簿記3級合格へ導く!無料Web講座、第3回へようこそ!
前回(第2回)は、簿記の世界の主人公である「5つのグループ」(資産・負債・純資産・収益・費用)と、それぞれのホームポジション(左か右か)という大事なルールを学びました。「資産が増えたら左」「負債が増えたら右」…なんとなく思い出せますか?
今回は、いよいよそのルールを使って、日々の取引をノートに記録する方法を学びます。この記録する作業こそが、簿記の基本中の基本、「仕訳」です。
ここをマスターすれば、簿記の勉強が一気に楽しくなりますよ!
🏁 今日のゴール
- 「勘定科目」が何かを説明できるようになる。
- 「仕訳」の具体的な書き方ルールを理解する。
- 簿記の「左(借方)」と「右(貸方)」を覚える。
- 簡単な取引を見て、自分で仕訳が切れる(書ける)ようになる。
「勘定科目」とは? 〜グループの具体的な名前〜
前回の復習です。簿記には5つのグループがありましたね。
- 資産(プラスの財産)
- 負債(マイナスの財産)
- 純資産(正味の財産)
- 収益(儲けの原因)
- 費用(出費の原因)
「勘定科目」とは、これらのグループに付けられた「具体的な名前(ラベル)」のことです。
例えるなら、「資産」というグループが「くだもの」だとすれば、「勘定科目」は「りんご」「みかん」「バナナ」といった具体的な名前です。
会社に「資産」が増えたと言っても、それが「現金」なのか「建物」なのか分からないと困りますよね。だから、勘定科目を使って具体的に記録します。
◆ 資産グループの勘定科目
- 現金:手元の現金、小銭
- 普通預金:銀行の普通預金
- 売掛金:後で代金をもらう権利
- 建物:お店やオフィス
- 備品:パソコンやデスク
◆ 負債グループの勘定科目
- 借入金:銀行などからの借金
- 買掛金:後で代金を支払う義務
◆ 収益グループの勘定科目
- 売上:商品を売った時の儲け
- 受取利息:預金の利息をもらった時
◆ 費用グループの勘定科目
- 仕入:販売用の商品を買った時
- 給料:従業員に払うお給料
- 支払家賃:お店やオフィスの家賃
- 消耗品費:文房具などを使った時
※純資産の「資本金」なども重要ですが、まずはこの4グループの科目を覚えましょう。
「仕訳」とは? 〜取引を記録する作業〜
「仕訳」とは、取引(お金やモノの動き)があったときに、
- どの「勘定科目」が
- 「増えた/減った」のかを判断し
- 前回学んだ「左/右」のルールに従って
- ノート(仕訳帳)に書き込むこと
この一連の作業を「仕訳を切る」と言ったりします。簿記のすべての基本となる作業です。
超重要!「借方」と「貸方」
前回、「左」と「右」という言葉を使いましたが、簿記では正式な呼び方があります。
- 左側 = 借方(かりかた)
- 右側 = 貸方(かしかた)
「借(かり)」なのに左?「貸(かし)」なのに右?と漢字の意味を考えると混乱します。
これは昔の簿記(複式簿記)が生まれたイタリアでの呼び方の名残です。
覚え方:最初は理屈抜きで「左が借方、右が貸方」と暗記してしまいましょう!
(例:左利きのお友達の「かりな」ちゃん、のように語呂合わせで覚えてもOKです)
ホームポジションも、これからは「借方」「貸方」と呼びます。
- 資産・費用のホームポジション(増える側) → 借方(左)
- 負債・純資産・収益のホームポジション(増える側) → 貸方(右)
仕訳の3ステップと具体例
では、実際に仕訳を切ってみましょう。仕訳は、以下の3ステップで考えます。
【仕訳の3ステップ】
Step 1. 取引で使われた「勘定科目は何か?」を考える。
Step 2. その勘定科目は「5つのグループのどれか?」を考える。
Step 3. それは「増えた?減った?」を判断し、「借方(左)/貸方(右)」のどちらに書くか決める。
【設例①】銀行から10万円を借りて、現金で受け取った。
この取引を3ステップで仕訳してみましょう。
- Step 1. 勘定科目は?
- 「現金」と「借入金」
- Step 2. グループは?
- 「現金」 → 資産
- 「借入金」 → 負債
- Step 3. 増減と左右は?
- 「現金(資産)」が 増えた → ホームポジション(借方:左)
- 「借入金(負債)」が 増えた → ホームポジション(貸方:右)
これを仕訳帳というノートに書き込むと、以下のようになります。
▼ 仕訳(解答)▼
仕訳帳
(借方) 現金 100,000 / (貸方) 借入金 100,000
【設例②】従業員に給料15万円を、現金で支払った。
もう一問、やってみましょう!
- Step 1. 勘定科目は?
- 「給料」と「現金」
- Step 2. グループは?
- 「給料」 → 費用
- 「現金」 → 資産
- Step 3. 増減と左右は?
- 「給料(費用)」が 発生した → ホームポジション(借方:左)
- 「現金(資産)」が 減った → ホームポジションと反対側(貸方:右)
▼ 仕訳(解答)▼
(借方) 給料 150,000 / (貸方) 現金 150,000
どうでしょうか?
どんな取引も、必ず「借方(左)」と「貸方(右)」の2つの側面があり、左右の金額は必ず一致します。
これを「貸借平均の原理」と呼びます。
💡 POINTまとめ
- 勘定科目とは、「現金」や「売上」など、5つのグループの具体的な名前のこと。
- 仕訳とは、取引を「勘定科目」と「金額」を使って、左右に分けて記録すること。
- 簿記の左側を「借方」と呼ぶ。
- 簿記の右側を「貸方」と呼ぶ。
- 資産・費用が増えたら(発生したら) → 借方(左)へ書く。
- 負債・純資産・収益が増えたら(発生したら) → 貸方(右)へ書く。
- モノが減ったら、ホームポジションの反対側へ書く。(例:現金(資産)が減ったら貸方(右))
- 仕訳の借方(左)の合計金額と、貸方(右)の合計金額は必ず一致する!
✏️ ミニクイズ
今日の知識が定着したか、簡単なクイズで確認してみましょう!
Q1. 銀行からの借金を表す勘定科目「借入金」は、5つのグループのうちどれに分類されるでしょう?
- 資産
- 負債
- 費用
Q2. 「商品を1万円で売り上げ、代金は現金でもらった」という取引の仕訳として、正しいものはどれでしょう?
- (借)売上 10,000 / (貸)現金 10,000
- (借)現金 10,000 / (貸)売上 10,000
- (借)現金 10,000 / (貸)仕入 10,000
・・・
【解答】
Q1 → 2. 負債
(「借入金」は、後で返さなければいけない義務(マイナスの財産)なので「負債」です)
Q2 → 2. (借)現金 10,000 / (貸)売上 10,000
(解説:①「現金(資産)」が増えた → 借方(左)。 ②「売上(収益)」が発生した → 貸方(右)。)
お疲れ様でした!
「仕訳」と「勘定科目」という、簿記の土台が完成しました。
最初は、勘定科目を「どのグループだっけ?」「増えたらどっちだっけ?」と悩むと思いますが、心配いりません。
スポーツの素振りと同じで、何度も繰り返すうちに体が覚えます。
次回からは、この「仕訳」をひたすら練習していきます!
まずは「お金(現金・預金)」に関する仕訳をマスターしましょう。

