簿記3級無料講座 第6回:商品を売り買いする②「売掛金」「買掛金」と「返品」の処理

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第5回では、商品を仕入れたら「仕入(費用)」、売り上げたら「売上(収益)」という「三分法」の基本ルールを学びました。前回は代金をすぐに現金や預金で支払う(受け取る)取引を見ましたが、実際のビジネスではどうでしょうか?

取引のたびに現金を用意するのは大変ですし、信用のある会社同士なら「代金は月末にまとめて支払いますね」というケースが一般的です。いわゆる「掛け」や「ツケ」と呼ばれる取引です。

今回は、この「掛け」取引で登場する超重要勘定科目「売掛金」「買掛金」と、もし商品に不備があった場合の「返品」の処理についてマスターしていきましょう!

今日のゴール

  • 商品を「掛け」で仕入れたときの「買掛金」(負債)の仕訳ができる
  • 商品を「掛け」で売り上げたときの「売掛金」(資産)の仕訳ができる
  • 「買掛金」を支払ったとき、「売掛金」を回収したときの仕訳ができる
  • 商品を返品した(された)ときの「仕入戻し」「売上戻り」の仕訳ができる

「買掛金」とは?(商品を掛けで仕入れた)

商品を仕入れたものの、代金はまだ支払っておらず、後で支払う約束(ツケ)をした場合、この「後で代金を支払わなければならない義務」を「買掛金」(負債)という勘定科目で処理します。

「義務」ということは、5つのグループのうち「負債」に分類されますね。

負債のルールを思い出しましょう。

  • 負債が増えたら(発生したら) → 貸方(右側)に「買掛金」
  • 負債が減ったら(支払ったら) → 借方(左側)に「買掛金」

設例①:商品を仕入れて「掛け」とした(買掛金の発生)

【設例1】A商店から商品100,000円を仕入れ、代金は掛けとした。

【考え方】

  • 「仕入」(費用)が100,000円発生した → 借方(左)に「仕入 100,000」
  • 「買掛金」(負債)が100,000円増えた → 貸方(右)に「買掛金 100,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
仕入 100,000 買掛金 100,000

設例②:「買掛金」を支払った(買掛金の減少)

【設例2】上記設例1の買掛金100,000円を、普通預金口座から支払った。

【考え方】

  • 「買掛金」(負債)が100,000円減った → 借方(左)に「買掛金 100,000」
  • 「普通預金」(資産)が100,000円減った → 貸方(右)に「普通預金 100,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
買掛金 100,000 普通預金 100,000

「売掛金」とは?(商品を掛けで売り上げた)

今度は逆の立場です。商品を売り上げたものの、代金はまだ受け取っておらず、後で受け取る約束(ツケ)をした場合、この「後で代金を受け取る権利」を「売掛金」(資産)という勘定科目で処理します。

「権利」ということは、5つのグループのうち「資産」に分類されます。

資産のルールはもう大丈夫ですね。

  • 資産が増えたら(発生したら) → 借方(左側)に「売掛金」
  • 資産が減ったら(回収したら) → 貸方(右側)に「売掛金」

設例③:商品を売り上げて「掛け」とした(売掛金の発生)

【設例3】B商店に商品200,000円を売り上げ、代金は掛けとした。

【考え方】

  • 「売掛金」(資産)が200,000円増えた → 借方(左)に「売掛金 200,000」
  • 「売上」(収益)が200,000円発生した → 貸方(右)に「売上 200,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
売掛金 200,000 売上 200,000

設例④:「売掛金」を回収した(売掛金の減少)

【設例4】上記設例3の売掛金200,000円が、普通預金口座に振り込まれた。

【考え方】

  • 「普通預金」(資産)が200,000円増えた → 借方(左)に「普通預金 200,000」
  • 「売掛金」(資産)が200,000円減った → 貸方(右)に「売掛金 200,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
普通預金 200,000 売掛金 200,000

イラスト解説:売掛金と買掛金の関係

「売掛金」と「買掛金」は、取引の当事者(当社と取引先)から見て表裏一体の関係です。

取引先
当社

当社が仕入れた場合(買掛金)

商品 → [当社]
代金(後払い) ← [当社]
当社:「買掛金」(負債)が発生

当社が売り上げた場合(売掛金)

商品 ← [当社]
代金(後受け) → [当社]
当社:「売掛金」(資産)が発生

(ちなみに、当社が「買掛金」のとき、取引先は「売掛金」を計上しています)

「返品」の処理(仕入戻し・売上戻り)

さて、商品を仕入れたり、売り上げたりしたものの、品違いや不良品、破損などがあった場合、「返品」が発生します。

簿記のルールは非常にシンプルです。

返品の仕訳は、元の取引(仕入や売上)の「逆仕訳」を行います。

つまり、借方と貸方をそっくり入れ替えて処理すればよいのです。

① 仕入戻し(商品を返品した)

仕入れた商品を返品することを「仕入戻し」といいます。
元の「仕入」の仕訳(借方:仕入、貸方:買掛金)のをします。

設例⑤:掛けで仕入れた商品を返品した

【設例5】設例1で仕入れた商品100,000円のうち、10,000円分に不良品があったため返品した。

【考え方】

元の仕入(設例1)の仕訳は…
(借)仕入 100,000 / (貸)買掛金 100,000

この逆(10,000円分)を行います。
(借)買掛金 10,000 / (貸)仕入 10,000

【意味】

  • 「買掛金」(負債)が10,000円減った → 借方(左)に「買掛金 10,000」
  • 「仕入」(費用)が10,000円取り消された → 貸方(右)に「仕入 10,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
買掛金 10,000 仕入 10,000

※「仕入戻し」という勘定科目はありません。「仕入」勘定を貸方(右側)に書いて、費用を直接減らします。

② 売上戻り(商品が返品された)

売り上げた商品が返品されてきたことを「売上戻り」といいます。
これも元の「売上」の仕訳(借方:売掛金、貸方:売上)のをします。

設例⑥:掛けで売り上げた商品が返品された

【設例6】設例3で売り上げた商品200,000円のうち、20,000円分が品違いとして返品された。

【考え方】

元の売上(設例3)の仕訳は…
(借)売掛金 200,000 / (貸)売上 200,000

この逆(20,000円分)を行います。
(借)売上 20,000 / (貸)売掛金 20,000

【意味】

  • 「売上」(収益)が20,000円取り消された → 借方(左)に「売上 20,000」
  • 「売掛金」(資産)が20,000円減った → 貸方(右)に「売掛金 20,000」

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
売上 20,000 売掛金 20,000

※「売上戻り」という勘定科目もありません。「売上」勘定を借方(左側)に書いて、収益を直接減らします。

※もし現金で売り買いした商品が返品された場合も考え方は同じです。
(例:現金売上の返品 →(借)売上 / (貸)現金)

POINTまとめ

  • 商品を「掛け」で仕入れたら(代金後払い)、「買掛金」(負債)が貸方(右)に発生する。
  • 商品を「掛け」で売り上げたら(代金後受け)、「売掛金」(資産)が借方(左)に発生する。
  • 買掛金を支払ったら、「買掛金」(負債)が借方(左)で減少する。
  • 売掛金を回収したら、「売掛金」(資産)が貸方(右)で減少する。
  • 商品の返品(仕入戻し・売上戻り)は、元の取引の「逆仕訳」で処理する。
  • 仕入戻し(掛けの場合):(借)買掛金 / (貸)仕入
  • 売上戻り(掛けの場合):(借)売上 / (貸)売掛金

ミニクイズ

お疲れ様でした!「掛け」取引と「返品」は、セットで頻出する重要論点です。しっかり理解できたか、クイズで確認しましょう。

【Q1】商品50,000円を仕入れ、代金は掛けとした。このときの仕訳として正しいものはどれ?

  1. (借) 仕入 50,000 / (貸) 売掛金 50,000
  2. (借) 仕入 50,000 / (貸) 買掛金 50,000
  3. (借) 買掛金 50,000 / (貸) 仕入 50,000
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【A1】2. (借) 仕入 50,000 / (貸) 買掛金 50,000

解説:商品を「仕入れ」(費用発生・借方)、代金は「掛け」(後で支払う義務=買掛金(負債)の発生・貸方)です。

【Q2】商品80,000円を売り上げ、代金は掛けとした。このときの仕訳として正しいものはどれ?

  1. (借) 売掛金 80,000 / (貸) 売上 80,000
  2. (借) 売上 80,000 / (貸) 売掛金 80,000
  3. (借) 買掛金 80,000 / (貸) 売上 80,000
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【A1】1. (借) 売掛金 80,000 / (貸) 売上 80,000

解説:商品を「売り上げ」(収益発生・貸方)、代金は「掛け」(後で受け取る権利=売掛金(資産)の増加・借方)です。

【Q3】上記Q2で売り上げた商品のうち、5,000円分が不良品のため返品された。このときの仕訳として正しいものはどれ?

  1. (借) 仕入 5,000 / (貸) 売掛金 5,000
  2. (借) 売上 5,000 / (貸) 買掛金 5,000
  3. (借) 売上 5,000 / (貸) 売掛金 5,000
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【A3】3. (借) 売上 5,000 / (貸) 売掛金 5,000

解説:売上返品(売上戻り)なので、元の売上(Q2)の「逆仕訳」をします。元の仕訳(借)売掛金 / (貸)売上 だったので、その逆の(借)売上 / (貸)売掛金 となります。

「売掛金」と「買掛金」は、商品の売り買い(三分法)とセットで必ず出題される超Aランクの論点です。「資産」なのか「負債」なのか、どちら側に書くのかをしっかり整理しておきましょう。

さて、「掛け」の取引はこれだけではありません。信用取引にはもう一つ、「手形」という特殊な紙(証書)を使う方法があります。

次回は、この「約束手形」について詳しく学んでいきます。お楽しみに!

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