫などの家賃。
  • 広告宣伝費
    • テレビCM、インターネット広告、チラシ作成費など、宣伝にかかる費用。
  • 水道光熱費
    • 水道代、電気代、ガス代など。
  • 通信費
    • 電話代、インターネット料金、切手代、配送料(発送費)など。
  • 旅費交通費
    • 電車代、バス代、タクシー代、出張時の宿泊費など。
  • 消耗品費
    • 文房具(ペン、ノート)やコピー用紙など、使ったらなくなる備品。
  • 支払手数料
    • 銀行の振込手数料、専門家(税理士など)への報酬など。
  • 租税公課
    • 固定資産税や自動車税などの税金、印紙代など。

様々な費用の仕訳 – 設例

それでは、具体的な例題を見ていきましょう。どれも「費用」の発生なので、借方(左側)が「〇〇費」になる点に注目してください。

設例①:給料の支払い

【設例1】従業員の給料200,000円を、普通預金口座から振り込んで支払った。

【考え方】

  • 「給料」(費用)が200,000円発生した → 借方(左)に「給料 200,000」
  • 「普通預金」(資産)が200,000円減った → 貸方(右)に「普通預金 200,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
給料 200,000 普通預金 200,000

※(参考)実際は「預り金」(源泉徴収税など)が登場しますが、それは第12回で詳しく学びます。

設例②:家賃の支払い

【設例2】今月分の事務所の家賃80,000円を、現金で支払った。

【考え方】

  • 「支払家賃」(費用)が80,000円発生した → 借方(左)に「支払家賃 80,000」
  • 「現金」(資産)が80,000円減った → 貸方(右)に「現金 80,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
支払家賃 80,000 現金 80,000

設例③:水道光熱費と通信費の支払い

【設例3】今月の電気代15,000円と電話代8,000円が、普通預金口座から引き落とされた。

【考え方】

2つの費用が同時に発生しています。

  • 「水道光熱費」(費用)が15,000円発生した → 借方(左)に「水道光熱費 15,000」
  • 「通信費」(費用)が8,000円発生した → 借方(左)に「通信費 8,000」
  • 「普通預金」(資産)が合計23,000円減った → 貸方(右)に「普通預金 23,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
水道光熱費 15,000 普通預金 23,000
通信費 8,000

※このように、借方と貸方の合計金額が一致していれば、片方が複数行になっても問題ありません。

設例④:消耗品費の支払い

【設例4】文房具店でコピー用紙とボールペンを合計5,000円分購入し、現金で支払った。

【考え方】

  • 「消耗品費」(費用)が5,000円発生した → 借方(左)に「消耗品費 5,000」
  • 「現金」(資産)が5,000円減った → 貸方(右)に「現金 5,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,000 現金 5,000

※(参考)購入時にいったん「消耗品」(資産)として計上し、決算で使った分だけ「消耗品費」にする方法もありますが、まずは購入時に即費用化するこの方法をマスターしましょう。

【重要】費用が「未払い」の場合

第8回で、固定資産(備品など)を後払いで買った場合、「未払金」(負債)を使うと学びました。

この「未払金」は、今回学んだ様々な「費用」が未払いの場合にも使います。

「買掛金」と「未払金」の使い分けを、ここで完璧に整理しましょう。

「後払い」の使い分け

① 商品の仕入

「買掛金」
(負債)

② それ以外ぜんぶ

(固定資産の購入)
(家賃、広告費、光熱費など)

「未払金」
(負債)

設例⑤:費用が未払い(掛け)

【設例5】今月の広告宣伝費30,000円について、請求書が届いたが、まだ支払っていない(来月支払う)。

【考え方】

  • 「広告宣伝費」(費用)は今月発生した → 借方(左)に「広告宣伝費 30,000」
  • 商品以外の後払いなので、「未払金」(負債)が30,000円増えた → 貸方(右)に「未払金 30,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
広告宣伝費 30,000 未払金 30,000

設例⑥:未払金を支払った

【設例6】翌月になり、設例5の未払金30,000円を普通預金から支払った。

【考え方】

  • 「未払金」(負債)が30,000円減った → 借方(左)に「未払金 30,000」
  • 「普通預金」(資産)が30,000円減った → 貸方(右)に「普通預金 30,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
未払金 30,000 普通預金 30,000

POINTまとめ

  • 「費用」が発生したら、必ず借方(左側)に記入する。
  • 「仕入」以外の費用科目(給料、支払家賃、水道光熱費、通信費、広告宣伝費、消耗品費など)を覚える。
  • 費用を支払った(資産が減った)ら、貸方(右側)に「現金」や「普通預金」を記入する。
  • 商品(仕入)以外のものを後払いにしたら、「未払金」(負債)を貸方(右側)に記入する。
  • 「買掛金」は、商品を仕入れた時の後払いにしか使わない!

ミニクイズ

お疲れ様でした!費用の仕訳はパターンが決まっているので、勘定科目を覚えれば得点源になります。クイズで確認してみましょう。

【Q1】従業員の出張にかかった交通費3,000円を、現金で精算(支払い)した。このときの仕訳として正しいものはどれ?

  1. (借) 給料 3,000 / (貸) 現金 3,000
  2. (借) 旅費交通費 3,000 / (貸) 現金 3,000
  3. (借) 現金 3,000 / (貸) 旅費交通費 3,000
答えを見る

【A1】2. (借) 旅費交通費 3,000 / (貸) 現金 3,000

解説:出張の交通費は「旅費交通費」(費用)で処理します。費用が発生したので借方(左)、現金(資産)が減ったので貸方(右)です。

【Q2】今月の電気代10,000円の請求書が届いたが、支払いは来月行うことにした。このときの仕訳として正しいものはどれ?

  1. (借) 水道光熱費 10,000 / (貸) 買掛金 10,000
  2. (借) 水道光熱費 10,000 / (貸) 未払金 10,000
  3. (仕訳なし)
答えを見る

【A2】2. (借) 水道光熱費 10,000 / (貸) 未払金 10,000

解説:電気代(水道光熱費)は、支払っていなくても「発生」した時点で費用として認識します。そして、商品(仕入)以外の後払いなので「未払金」(負債)を使います。「買掛金」は使えません。

今回は「費用」の仕訳を学びました。仕訳の左側(借方)はほぼ「費用」で埋まることになります。

では、右側(貸方)が主役になる取引、つまり会社の「儲け」はどのように記録するのでしょうか?

次回は、「売上」以外の様々な「収益」の仕訳について学んでいきます。お楽しみに!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です